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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第四章「自分の仲間」
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第三十話「マモンとは」

「魔王城の危機?」


「はい」


 どうして、その話を俺が帰ってすぐにしなかったのか。

 マモンなりの考えがあるのだろうが、その理由を聞くのは後にして、先に危機について聞こうと思った。


「詳細について話してくれ」


「承知しました」


 俺は、さっきまでの運動会で浮ついた気持ちを引き締める。


「最近、この魔王城の付近で、見たことのない魔族が確認されています。それだけならまだいいのですが、運動会が開催される前日には、魔王城の管理下にある、知性のない魔族までも襲われています。また、調査範囲を魔王城の外にまで広げたところ、魔族による襲撃は、この魔王城の周辺にのみ起こっていることだと判明しました」


「なるほど・・・・・・。何者かが、意図的に魔王城への攻撃を行っているかもしれないということだな?」


「その通りです」


「ふむ・・・・・・」


 今まで、俺が人族の闇属性だからという理由で、襲われたことはあったが、今回は魔族による魔族への区劇ということで、どんな相手なのかが全く予想できない。

 これは調査の必要があるかもしれない。


「申し訳ございません、ディザ様。このようなことが起きていながら、運動会など呑気なことをしてしまって・・・・・・」


 マモンは、俺が考え込んでいたのを、マモンへの怒りだと勘違いしたのか、申し訳なさそうに謝罪した。

 だが、ちょうど聞くに良いタイミングだと思った。


「なぜ、隠していた?」


「元々、ディザ様とアイリス様が城を空けてらっしゃる間、運動会の件を考えていました。お二人が不在の間、城を任された身として、何か役に立つことをしたかったのです。そして、私の都合関係なしに、ディザ様がお戻りになった時、開催しようと思いました」


 マモンは、取り繕おうともせず、素直な口調で語りかける。


「ですが、魔王城周囲で異変が起きて、もし我々だけで対応が難しい状況になることを恐れ、万が一のためにディザ様には城に居てもらいたかったのです。しかし、ディザ様のお役に立ちたく、運動会は開催したい。でも、この状況を知った状態では、運動会を楽しむことはできないのではないか。そう思い、本当に危機に陥るまでは、内密にしておこうと思いました」


 そしてマモンは、頭を下げた。


「すべて、私の勝手な都合での判断です。ディザ様に嘘をつき、危険な状況を放置した。どのような処罰も受け入れるつもりです」


 結局のところ、マモンは俺が魔王城の魔族を知ってほしいから、そしてその機会を楽しんでもらいたいから、今回のような行動を取った。

 マモンは、自分の都合と言ったが、それは他人のことを気遣おうと思う自分の都合だ。

 彼はそういう男だ。


「気にしなくていい、頭を上げろ。お前の判断を俺は責める気はない。そもそもが、俺のための判断だし、こうして素直に話してくれた時点で、いつまでも過ぎたことにこだわるつもりはない。ただ、一つ言うとすれば、事前に俺に言って、運動会開催前に問題を解決するべきだったな。そして、マモンも憂うことなく、運動会を満喫してほしかったな」


 マモンは俺の言葉を聞いて、感動したのか、少し泣きそうになっていた。

 頭を上げろと言われ、一度頭を上げていたが、再び頭を下げた。


「ありがとうございます!」


 いちいち頭を下げなくてもいいと思ったが、これも彼の感情表現の一つだと思い、俺は何も言わなかった。


「さて、本題に戻るが、魔王城の周辺の魔族について、何か対策は考えているのか?」


「申し訳ございませんが、現状は情報不足が著しく、未だ調査の段階です。しかし、その襲ってきた魔族が強力であるだろうという情報が入ってきています。なので・・・」


「俺に調査してほしいということか」


「失礼を承知の上ですが、その通りです。ディザ様と、加えてアイリス様のお二人なら、おそらくはどんな相手だろうと、対応はできると思います」


 確かに、俺より強い魔族はそうそう居ないだろうし、アイリスまで一緒に居れば、特に問題はないだろう。


「分かった、そもそもこういう事態にこそ、力がある魔王が動くべきだ。魔族の主として、お前らを守る必要があるからな」


「すみません、もっと早くにディザ様にお願いすれば・・・・・・」


「もうそのことはいい」


 マモンはまだ引きずっているようだ。

 反省は良いことだが、すぐに切り替えられないのは、彼の悪い癖かもしれない。


「今日はもう遅いし、俺は明日から調査に出ようと思う。アイリスも呼べば来るだろうし、もしも城に敵が襲ってきた場合は、頼むぞ」


 さすがに運動会の当日、日も暮れてしまった今から調査に出るのは難しいが、早く済ませたいことなのは間違いない。


「承知しました」


「話は以上か?済んだなら、退室していいぞ」


 退室の許可は出したが、マモンはまだ何か言いたげだった。


「言いたいことがあるなら、気にするな」


「では、最後に一つだけ・・・・・・、襲い掛かってきた魔族がワーウルフであるなら、絶対に私にお伝えください」


 マモンはいつものへりくだった口調とは正反対に、今までで一番力強く言葉を発した。


 マモンが魔王室から出ていき、俺以外誰も居なくなった部屋に、アイリスを呼んだ。

 来い、と呼べばどこかからすぐ来るので、会うのは簡単だ。


「ということで、明日から城の周辺の調査に出る。魔族を襲う者を探そう」


「了解ですっ」


 先ほどまでマモンと話した内容を伝えると、アイリスは敬礼して、理解したことを伝える。

 

 今日の用事はこれで終わりで、俺は就寝することにした。

 勝手にアイリスも潜り込んできたベッドの中で、マモンの最後の言葉を思い出す。

 マモンがあそこまで力強く何かを言うことは、今まで見たことが無かった。

 それだけに、どうしても何か事情があるのかと、気になってしまう。

 今回の件が、マモンの言うワーウルフは関係が無いのであれば、杞憂で終わってくれるのだが。

 

 少しの不安を抱え、明日に備えて、俺は目を閉じた。

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