表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第四章「自分の仲間」
34/175

第三十一話「暗殺者」

 翌日、俺とアイリスは二人で魔王城の外に出ていた。

 魔王城の周りは、深い森に覆われていて、視界は非常に悪い。

 それほど大きい森ではないが、森の中に入れば、森の外の状況は全く分からず、いかにも迷ってしまいそうな森だ。


「調査といっても、さすがに骨が折れますよねっ。敵の情報が少なすぎる上、この視界の悪さだし、結構苦労しちゃいそうですねぇ」


 アイリスは露骨に嫌そうな顔をする。


「そんなこと言ったって、仕方がないだろ。そういう事態だからこそ、俺たちが動かないといけないんだ」


「ううっ、ぐうの音も出ないほどの正論・・・・・・」


 正論をぶつけられて、落ち込むアイリス。

 だが、こう文句は口にするものの、なんだかんだ面倒ごとにも付き合ってくれるし、仕事もこなしてくれる。

 その点は信頼できる。


 俺たちは森の中を探索する。

 森の中には様々な魔族が居るらしく、適当に話を聞いてみることにした。

 最初に会ったのはオークだった。


「最近襲っている魔族について、知っていることはあるか?」


「ウオ・・・?」

 

 俺が声をかけると、オークは首を傾げた。

 そもそも言葉は通じているのだろうか。


「なあ、アイリス。これ話通じているのか?」


「多分、言葉は話せなくても理解はできるはずですっ」


「じゃあ、これは何も知らないってことなのか・・・・・・?」


「ウオー」


 俺が確認を取ると、オークは頷いて答えた。

 知性の無い魔族と会話する時、いつも不安に感じてしまうが、いい加減慣れないといけないと感じる。


「それじゃ、次行くか」


「はいっ」


 しかし、それから調査を続けても、大した成果を得られることはできなかった。

 どの魔族に聞いても、襲撃について知っている様子はなく、むしろ危機に陥っているというのに、平和そうに見えた。

 また、大きな異変に遭遇することもなく、調査を始めた時からずっと、雰囲気は変わらないままだった。


「うーん、今日はたまたま襲撃が無かったのかな?」


「そうかもしれませんねっ。まあ、今まで情報を掴めてないですし、相手側も簡単に尻尾を掴ませたりはしないでしょうねっ」


 もう日が暮れる頃まで、辺りを調べていたが、時間も時間なので、今日の調査はもう終わりにしようと思い、俺とアイリスは魔王城へと帰ろうとした。

 しかし、帰り道の途中、行きの時には明らかに見ることのなかったものが、そこにあった。


「いつの間に・・・・・・」


 俺とアイリスが見たのは、最初に聞き取り調査をしたオークだった。

 だが、そのオークは血だらけになっていて、ピクリとも動かないまま地面に伏せていた。

 明らかに死んでいることが、見てわかる。

 全身は切り傷のようなものが見られ、特に首の傷は深く、確実に殺すという意思が見られた。


 敵からの攻撃があったなら、叫び声やら遠くからでも聞こえておかしくないのだが、そんな声を一度も聞くことはなかった。

 そもそも、このあたりの魔族は皆この事態に気づいていない様子で、敵の相当な隠密性の高さが推測される。


「まずいな、これはかなり危険な状況な気がする。相手の手口が分からず、その尻尾すらまるで掴ませず、こっちの魔族はじわじわと殺されてしまう・・・・・・」


 確かに、マモンも手を焼いていて、助けを求めてくるのも分かる。

 せっかく期待されている以上、投げ出すわけにも行かないので、明日はやり方を変えて、再び調査に出ることにしよう。


 城に戻り、今日あったことをマモンに伝えた。

 森の中では大きな異変を感じ取ることはできなかったこと。

 どの魔族も、危険な状況に居ることにまるで気づいていない様子だったこと。

 全く何も気づかない内に、魔族が殺されてしまったこと。


「すまないな、今日は大した成果を上げることができなかった。また明日調べてみようと思う」


「いえ、ディザ様から伺った情報は、どれも今まで把握できていなかったことです。感謝申し上げます」


 そう言って、マモンは頭を下げた。

 

「ところで、これらの情報とワーウルフの関係はありそうなのか?」


 俺はふと思った疑問を投げる。

 マモンはワーウルフに固執しているようだったから、やはり気になってしまう。

 俺の質問を聞いて、マモンは手を顎に当てて考え始め、少し経ってから、答え始めた。

 

「すみません、関係するかどうかはハッキリとは分かりません。もしかしたら、そういうこともできるかも・・・・・・といった程度でしょうか。ワーウルフは確かに隠密性が高い生物です」


 マモンの回答は、曖昧なものだった。

 決定打となり得るような情報が無いので、仕方がないのだが。


 情報共有はあらかた終わったので、最後にどうしても気になっていたことを、マモンに聞くことにした。

 今回の件に直接関係はないかもしれないが、気になることを解消したい気持ちはある。


「なあ、マモンはどうしてワーウルフのことがそこまで気になるんだ?」


 それを聞いたマモンは、やはり普段とは違って、重く真剣な表情だった。


「それは・・・・・・過去の話です」


 マモンはそれ以上何も話そうとしなかった。

 その真顔から真意を読み取ることはできなかったが、少なくとも明るい話ではないことは察せた。


 そして、調査の二日目が始まった。

 その日はアイリスと俺に分かれて、張り込みをすることにした。

 何かが起きるのをじっと待つことは、後手に回されている気分だが、実際こっちが圧倒的に不利なので仕方がない。


 俺は木の上に身を潜め、ゴブリン一人に対象を絞り、何かが起きるのを待つことにした。

 この作戦も、襲撃対象がこのゴブリンや、アイリスが張り込んでいるところは関係ない場所だったら、何も得ることができず失敗に終わるが、今はこの手段しか思いつかなかった。


 張り込みを続けて二時間、ゴブリンの周りでは何も起きず、森全体の雰囲気にも異変を感じなかった。


「くそっ、失敗したか・・・・・・?」


 長い時間待っていても、何も起きなかったので、次の手を考えようと思った瞬間、その一瞬で見ていたものに変化が起きた。


「な・・・・・・?!」


 さっきまで普通に過ごしていたゴブリンが、いつの間にか血だらけになって殺されていた。

 その死体は、前日に見たオークの死体と同じく、大量の切り傷を負っていた。


 あまりにも衝撃的な出来事だったので、俺は咄嗟にゴブリンの死体のところへ駆けていった。

 だが、それはあまりにも迂闊な行動だった。


 俺がゴブリンの死体にたどり着いた途端、一瞬だけ周囲で何かの気配を感じた。


「まずい・・・・・・!」


 俺は防御のために、全身を闇で覆った。

 その刹那、全身に衝撃が走った。

 間一髪のところで、なんとか防御は成功した。


 あまりにも突然すぎる攻撃と、あと少しで死んでしまう状況だったせいで、俺の精神力は相当削られてしまった。

 それでも、次に何かをされてしまう可能性もあるので、俺は周囲の警戒を続ける。

 だが、二度目の攻撃が来ることはなかった。


「ふぅー・・・・・・」


 緊張から解かれ、大きな息を吐いた。

 見えない敵からの攻撃、それは敵が姿を消しているのか、遠くからの攻撃なのかは分からないが、情報が掴みづらい理由の一つは分かったような気がする。

 確かに、毎度こうやって襲撃されてしまったら、何もわからずじまいだ。


 その後も調査は続けたが、これ以上の情報は得られず、誰かが殺されているのも確認はできなかった。

 アイリスの方も同じく、新しい情報は無いようだった。

 今日の調査はこれで終わりにすることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ