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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第三章「闇属性専門教師レイス・ディーン」
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第二十四話「日常はなるべくして日常になる」

「よし、何かやりたいことあるか?」


「え、なげやり?」


 遊びに行くとは言ったものの、特に決めてはいなかった。

 そもそも、俺はあまり遊んだ記憶がないし、今の若者が何を娯楽にしているかが分からない。


「じゃあ、闘技会行きたいです。俺もちょっとは戦いのこと分かるようになったし、楽しめるかも」


「確かに、学ぶこともあるかもしれないし、良い案かもしれないな」


「遊びに行くって言ったのに、結局授業になっちゃうの?まあ、私も反対はしないけど」


 モンデの提案に、俺もシックも了承したので、三人で闘技会に行くことになった。

 

 闘技会が開かれる闘技場は盛況で、外からでも熱気が伝わるほどだった。

 やはりヒューゼ王国の闘技場なだけあって、規模はとてつもなかった。

 魔王城のそれとは、比べ物にならない。

 城のみんなが、この規模のでかさを見たら、きっと驚くだろう。


 俺たちが中に入ると、どうやらほとんど試合は終わっていたらしく、今日はもう決勝試合しか残っていなかった。


「決勝しか残ってないんですね。もっと見たかったのに」


「むしろ、決勝を見逃さなかったことを幸運に思おうよ、モンデ。決勝ってことは、単純に考えるなら、強さが一番と二番の人の戦いなんだから」


「それもそうだな。なあ、どっちが勝つか賭けでもしようぜ。手前側の人か、奥側の人か」


「全く知らない人同士の戦いで、どっちが勝つかなんて、分からないよ」


「だから賭けなんだろ?」


 モンデとシックが楽しそうに会話をしていると、剣闘士の二人が闘技場に現れた。

 剣闘士は鎧を着ていて、お互いに剣と盾を持っている。

 もっとも、その剣は剣の形を模しているだけで、殺傷能力はない棒切れみたいなものだが。


「来たみたいだな。俺も闘技会なんて見るの初めてだから楽しみだ」


「私も初めて」


「面白いですよ!もちろん安全は考慮されてるんですけど、どうなるか分からないってハラハラ感がたまらなくて!」


 モンデはとても興奮していた。

 かくいう俺やシックも、初めての闘技会で、少しわくわくとした表情をしている。


 試合が始まった。

 剣闘士の二人が、お互いに剣や盾を駆使して、攻防が繰り広げられている。


 はっきり言って、やっぱり見世物レベルと思ってしまう。

 実際に命のやり取りをしていた身からすれば、本気度が足りないというか、相手より自分が上だということを証明するに留まるというか、本当の戦闘に比べると、見劣りしてしまう。


「ど、どうですか?先生、シック」


 モンデも、試合前の興奮はどこへ行ったのか、苦笑いで俺とシックを見る。

 モンデももしかしたら、拍子抜けしてしまったのかもしれない。


「私はなんか物足りなく感じるかな。別に命の取り合いを見たいってわけじゃないけど、本気の戦いが見れると身構えてたら、そこまででもなかったって感じ」


 何の気遣いもなくに、シックは素直に感想を言う。

 俺と同じ意見だった。


「俺もそんな感じだな。特に俺は修羅場を経験しているから、どうしても・・・・・・」


「俺もそう思いました・・・・・・。学校で戦い方を学んだからかな。せっかく行きたいと言ったのに、すみません・・・・・・」


 モンデは落ち込んでいた。

 さすがにモンデに落ち度はないので、ちょっとかわいそうだ。


「昔は好きだったのにな・・・・・・」


「まあ、本当の戦闘を学んでいたことを実感できたってことにしよう。成長を感じるいい機会だった」


「はい・・・・・・」


 闘技場での試合が終わり、今度はシックの提案で演劇を見ることにした。


「私、物語が好きなんだよね。だって、都合が良いもん。人が楽しめるように作られてるんだから、楽しいに決まってる」


 シックは演劇が好きだったようだ。

 育成学校に入学してからは、娯楽とは縁のない生活をしていたようで、彼女にとっては久しぶりらしい。


「モンデって、レイス先生が来る前、座学の授業でよく寝てたけど、演劇とか大丈夫なの?ずっと椅子に座ってじっとしなきゃいけないんだよ?」


 シックはニヤニヤとしながら、モンデをからかう。


「うーん、まあその時になったら分かるでしょ」


「ほんと、適当。先生は演劇とかどうなの?見たことある?」


「育成学校に入る前にちょっとだけ。でもその時は興味なくて寝てしまったな」


「ふーん、勇者様も演劇中に寝ちゃうんだね」


 からかう相手が、今度は俺に変わってしまった。

 シックには、人をいじる癖があるみたいだ。


「小さい頃は、な。でも、大人になってからは見ていないし、ちょっとワクワクしている」


「ふーん、まあ今楽しみにしてるならそれでいいか」


 そうこう言ってると、開演の合図が起きた。


 話の内容は、主人公の想い人が魔族に攫われて、主人公がそれを救いに行き、最後に二人は結ばれるというシンプルなものだった。

 内容も分かりやすく、頭に入りやすい。

 演者の表現力も高く、純粋に楽しめた。

 モンデは途中で寝てしまっていたが。


 俺たちは次に行く場所を探すために、街をブラブラ歩きながら、さっきの演劇の話をしていた。


「結局モンデ寝てたじゃん」


「椅子の座り心地が良くて・・・・・・」


 モンデは、自分は悪くないと言いたそうな顔をしていた。


「先生はどうだった?楽しかった?」


「ああ、楽しかった。主人公も幸せになれて、見ていて俺も感動したな」


「そうだね、だって物語は都合よくできてるんだから」


 シックはそう言った後、一呼吸置いた。


「私も、そんな都合の良い未来を掴みたい」


「そうだな」


 シックの小さな呟きに、俺は強く気持ちを込めて返した。


 そのあとも様々な場所に行って、三人で楽しんだ。

 モンデはやっぱり純粋な少年だってことや、シックが実はイタズラ好きだってことも分かって、充実した時間だった。

 時間も夕方になっていて、最後に食事でもして帰ろうという話になった。


「最後に、俺がいきつけの食堂に連れて行こう」


「うおー!俺めちゃくちゃ腹減りました!」


「私も。どんな店なんだろう」


 俺は、二人をマナの食堂へと案内した。

 中に入ると、相変わらず、店にはほとんど客は居なかった。


「いらっしゃいませー!あ、レイス君と、もしかして生徒の二人?」


「ああ、今日は三人で色々と出かけていたんだ」


 マナはいつもの笑顔で俺たちを接客した。

 俺が教師をしていることや、二人の生徒の面倒を見ていることはすでに話していたので、察したようだ。


「ずいぶんフレンドリーな店員だね」


 シックは人見知りなところがあるのか、俺に小声で言う。


「まあそういう人だからな。でも、そういうのが苦手でも、彼女は察せるタイプだから、あんまり気にしなくていいと思うぞ」


「う、うん」


 シックと俺は席へ座った。


「もしかして、レイス先生とお知り合いなんですか?!」


「うん、レイス君のあんなことやこんなことまで知ってるよー」


「ええ!ずるい!」


 モンデは入ってすぐのところに居たままで、マナとすっかり仲良くなっていた。

 だが、話の内容は見過ごせないものだった。


「おい、適当なことを言うな。こいつはすぐ信じるんだから」


「ごめんなさいー」


 マナには余計なことをこれ以上言わせないようにして、モンデも一緒に席に座らせた。

 

 それぞれが自分の好きなものを注文して、三人で食事を楽しんだ。

 もちろん、俺は羊肉のステーキを頼んだ。

 モンデも同じく肉料理で、ローストチキンを頼んでいて、シックはキノコのクリームパスタを頼んだ。


 食事を終え、しばらく雑談をしていると、ドアが開く音がした。


「レイスさんっ、居場所突き止めてきましたよっ」


「ああ、助かる」


 正体はアイリスだった。

 どうやら、コルソンの情報は集め終わったようだ。


「あなたはあの時の!助けていただいてありがとうございます!」


「あの時はありがとうございました。あなたが居なかったら、私たちはどうなってたか分からなかったです」


 モンデとシックも、アイリスのことを覚えていたようだ。

 ただ、普段俺に敬語を使わないシックが、アイリスには敬語を使ってるのが気になってしまう。

 魔王城のときでもそうだったが、なにか不思議なオーラでもあるのだろうか。


「レイスさんのかわいい教え子なら、当然助けるよっ。あ、私はアイリス。レイスさんの相棒だよっ。ねっ?」


 アイリスは俺の方を見て、ウィンクをする。


「まあ、そんな感じだな」


 一応、間違ってはいないので否定はしない。


「アイリス、居場所は分かったみたいだが、今からでも行けるか?」


「はいっ、大丈夫ですよっ」


「じゃあ、行くか」


 アイリスは先に食堂から出ていった。

 俺はモンデとシックの方を向く。


「モンデ、シック。すまないが俺は用事ができた。二人は寮に戻っていてくれ」


「先生、用事って、悪魔のことですか?」


「先生・・・・・・」


 モンデとシックは、心配そうに俺を見つめる。

 これから俺が行こうとしている場所は、察しているようだ。


「大丈夫だ。生徒を危険から守ることが、教師がすべきことだと俺は思うからな。それに・・・・・・」


 俺は二人の肩に、それぞれ手を置いた。

 確かに、あの悪魔は、二人にとっては今まで見たことないような、恐怖の存在かもしれない。

 心配するのも仕方がないかもしれない。

 でも、大丈夫だ。


「俺は、人族最強と呼ばれている、四代目勇者レイス・ディーンだからな」

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