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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第四章「自分の仲間」
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第三十二話「相性最悪」

 次の日、今日も調査を行う。

 今回は、アイリスに協力を仰いで、森の中に居る魔族たちを、一度別の場所へと避難させた。

 本当はもっと早く行うべきだったかもしれないが、襲われる瞬間を見たほうが良いと思った。

 しかし、それが通用する相手では無いと判明したので、これ以上危険に晒す意味はない。

 

 今日行うのは、俺が囮になることだ。

 並の魔族では、瞬殺されて終わってしまうが、俺なら敵の攻撃を一度受けることに成功したし、今回は作戦も考えてある。

 俺はアイリスに、遠くから見守るように指示し、森の中に一人で立っていた。


 相手からすれば、森の中から魔族は消え、一度攻撃を受けた相手だけが確認できる状態。

 明らかに罠にしか見えないだろうが、これでいい。

 攻撃してこようと、そうでなくても、その事実だけで、襲撃者の情報となり得る。

 

 俺は、前日の襲撃を思い出し、集中する。

 見えない内に近づかれて攻撃されているか、確認できないほど遠くから攻撃されているのか。

 その二択の内、一つを潰せるであろう作戦は考えてある。


「すぅー・・・・・・はぁー・・・・・・」


 深呼吸をする。

 神経を張り巡らせる。

 周囲のわずかな気配でも感じられるように。


 どれほど時間が経ったかは分からないが、おそらくそう長い時間ではなかっただろう。

 その時はやってきた。


 自身の右斜め後ろ方向から、わずかに気配を感じることができた。

 それは極小の空気の乱れだったが、集中しきっているならば、肌で感じとることはできた。

 

 瞬間、周囲の地面を闇で飲み込んだ。

 俺の周囲は、さっきまであった地面は無くなり、五メートルほどの深さの溝ができている。

 落とし穴は、予め作っておいた穴を隠し、それを相手に仕掛けるものだが、この落とし穴は、たった今穴になり、そしてその機能をその瞬間に果たすものだ。


「くっ・・・・・・・?!」


 自分の周囲で、動揺の声が聞こえる。

 俺は攻撃方向の穴部分へと振り向く。

 そこには、穴へと落ちまいと、片手で崖に掴まっている者が居た。

 俺は、その手を足で抑える。


「ずいぶん、好き勝手やってくれたな。ようやく正体を拝むことができる」


「まさか、オレ様が捕まっちまうとはねぇ。ちょっと読み違えたかな?」


 姿を確認すると、それは、不利状況にも関わらず、不敵な笑みを浮かべる、男だった。

 鋭い爪や牙を持っていて、ヒト型ではあるが、全身の至るところに白銀の毛が生えていた。

 間違いなく、ワーウルフだ。

 

「ほう、ワーウルフか。ちょうど会いたいと思ってた」


 ワーウルフと言えば、マモンがやたらと気にしていた存在。

 何か因縁があるかもしれないし、話を聞きたい。

 

「なんか、油断してんじゃねぇのか?」


 ワーウルフのその言葉を聞いて、すべての思考が中断され、あらゆる意識をワーウルフに向ける。

 確かに、有利状況で油断していたのは事実だ。


「グルァァァァァァァ!!!!」


 だが、その油断を逃さず、ワーウルフは鼓膜が破れそうなほどの大声で吠える。

 俺が思わず耳を塞いでしまった瞬間、ワーウルフは、ふさがれていない方の片手で、俺の足首を掴み、引きずり降ろそうとする。


「まずい・・・!」


 俺はよろめきながらも、何とか穴に落ちずには済んだが、ワーウルフはすでに脱出に成功していて、さっきまでの状況は一転し、全くの互角の状態になった。


「いやぁ、危なかったぜ。オレ様も最初は油断してたし、これでおあいこだな」


 ワーウルフは手の土を払いながら、余裕そうに笑う。


 未だに奴の素性は分からず、どういった攻撃をしてくるかも分からないので、こちらから仕掛けることは危険だ。

 対して、向こう側から攻撃する様子もないので、膠着状態が続く。


 そんな膠着状態が続いた少し後、場の空気が一瞬で冷えた。

 遠くから、ワーウルフの眼球を目掛けて、ナイフが飛んでくる。

 それはアイリスのいる方向からだった。


「おっとっと」


 ワーウルフは最小限の動きで避けた。

 

「なんかくせーな、それに冷える」


 ワーウルフが得体の知れない何かを警戒している間に、アイリスが姿を現し、ワーウルフの正面から、ナイフを逆手に持って切りかかる。


「動くなっ!」


 アイリスは叫び、ナイフはワーウルフの心臓へと向かう。

 だが、すんでのところで、ナイフの刃がワーウルフに届きそうな距離であっても、ワーウルフは正面のアイリスではなく、周囲全体を警戒しているようだった。


「あー、後ろがくせーな」


 そう言った瞬間、ワーウルフは右に大きく避けた。

 それは瞬間移動と言えるほどに素早い動きだった。

 また、それによって、アイリスの真後ろからの攻撃を避けることに成功していた。

 ワーウルフの正面に居たアイリスの姿は消えていた。

 アイリスは、相手に完全に上回られたことが信じられないのか、驚愕した表情を見せた。

 

「なんかさみーと思ったら、幻覚見せる場作ってんのか。まあ、運の悪いことに俺は鼻が利くんだがな」


 アイリスの能力は、幻覚を作ることができるらしい。

 思いがけないことを知ることができたが、タイミングがタイミングなので、そのことを気にしている暇はなかった。


「まあ、久しぶりに長すぎる時間戦ったし、なんかご褒美でもやるよ。三つまでなら質問に答えるぜ?」


 ワーウルフの余裕そうな態度は変わらない。

 ご褒美だったり、三つ質問をしていいと言えるあたり、こちらのことを完全に見下しているだろう。

 だが、せっかくの機会ではあるから、俺は素直に質問をすることにした。

 例え嘘を言ったとしても、話を聞くだけでも価値があると思う。


「本当に答えてくれるんだな?」


「おう、オレ様は二割ぐらいしか嘘つかないからな」


 勝手に信憑性が無くなる情報を足してきたが、それも余裕から生まれる冗談だろうと感じる。

 

「どうして魔王城周辺を攻撃する?」


「攻撃すればオレ様に良いことがあるから。それだけだ」


 具体的な答えを聞きたかったが、それを質問すると、一つとしてカウントされかねないと思い、別の質問をする。


「お前の戦い方を教えろ」


「超速で動いて、爪で切り裂く。風属性を上手く使えば、風の流れも操作できて、オレ様の気配も消しやすいんだ。すごいだろ?」


 質問をすれば、すぐに答えが返ってくる。

 あれだけ情報が掴めなかった男だというのに、何も包み隠そうとしない姿勢は、不気味に思える。

 

 残る質問はあと一つ。

 俺は最初からずっと聞きたかったことを聞くことにした。


「マモンという悪魔は、知っているか」


 その言葉を聞いた瞬間、ワーウルフの表情は凍りつき、さっきまでの余裕な態度は完全に消えた。


「・・・・・・あいつと知り合いなのか」


 ひどく冷たい視線でこちらを見て、ひどく重たく言葉を発した。

 マモンがワーウルフの話をしていた時を思い出すようだった。


「その様子だと、どうやら知っているようだな」


「ああ、知っているとも。嫌というほどにね。あぁ、気が変わった。明後日またここに来い。マモンも連れてこい。今日はもう帰ってやるよ。じゃあな!」


 そう言って、ワーウルフは立ち去ろうとする様子を見せた。 


「おい!待て!お前とマモンはどういう関係なんだ!」


「質問は三つまでって言っただろ?じゃあな」


 俺が制止するのを聞かず、ワーウルフは目の前から姿を消した。

 その場には、俺とアイリスだけが残った。


 あのワーウルフが攻撃してくる理由。

 マモンとの関係。

 アイリスの能力。

 

 この一日、判明した情報と、調べなければならないであろう情報が、あまりにも多かった。

 それを一つずつでも解決させるため、ひとまず魔王城へと戻ることにした。


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