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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第四章「自分の仲間」
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第二十九話「魔王城運動会」

 城中の魔族たちが、闘技場へと集まった。

 魔族たち皆観客席で、会場の真ん中に立つマモンの方を向いている。

 これから開会式が始まるところだ。

 俺は、入場口の手前で、魔王としての挨拶をするために待機している。


「それでは、魔王ディザ様の挨拶に入ります」


 主催のマモンの話が終わった後、俺の出番になる。


「えー、ディザだ。俺はまだみんなのことをあまり知らない。今日の運動会では、みんなの能力をしっかり見たいと思う。最優秀選手には、俺が叶えられる願いを一つなんでも叶えよう。みんな頑張ってくれ」


「「「「うおおーーーーー!!!!」」」


 俺の挨拶が終わると、観客の魔族たちは大声で叫んだ。

 

「ただいまより、魔王城運動会を開催します!」


 そうして、運動会が始まった。


 全体に適応されるルールがいくつかある。

 最低一つの種目には参加すること。

 属性の使用は可能であること。

 他者の妨害をしてはいけないこと。

 これだけだ。


 早速最初の競技が始まる。

 俺は、特別席として、闘技場の観客席の中でも、最も見晴らしが良い位置で、競技を観戦することになっている。


 初めは短距離走で、一応色々な魔族が出たが、ケルベロスが圧倒的なスピードで圧勝した。

 というか、人族とは違って、身体的特徴があまりにも違いすぎるため、種目によってはまるで勝負にならないのではないだろうか。

 最優秀選手は、俺一人の判断で決めないといけないことになっているので、早くも困ってしまった。

 玉入れなんかは、ハーピーや鳥人が玉をもって飛んで、直接かごに入れている。

 優劣を決めるというよりも、自己アピールといった感じに見える。

 まあ、元々の理由はそうなんだが。


 午前の部が終わり、昼休憩に入った。

 全員が昼休憩のために、食堂に押し寄せてしまっては、休憩中に何も食べられない者も出かねないので、開会式前に予め、ケットシーたちが食事を配布していた。

 俺も、すでにもらっていた塩むすびとウィンナーを食べ、お茶で喉を潤す。

 

 一人で食事をしていると、アイリスが特別席までやってきた。


「ディザ様~~、あ、食事中すみません、大丈夫でしたかっ?」


 アイリスは悲しそうな顔をしていて、俺が食事中なのを確認すると申し訳なさそうな顔になった。


「いや、気にしなくていいぞ」


「それじゃっ、失礼しますっ」


 アイリスは俺の横へ座った。


「調子はどうだ?」


「・・・・・・ずっと見てたんですから、分かってるくせにっ」


 アイリスは唇を尖らせて拗ねる。

 アイリスの言う通り、俺は全競技を観戦していたため、誰がどれぐらい活躍してるかは分かっている。


 アイリスは驚くほどに普通だった。

 彼女は、どうやら妨害で上位に上がる気満々だったらしく、妨害が禁止のルールが発表された途端、あまりにも平凡な身体能力で、良くも悪くもない、並みの成績をたたき出した。


 開催前は気合十分だったのに、開会式のルール説明で、妨害禁止のルールを聞いたときの、アイリスの絶望した顔を見てしまったら、イジりたくなるのも仕方がないだろう。


「まあ、今回は個々の長所を見るための会なんだ。運が悪いと思え」


「・・・・・・はぁい」


 アイリスは最優秀選手の望みが無くなったのか、ものすごく落ち込んだ。

 だが、俺もアイリスの得意分野の本気を、結局見ることができなかったので、それはそれで残念だった。


 食事を終えると、俺はアイリスと別れ、選手控室へと向かった。

 ちょっと会ってみたい者たちが居た。


 選手控室に行くと、休憩をしていたスライムたちが居た。


「あ、ディザ様!お疲れ様デス!」


「ああ、お疲れ様」


 俺を見かけて、声をかけてくれたのは、スライムの一番年下の、スロームだった。


 スライムは粘液状の生物で、小さい目と鼻が付いてるだけで、運動会で他の魔族と競い合うことは難しい。

 だから、選手控室で、次の競技の選手の案内をしたりと、裏方に徹している。

 

「スライムたちのおかげで、この運動会も円滑に進んでいるのだろう。ありがとう」


 俺はしゃがんで、極力スロームに目線を近づけて話す。


「そんな!僕たちは裏方も大好きデス!みんなが楽しんでるのを見るだけで、僕たちまで楽しいデス」


 スロームは身体を伸ばしたり縮めたりして、喜びを表現している。

 その姿は愛くるしかった。

 スライムたちは、普段も城内の掃除をしているため、こういった裏で支えるような、目立たない仕事は嫌いじゃないのかもしれない。


「選手として出ていないから、最優秀選手の褒美を与えられなくてすまない。後日、こっそりプレゼントでもするから、みんなで欲しい物を考えておいてくれ。内緒だぞ」


 俺は右人差し指を自分の唇に当て、しーっとした。

 特別に褒美を貰えることなのか、仕事を認められたことなのか、スロームは感動で身体を震わせた。


「ありがとうデス!考えておきマス!」


 昼休憩の時間も終わりそうなので、俺は再び特別席へと戻った。

 午後の部も、基本的には午前の部と同じで、人族でもよく見たような種目だった。


 ただ、最後の種目の、混合障害物リレーはかなりの見ごたえがあった。

 それぞれの系統の魔族から、一名ずつ選出され、それが四チーム作られる。

 つまり、系統による差は、均等に振られることで無くなり、そして様々な魔族が、個々の力を活かしていくリレーだ。


 チームの内訳は、ハーピー、オーク、ゴブリン、ケルベロスだった。

 

「位置について、スタート!」


 審判をしているマモンの部下であるアザゼルが、指を高く上に向け、その指先で小さく爆発を起こし、それをスタートの合図とした。


 まず初めは、ハーピーたちだった。

 第一走者は、スタートと同時に上空へと飛ぶ。

 空高い位置に待機している、グリフォンたちからバトンを受け取り、次の走者に渡すまでが、ハーピーの区域だ。

 

「たっけー」


「俺なんも見えないんだけど」


 目があまり優れていない魔族たちは、上空の様子をはっきりとは分からない。

 そういう俺も、状況をはっきりとは分からないが、ものすごく高い位置まで飛んでいる姿は、見ていて面白かった。


 ほぼ同じぐらいのタイミングで、ハーピー四匹が地上へと戻る。

 次は、ゴブリンの番だった。

 小柄なゴブリンたちは、網くぐりの勝負だった。

 人族の大人では、スムーズに進むことは難しいぐらいの窮屈な網の中を、ゴブリンたちはバトンを持ちながら、スイスイと進んでいく。

 まるで苦労するような様子はなく、どのゴブリンも楽々と突破した。


 第三走者は、オークたち。

 力自慢のオークたちは、バトンを持ちながら、反対の手で、巨大な岩石を持ち上げ、その状態で走らなければならない。


「フン・・・ンーーーー!!!!」


 岩石の大きさはかなりのもので、おそらくオーク以外の魔族では持ち上げることすらできないだろう。

 オークたちも、だいぶ苦戦をしていて、差が生まれつつあった。

 一位のチームは、オークの長である、オルクのチームだった。

 ちなみに岩石は、マモンに頼まれたので、俺が土属性で作った。


 最後のケルベロスの区画は、障害物はなく、純粋なスピード勝負だった。

 バトンを渡されたケルベロスたちは、バトンを口にくわえ、全力疾走する。

 最初の短距離走でも見たそのスピードは、今まで見たどの生き物よりも、圧倒的な速さに見える。


「イケー!」


「頑張れ!頑張れ!」


 チームのメンバーはそれぞれ、自分のチームを応援する。

 しかし、ヘルハウンドたちのスピードは互角で、オークの区画で生まれた差は縮まることなく、そのままの順位でゴールした。


「やった~!」


「みんな、すごいだす!」


「ヨクヤッタナ」


「「「ワフー!」」」


 一位のチームはその勝利を、お互いに喜び褒め合った。

 負けたチームも、やりきったからなのか、みんなが良い笑顔だった。


 すべての種目が終わり、閉会式が始まった。

 開会式同様、マモンが会場の真ん中に立ち、他の魔族は観客席に座る。


「それでは、最優秀選手の発表です。ディザ様、お願いします」


 マモンに呼ばれ、俺も会場の真ん中へと行く。


「みんな、今日はお疲れ様。みんなの個性を見ることができたし、白熱した勝負もあり、見ていて楽しかった。みんなも楽しかったと思う」


 観客席の魔族たちは、誰もが良い顔をしていた。

 今日一日を満喫した証に違いない。


「それでは、最優秀選手の発表をしよう。最優秀選手は・・・・・・」


 会場内に沈黙が訪れる。

 全員が、息を飲んだ。

 

「最優秀選手は、オルクだ!最後のレース、素晴らしかった!おめでとう!」


 俺が選手の名前を挙げると、会場内で拍手が響き渡り、歓声も上がった。

 オルクは、混合障害物リレーで、間違いなく活躍をしていた。

 熱い戦いを見せてもらったし、俺は彼を最優秀選手にすることにした。

 会場内の魔族も納得していて、オルクを称える声も聞こえる。


「では、これで魔王城運動会を閉会します!」


 最後は、マモンの挨拶で、運動会は終了した。


 俺は、この運動会の主催者であるマモンに、労いの言葉を贈るため、運動会が終わった後、魔王室へと呼んだ。


「お疲れさま、マモン。今日はすごく楽しかったよ。ありがとう」


「ディザ様がお喜びになったようで、私は光栄に思います。開催して本当に良かった」


 マモンは深々と礼をする。

 礼を言いたいのはこっちだったのに、俺が礼を言われてしまう。

 それが、マモンだが。


「素晴らしい部下を持てて、俺もうれしく思う。今後もよろしくな」


「身に余る言葉ありがとうございます。私も、今後もディザ様にお仕えいたします」


 マモンへの礼は言い終えたので、もう退室してもいいと伝えようと思った矢先、マモンが申し訳なさそうな顔をしてこちらを見た。

 何か言いたげな顔をしているが、なかなか言い出さない。


「どうしたマモン?何か話があるなら、遠慮くなく話していいぞ」


「すみません、こんなタイミングで、しかもわざわざディザ様を騙すようなことまでして、申し訳ない気持ちしかありません。どうしても話さなければならないことがあります」


 許可を出してもなお、マモンは言い淀んでいた。

 よほど、言いづらいことらしい。

 

 マモンは一呼吸を入れて、話始めた。


「実は、ディザ様を城へお呼びした理由は、運動会が主たる理由ではありません。魔王城が危機に陥っているかもしれないため、それに備えて、城にお帰りいただきたかったのです」


 マモンの表情は、深刻だった。

 

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