幕間
「さてと、行くとこもやることも何も決まってねぇけど、どうっすかな・・・・・・」
ウェルフは、あてもなく、森の中をただ歩いていた。
自分の大切な居場所を見つけるということ。
でも、彼は分かっていた。
居場所は見つけようとするものではなく、いつの間にかあるものだと。
「んー、まあ適当に色んな場所にでも回ってみるか」
ウェルフは軽く伸びをした。
色々な場所、色々な魔族に触れて、そこに居たい、守りたいと思えるような場所は、きっと見つかるだろうと彼は思っていた。
「ああ、僕のありがたい言葉を無視して、あまつさえ、異分子に肩を入れるなんて。悲しい悲しい、なんて悲しい・・・・・・いや、悲しくなんかないな。そう、悲しくないんだ。僕は前向きで友好的で慈悲の深い男だからね」
「お前は、超上会の・・・・・・」
ウェルフの目の前に現れたのは、長い金髪の細身の男だった。
酷く猫背で、血色の悪い顔をしていた。
その男こそが、ウェルフを魔王城へとけしかけた男だ。
ウェルフが前に会った時もそうだが、いつも薄気味悪い笑顔をしている。
「あの忌々しい忌々しい・・・・・・いや、忌々しくない。忌々しくない異分子は、この世界に必要ないんだ。だって、そういう風に僕たちは生きてきたから。うざったい君たち・・・・・・いや、うざったくない君たちも、わざわざ利用価値のある駒にしてあげてるのに、酷いよね。こんなに優しくて友達想いな僕を、君はよく思ってないんだろうね」
「誰が友達だ。うるせぇ、死ね」
金髪の男の態度に腹が立ったのか、ウェルフは爪を立て、彼の喉を切り裂いた。
並の人間なら対応できるはずのない速さ、当然のことながら、金髪の男の喉は引き裂かれ、大量に血が噴き出た。
「あああああ!!!痛い痛い!痛いぃぃぃぃ・・・・・・いや、これは"本当に"痛くないんだった。僕の悪い癖が出ちゃったね。友達の君には、嘘なんてつきたくないんだけど」
「な・・・・・・?!」
確実に、間違いなく致命傷を与えたはずだった。
血は噴き出していたし、見間違えるわけがない。
しかし、もう一度見てみると、傷は完治していて、金髪の男は苦痛を何も感じていなかった。
「ああ、光の精霊様。いつもありがとうございます。あなた様のご加護が、今日も僕を前向きに生きさせてくれる」
金髪の男は両手を合わせ、空を見上げた。
ウェルフは、不気味な存在に鳥肌が立ち、本能的にマトモに相手をしてはいけないと感じた。
金髪の男の意識が逸れている間に、ウェルフは一目散に逃げることにした。
「くっ、相手にしてられねぇ。何なんだあの化け物は!」
「ああ、もう見えなくなった。相変わらずとんでもないスピードだね。・・・・・・でも、僕の友達は君を逃さないよ」
「?!」
高速で移動していたウェルフだったが、突然胸に何かが貫通した。
あまりの苦痛に、ウェルフは倒れた。
一応姿を隠せるように、木の近くには居たが、どこから攻撃されたか把握できていなく、気休めでしかない。
「僕ではもうどこに居るか分からないや。でも、僕の友達なら、しっかり仕事はしてくれているだろう。今日はもう帰るとするかな。光の精霊のご加護があらんことを」
地に伏しているウェルフは、遠くから金髪の男が去っていく音を聞いた。
おそらく第三者の攻撃だが、全く周りに気配を感じない。
「くそっ、どこから攻撃されてるか分かんねぇのは、こんなにしんどかったのかよ・・・・・・」
ウェルフは周囲への警戒を解きたくはなかったが、血が流れ続けていて、だんだん意識が遠のいていく。
「こんな、こんなところで、死んでたまるかよ・・・・・・」
その言葉を最後に、ウェルフの意識は無くなった。




