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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第四章「自分の仲間」
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第三十四話「悪魔と人狼」

 部屋へと呼ばれたマモンは、いつも以上に神妙な面持ちだった。


「襲撃相手と接触した。相手の正体も分かった」


「ありがとうございます。それで、その正体とは・・・・・・?」


「白銀のワーウルフ。お前のことも知っている様子だった」


「・・・・・・!」


 マモンは大きく目を見開いて反応する。

 やはり、マモンが言っていたワーウルフは、あの男なのだろう。


「今回の襲撃者と、お前が気にしている相手が同じだったことが判明した。明らかにお前が露骨に反応している理由を聞かせてもらうぞ」


「すみません、これは私が解決したい問題です。失礼いたします」


 そう言って、マモンは部屋を出ようとした。

 

「待て!どこへ行くんだ!」


 俺の制止する声を無視して、マモンは部屋を出ていった。

 

「どういうことだよ・・・・・・」


 幸い、ワーウルフが指定した日付は明後日で、今日一日準備ができなかったとしても、まだ明日には時間がある。

 俺は、マモンを追いかけることにした。


 他に注意を払う暇がないのか、マモンの尾行はものすごく簡単だった。

 こっそり行動しているわけでもなく、周囲を警戒している様子もない。

 ただ、ひたすら前だけを見て、歩き続けていた。

 その彼の姿からは、焦りが感じとれる。


 マモンの尾行を続けていると、たどり着いた先は、昨日に俺がワーウルフと戦った場所だった。

 場所が一致したのは偶然だろうが、この森に向かおうと思っていたことは間違いない。

 マモンは、あのワーウルフに会いに来たのだろう。


 少し様子を見てみると、突然ワーウルフが姿を現した。


「久しぶりじゃねぇか、マモン。約束の日は明後日だぜ?」


「お前の蛮行を野放しにするわけにはいかない、ウェルフ。第一、俺が目的なんじゃないか」


「それはどうかなぁ」


 どうやらワーウルフの名前は、ウェルフというらしい。

 飄々とした態度のウェルフと、真剣な表情のマモンが向かい合って話をしている。

 俺は、木に身を隠して、話を聞き続けることにした。


「なあ、またオレ様と組まねぇか?同じ志を持った者同士、力もあるんだから、有効に使わねぇともったいないだろ?」


「黙れ。俺は平穏を選ぶと決めたんだ。お前みたいなやつと同じにするな。俺の平穏を荒そうとするやつは、例え旧知の友であっても、容赦はしない。平穏を望まず、争いや支配ばかり求めるお前に、付き合う道理はない」


「すっかり変わっちまったなぁ・・・。だがよ、オレ様もお前と同じなんだ。お前は平穏のために争わないかもしれないが、俺は平穏のために争いをしないといけないんだよ」


「・・・どういうことだ」


「もう仲間じゃねぇやつに話すことじゃねぇよ」


 ウェルフは、最初のおちゃらけな態度から、少し曇りが見えたような気がした。

 それにしても、さっきから会話で気になるワードが飛び交う。

 おそらく、マモンとウェルフは昔は組んでいて、何かがきっかけに別れたのだろう。

 マモンと初めて話した時、管理の欲望に従って、人を襲っていたころの話だろうか。


「なあ、マモン。後ろの奴に全部聞かせてるけどいいのか?オレ様の鼻にさっきから臭いが入ってきて、気になるんだよな」


 ウェルフは、彼から見てマモンの奥側、俺が居る方向を指さした。


「?!」


 マモンは驚いた表情で、ウェルフが指をさしている、俺の方へ振り返る。

 マモンには気づかれていなかったようだが、ウェルフは俺の存在に気づいていたようだ。

 さすがの嗅覚と言わざるを得ない。


 バレてしまっては仕方が無いので、俺は二人の前に姿を現すことにした。


「すまない、盗み聞きしてしまって」


「ディザ様・・・・・・」


 マモンは複雑そうにしていた。

 あれほど話そうとしなかったウェルフの話を、盗み聞きという形で知られてしまったからだろう。


「あー、もしかしてこいつが魔王ってやつか?まあまあ手ごたえあると思ったけど、そういうことか。なるほどねぇ」


 ウェルフは、またおちゃらけた態度に戻って、顎に手を当てながら、俺の方をじろじろと見る。

 

「盗み聞きなんて、趣味が悪いねぇ」


「何か言い返そうとしても、何も言えないことが歯がゆいな」


「オレ様は、気になることを知ろうとする貪欲さは好きだぜ?魔王様なんだし、それぐらい欲が強くなくってはなぁ」


「ウェルフ、場所を変えないか」


 早く俺の居ないところへ行きたいのか、俺とウェルフの会話に、マモンが口を挟んだ。


「なんでだよ、主様に内緒ごとか?」


「もうすでに、この方には自分の都合で迷惑をかけている。これ以上俺の都合に巻き込むわけにはいかない」


「ふぅん・・・・・・」


 ウェルフは俺の方を横目で見る。

 俺は、マモンの険悪な雰囲気に飲まれ、その場に佇んでいた。

 盗み聞きをしていたのもあって、それじゃ失礼します、とこの場を立ち去ることも難しい。

 

 二人がこの後どう動くかを待っていると、先に口を開いたのはウェルフだった。


「じゃあ、オレ様の都合に巻き込んでやるよ。そこのあんたも、オレ様たちのこと気になるだろ?」


「ウェルフ!!!」


 マモンはウェルフに大声で怒鳴る。

 だが、気になってしまっているのは事実だ。

 話を聞けるなら聞きたい。


 俺はウェルフの方を向いて無言で頷いた。

 それを見て、ウェルフはにやりと口角を上げる。

 それを見たマモンは、観念した様子だった。


「ずいぶん素直だねぇ、魔王さん。そういう素直なやつには、なんでも与えたくなっちゃうのがオレ様だ」


「誉め言葉として受け取っておこうか」


「くっ・・・!」


 三人の様々な感情が入り混じる。

 この状況を楽しんでいるウェルフ。

 理解のため、冷静になろうとする俺。

 もう後戻りはできないと、観念をしているマモン。

 

 感情は三人とも違えど、三人は同じ空間で同じ話を共有しようとしていた。


「ディザ様、私事にまた付き合わせてしまって、すみません」


 マモンは深く頭を下げる。


「へっ。鳥肌が立つぜ」


「黙れ」


「おおっと・・・・・・」


 マモンはウェルフを鋭くにらみつけた。

 そのあまりにも鋭い眼光に、ウェルフも思わず怯んでしまう。


「まあ、勿体ぶってるつもりはなかったけど、そろそろ話し始めるか。オレ様とこいつの話をよ」


 そう言って、ウェルフは彼とマモンの過去を語り始めた。


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