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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第四章「自分の仲間」
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第三十六話「マモンの居場所」

 ウェルフから、彼とマモンの過去を聞いた翌日、俺はマモンを魔王室へと呼びだした。

 部屋へと呼び出されたマモンは、昨日と変わらず重たい表情で、放っておいたら、今にでも飛び出してしまいそうな剣幕だった。

 今のマモンは明らかに思い詰めているようで、一人で抱えさせたくないとも思っている。


「明日、だな」


「・・・・・・はい」


 マモンは深く考えている様子だった。

 

「ウェルフが魔王城を襲っている理由はマモンにある、と思っているんだよな?本当にそうなのか?」


「そう・・・だと思います。彼は私に対して憎しみを持っています。裏切られたなら、その復讐として魔王城を攻撃しているのだと思います。ウェルフはすごく暴虐な男なので・・・・・・」


 そうは言いつつも、マモンは煮え切らない。

 昨日もマモンが言っていた通り、納得いかない部分があるのだろう。


「納得いってない様子だな」


「はい・・・」


 マモンは静かに頷く。

 

「いくら暴虐な男とは言え、裏切られた復讐を目標に動くほどだったとは思いませんでした。いえ、私にそれを言う資格はありませんね」


 複雑な表情だった。

 かつては信頼していた相棒が、自分に牙を向けているということ。

 だが、その原因は自分にあるということ。

 マモン自身にも裏切られたような感情はあるのだろうが、始まりはマモンであるが故に、感情が入り混じっているようだ。


「ウェルフのがどんな奴なのか、まだ二度しか会っていない俺には分からないが、それでも違和感を感じることはあった」


「違和感・・・・・・ですか?」


「ああ」


 マモンは不思議そうにこちらを見る。

 

「マモンは、ウェルフは復讐心に燃えている。だから、魔王城を攻めていると思っているんだよな?」


「はい。何度も申し上げましたが、だからこそ、私が片を付けないと・・・」


「だったら、おかしな点が無いか?」


「おかしな点、ですか?」


 マモンはまるで言っていることが分からないと言いたげに、きょとんとしている。

 

「ウェルフはさ、ずっとふざけた態度をしてるんだよ。お前のことを恨んでるとしたら、もっと怒りを露わにしてるんじゃないか?」


「それは、確かに・・・・・・」


「何かしら理由があるんじゃないかと思うんだよ」


 マモンは顎に手を当て、再び考え始めた。

 マモンにとっても、過去から抱え続けている問題は、良い方向で解決したいと思っているのだろうか。


「まあ、どっちにしろ、あいつに攻撃する意思があるなら、最低限こっちも策を練らないといけないがな」


「ディザ様。それなら、私にお任せください」


「マモンが?」


「はい」


 マモンの視線は力強いものになっていた。

 決意が固まっているらしい。 

 だが、また一人で解決しようとしているのではないだろうかと、不安になってしまう。


「何でも一人で解決しようと思う気持ちは分かるが、それでも任せきるのは簡単には許可できない」


「いえ、やはりこれは私が解決しなければならないと思います」


 さっきまでの悩んでいたマモンの様子は、そこにはまるでなかった。


「私とウェルフは、道を違えてしまいました。でも、それは私の選択。自分の選んだ道を、間違っているとは思いたくありません。だから、私の居場所は魔王城だと、ウェルフに理解してもらいたいのです」


「ウェルフは、お前が裏切ったと思っている。自分勝手だと思われたりしないか?」


「構いません。例え、一緒に連れ添った仲であっても、気持ちが合わないのであれば、決別をしなければならないと思います。それに、ディザ様の言う通り、本当に復讐心に満たされているのか、そうじゃないのかと、思ってしまうのです。勝手に信頼してしまうのです。・・・・・・あいつのことをよく知った、相棒だから」


 俺の意地悪な質問にも、マモンはまるで悩んだり怯んだりする様子はなかった。

 

「それと、ディザ様には、私とウェルフの行く末を見てもらいたいのです」


「俺に?」


「はい」


 マモンは強く頷く。


「私の居場所は魔王城であるということは、ウェルフだけに伝えるわけではありません。ディザ様にも、私は魔王城が居場所だということを伝えたいのです」


 マモンは優しく微笑んだ。


「なるほどな」


 それに対し、俺も軽く微笑んで答える。

 マモンはもう過去のいざこざと別れ、今を選ぶことを決めている。

 その意志を、俺が止めてしまっては、マモンのためにならないと、俺は思った。


「分かった、しっかりと見届けよう。魔王城の王として、自分の部下が未来へと進もうとする姿をな」


「はい!」


 マモンの想いは分かったが、それでもまだ残された問題はある。

 ウェルフの行動と態度の矛盾。

 ウェルフのあの強さに対抗する方法。

 そもそも、魔王城の危機という観点で見れば、ウェルフのあの強さに対抗できなければ、どうしようもないのだ。


 だが、マモンにはどうやら策があるようだった。


「ウェルフは、強い者には敬意を示します。だからこそ、彼の抱える秘密を聞くには、あいつを力で超えればいい。そして、そのウェルフと互角に戦ったことがあるほど、私は強いです」


「信じていいのか?」


「はい、そう言った意味でも、私一人に任せてほしいです」


 マモンは自信満々な様子だが、あのスピードと優れた感覚の持ち主に本当に対抗できるのだろうか。

 不安げな俺を見て、マモンは人差し指を立て、ウィンクをして、俺に余裕さをアピールする。


「ディザ様。運動会で様々な魔族の能力を見てきましたよね。でも、運営である主催者の能力は見ることができませんでしたよね?」


「それは、そうだが・・・・・・」


「魔王城トップクラスの魔族の強さ、運動会の代わりに、この機会にしっかりと見せてあげますよ」


 明日には、彼にとって大きな勝負が始まるというのに、ずいぶんと明るい雰囲気だった。

 これも、魔王城を居場所と思っているからこそ、俺へアピールできることがうれしい気持ちによるものなのだろうか。

 それなら、俺もこいつの気持ちに答えられるように、主として相応しい存在にならないといけないと思った。


 マモンとの話も終わり、部屋から退室させ、俺は一人で考え事を始めた。

 今回は、俺の出る幕はない。

 もちろん、その場に居合わせる必要はあるが、マモンが一人で解決しようという気持ちを踏みにじるわけにはいかない。

 

 マモンは、自分の居場所を守るために、自ら戦おうとしている。

 今まで、俺は居場所を守るために行動してきた。

 なのに、マモンがいざ自分の居場所を守るために戦おうというのに、余計なことをしすぎてしまったのではないかと、ふと思ってきた。

 それと同時に、それぞれが自分の居場所を求めているとも感じた。

 

 俺は、自分の大切な居場所は、自分で守らないといけないと思っていた。

 しかし、その大切な居場所は、自分以外にとっても大切な居場所であったりするし、そこの人や魔族それぞれにはそれぞれの戦いがある。

 もっと、視野を広く持たないといけないのかもしれないと、今回の件で感じた。


 何はともあれ、明日はマモンの戦いが始まる。

 彼の行く末が良い方向へと向かうように、俺は祈った。

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