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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第三章「闇属性専門教師レイス・ディーン」
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第二十六話「想いは嘘ではないけれど」

「「先生!」」

 

 コルソンを殺した翌日、学校に行くと、モンデとシックが心配そうに待っていた。


「大丈夫だった?もう方が付いたの?」


「ああ、もう終わったよ。あの悪魔が現れることはもう無い」


 それを聞いて、シックは安堵した表情を見せた。

 自分の生徒の心配のタネを潰せて、俺までほっとした。


「先生、次は俺も役に立てるようになる!だから、今日もよろしくお願いします!」


「ああ、もちろんだ」


 それから、俺は二人が一流の闇属性使いの戦士になるために、ほぼ毎日授業を行った。

 この国での用事は、基本的には先生として生徒に授業をするぐらいで、たまの休みはアイリスやマナと出かけたり、モンデやシックに外出の誘いに乗ったりした。

 

 そして、コルソンを殺してから、約半年ほどが経った。

 俺は、魔王討伐の旅に出るという建前で、ヒューゼ王国を出て、魔王城へ行くことにした。

 俺の周囲では何か動きを感じたり、異変があったりしたわけではないが、あまり長居しては、勇者としての本業が疎かになってしまうので、一般教師程度の価値に見なされかねない。

 そうなってしまっては、突然俺の立場がすべて消えてしまう可能性もある。


 それに、マモンが城に戻ってきてほしいと言っていることを、アイリスから伝えられている。

 さすがに、城を任せっきりにしているマモンの呼び出しを無視しようとは思わなかった。

 

 ヒューゼ王国を出発する日、予めそのことを伝えてあるモンデとシックは、マナの食堂に来てくれていた。

 朝早くだったので、食堂はまだ開店していなく、食堂の中の席を借りて、三人は対面して座った。

 アイリスは個室に、マナや他の店員は、店の奥で開店の準備をしているので、気楽に話しやすかった。


「二人とも、俺が居ない間は、教えた通り自主練習を欠かすなよ」


「はい!」


「はい」


 二人には基本的なことはもう教えてあり、後は精度を高めたり、本人の発想によって新しい扱い方を見つけたりする段階だ。

 

「半年間先生にはお世話になりました。心が折れそうなときも支えてくれたり、危険から守ってくれたり。先生としても勇者としても、レイス先生は、俺にとって一番尊敬する先生です」


「ちょっと、今生の別れみたいに言わないでよね」


「ごめんごめん。でもずっと一緒だったから、寂しくてさ」


 相変わらず、二人は仲が良さそうだった。

 俺が居ない間も、困ったときはお互いに助け合えるだろう。


「いつ戻るかは分からないが、必ずまた会えるはずだ。お互い夢のために、頑張ろう」


 俺は、二人にそれぞれ固く握手をする。

 次に会う時、どれほど成長しているかが楽しみだ。


 店の奥で、開店準備をしているマナにも、感謝を伝えるべく、俺は一度奥へと行った。


「半年間、ずいぶん世話になった。寝床に食事も、安く済ませてくれてありがとう」


「レイス君はお得意様ですからねー。気にしないでください。また旅から帰ってきたときは、ぜひ来てください」


「もちろん、ここで食事をすることこそが、ヒューゼ王国に戻ってきたことを俺に感じさせてくれるからな」


 マナはうれしそうに微笑んだ。

 俺が受け入れられているこの場所も、俺の大切な居場所の一つだ。


「レイスさん、私のほうは準備できましたよっ」


 モンデとシックのところに戻ると、アイリスがすでに居た。

 二人も、アイリスに別れの挨拶をしていたようだ。


「それじゃっ、二人ともまた会おうねっ」


 アイリスはモンデとシックに敬礼をした。


「はい!アイリスさん、本当にありがとうございました!」


「アイリスさん、元気でいてくださいね」


 学長には既に旅に出ることは伝えてあるし、もうすべての人に別れを告げることは終わった。

 いよいよ、この国から出る時だ。


「それじゃ、アイリス。行くか」


「はいっ!」


 俺とアイリスが店を出ようとしたとき、最後にモンデが一言だけ、俺に伝えた。


「レイス先生、魔王討伐の旅、お気をつけて!」


 その言葉は、彼にとっては俺を鼓舞するつもりの言葉であって、俺にとっては心に雲りを与える言葉だった。


 俺とアイリスは、魔王城への道を進んでいた。


「それにしても、ここ最近はずっと平穏に過ごせているな」


「人族の住む世界、良いところでしたっ。魔王城に居たときも良い心地でしたけど、魔族の私でもヒューゼ王国は過ごしやすいと感じましたっ」


 アイリスもかなり満喫できたようだ。

 アイリスとは、俺が学校に居る間は全く会っておらず、たまに休日遊ぶぐらいで、何をしていたかは詳しくは分からないが、頼みごとをすればきちんとこなしてくれたし、プライベートは詮索しないようにしている。


 それよりも、今気になることは、マモンが俺を呼んでいることだ。

 マモンは城の中でもかなり優秀な魔族で、城を彼に任せている間は、何の問題もないと思っていた。

 そもそも、俺は支配者として全体を管理しているわけではなく、あくまで代表の立ち位置であって、実質的な管理者はマモンである。

 そんな彼が、俺を呼ぶ用事とは一体何があったのだろう。


「なあ、アイリス。マモンから詳細は聞かされてるか?」


「すみません、マモン君には、絶対に私の口からお話しますので、必ず情報を漏らすことのないようにお願いいたします!って言われちゃったので、私からは何も言えませんっ」


 仰々しくマモンの真似をしながら、アイリスは答える。

 緊急事態なら、わざわざ隠す必要もないだろうが、それでも俺が居なければならない理由とは一体なんだろうか。

 とにかく、本人に聞くまでは分からない。


 魔王城へと向かう途中の俺の気持ちは、また城の魔族に会えることがうれしい気持ちが半分と、大事な生徒二人や、人族の街から離れることが悲しい気持ちが半分だった。

 確かに、俺の居場所は増えている。

 だが、コルソンのように闇属性の人族を狙う者や、闇属性の俺を殺そうと企んでいる者たちの問題は解決していなく、安寧とはまだ言えない。

 

 こちらから何かしらの情報を掴むことが難しいのがもどかしい。

 だが、相手から仕掛けられたなら、その時は最大限利用させてもらおう。


 未知なる敵に対して、俺は心構えをした。

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