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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第三章「闇属性専門教師レイス・ディーン」
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第十九話「それは魔王のためだから」

 俺は育成学校に訪れ、受付を通して学長室の前へと案内してもらった。

 やはり、学長に直接会う時は少し緊張してしまう。

 あの威厳に満ちた雰囲気は、物怖じせずにはいられない。

 

「レイス・ディーンです」


「入りなさい」


 ドアを数回ノックして名乗ると、部屋の中から入室の許可をもらう。

 俺は部屋の中に入ると、学長は以前会った時と変わらず、正面奥の豪華な椅子に座っていた。


「しばらく学校で教鞭を執りたいと思い、闇属性の生徒が居ないかどうか知りたくて来ました。紹介もしていただければ、ありがたいです」


 用件を先に伝えると、学長は俺に椅子に座るように促す。

 俺はそれに従い、椅子に腰を掛ける。


「闇属性を扱う生徒だが、二人だけ居るよ。二人とも二年生だ。君が今日来ることはこっちも把握していなかったから、今すぐに二人の指導を始めてもいい、とは言えないけどね。二人に話を通しておくから、明日また受付の方に行きなさい」


「ありがとうございます」


 学長は淡々と説明した。

 突然の俺の来訪にも、学長の対応はスムーズだった。

 あらかじめ、闇属性生徒の把握等の準備をしてくれていたらしく、本当にありがたい。

 

「一応、指導内容を概要でいいから教えてもらうよ」


 学長は真剣な表情で質問をする。

 この表情こそが、学長から感じる威厳の一因で、俺に緊張が走る。


「はい、まずはどれほど扱えるかの確認。それからは主に闇属性の扱いのパターンを教えたり、武器や体術との組み合わせを教えたりですね。基本的には、私と同じように勇者、そこまでは行かなくとも、それに近い能力を持てるほど成長できれば良いと思っています」


 表面上は、俺は人族及び勇者として、魔王討伐を目標とする人でなければならない。

 勇者ほどの実力者を育てたいという思いは、それに合致するはずだ。

 本来の目的は、闇属性の浸透、強力な闇属性の使い手が、人族にとって利益であることが広まることだが、これも結局は勇者ほどの実力者を育てることが過程にある。

 つまりは、嘘はついていないということ。

 学長は意味深な発言をしたり、妙に鋭いことがあるので、油断ができないことは、前回の時に思い知った。

 変に悟られるようなことは絶対に避けたい。


 学長の次の言葉を聞くまでのわずかな時間さえも、じれったい。

 問題ない、と自分に言い聞かせ、平然とした態度を装う。


「うん、分かった。おそらく二人からも、君の指導への承諾は受けられるだろうから、明日からよろしく頼むよ」


 その言葉を聞いて、ほっとした。

 何の問題もなかったようだ。


「はい、人族のために精一杯頑張ります」


 最後まで気を抜かず、真剣な口調で話す。

 

 話はひと段落つき、用件は終わったと思ったところで、学長が口を開いた。


「そういえば、何か周りで異変が起きたり、違和感を感じたりはしなかったかい?」


 そう話す学長の表情は、少し曇っているように見えた。

 こちらの心配をしているように感じる。


「いえ、特には・・・・・・」


 本当に心当たりが無いので、素直に答える。

 だが、俺の返答を聞いても、学長の顔は変わらなかった。


「そうか、ならいいんだ。今日はもうこちらから話すことはすべて終わったよ」


 少し気になってしまったが、話すことはもう無いと言われた以上、言及するのも憚れる。

 俺は一言入れて、学長室を退室した。


「ふぅー・・・・・・」


 俺は部屋を出るや否や、大きなため息をついた。

 ようやく緊張から解放された喜びが大きかった。

 人族での活動は、まだ本格的には始まっていないが、一つの壁を超えた感覚があった。

 それほどまでに、学長との話は疲労してしまう。


 今日の予定はもう特に無いし、校内を散策することにした。

 勇者だから顔は知られているだろうし、不信に思われることはないだろう。


 見知った校内を歩いていると、自分が学生だった頃を思い出す。

 何も考えずに、ただ強くなることだけを考えていたあの頃。

 そして、自分が今に至るまでのこと。


「うっ・・・・・・」


 一人でここに居ると、色々余計なことを思い出して、気持ちがふさぎ込んでしまいそうだった。

 俺は、さっさと学校を出ることにした。


 時刻はもう夕方近くになっていて、俺は今日泊まる宿を一度見つけることにした。

 滞在場所を探していなかった、自分の無計画さが悔やまれる。

 学生時代は寮に住んでいたが、卒業してからは旅先で宿を探すようになっていた。

 しかし、魔王城に住むようになってから、その癖が抜けてしまったのかもしれない。


 街を歩いていると、少し離れた場所で、アイリスを見つけることができた。


「あ、レイスさんっ!探しましたよっ!」


 手を振りながら、小走りでこちらに向かってくる。


「どうしましたっ?ちょっと疲れてるように見えますけど・・・・・・」


「ああ、大変な用事があったんだ」


 アイリスは心配そうに俺を見つめている。

 本当は用事以外に疲れる要素があったが、それは言わないことにした。

 アイリスに会えただけで、気持ちがマシになれた。


「そういえば、アイリスは今日はどうするんだ?帰るなら、俺は一緒に行けないぞ」


「それは心配なくっ!私の宿泊先は決まってますし、もしレイスさんが泊まるところが無い場合に備えて、もう一人多く泊まってもいいという約束をしてきましたっ。通常よりも安くしてくれるらしいですよっ」


 アイリスは敬礼して答えた。

 アイリスもここに滞在するらしく、ついでとはいえ、俺の宿泊先まで用意してくれているらしい。

 食堂で突然会った時はさすがに驚いたが、やはり居るとすごい助かる存在だ。


「ってか、ここでも一緒に寝ないといけないのか・・・・・・?」


「いえっ、部屋は別々にするようにって釘を刺されました・・・・・・」


 露骨にアイリスがへこむ。

 どういう理由かは分からないが、とりあえず部屋では一人で落ち着けるようで安心した。


「それじゃ、案内してくれ。今日はもう遅いし、休もうと思う」


「了解ですっ」


 再びアイリスは敬礼して答える。


 アイリスに連れられて、俺はとある場所に着いた。


「ここって・・・・・・」


「マナちゃんの家に泊まっていいって許可が出ましたっ!」


 その場所は、今日すでに訪れていた、マナの食堂だった。

 マナは家族で食堂を経営していて、家がそのまま店になっている。

 確かに、マナと俺は知り合いだし、知り合いが男女同じ部屋で寝るのはやめてほしいという気持ちは分からないでもない。


「早く中に入りましょっ。お邪魔しまーす!」


 俺は強引に手を引っ張られて、なされるがままに食堂の中に入る。


「マナちゃんっ、来たよーっ」


 アイリスとマナは、会ってすぐに軽くハグをした。


「アイリスちゃん、ようこそ!レイス君も、いらっしゃい!」


 マナはハグをしながら、軽く俺の方を見る。

 完全に蚊帳の外の気分だ。


「それにしても、いつの間にか仲良くなったんだな」


「意気投合したんですよ。アイリスちゃんって話すと良い子だって分かって。ねー」


「ねーっ」


 俺がこっそり抜けたときは、言い合いをしていたが、そんな様子など全く感じられなかった。

 言い合う二人を放置したことも、特に何か言われることもないようだし、だいぶ気が楽になった。


 マナの両親の厚意で、食事もご馳走になり、アイリスやマナと三人で談笑をしたりして時間を過ごした。

 話の盛り上がりは収まることを知らず、俺は明日も用事があると二人に伝えて、自分の部屋に戻って休むことにした。


 これから寝ようとする頃、ベッドの中で明日のことを考えると少しわくわくした。

 明日からは、いよいよ先生として活動することになる。

 俺も、人に憧れられる先生になりたいと思いながら、俺は眠りに落ちた。


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