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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第二章「新生・魔王軍」
19/175

幕間

 戦いを見学している間、遠くからの視線を感じた。

 どうにもそれが気になって、一人になった今、それを確かめようと思った。


 辺りに集中すると、少し離れた位置で気配を感じる。

 こちらの気配は消して、気配の感じる方へと向かう。


 その場所に着くと、ローブ姿の男が居た。

 視線の正体はこの男だったのだろう。


「さっきの戦いの時、私たちを監視していたのはあなた?」


 突然声をかけられたことに驚いた男は、ひどくこちらを警戒していた。


「な、なんだお前は」


「なんだと言われても。それはこっちのセリフ。遠くから見られて、不快に思わないわけないよ」


 ローブの男は、腰からナイフを取り出し、構える。

 どうせ殺すが、些細な抵抗に付き合うのすら面倒だ。


「あなたは何者?誰かに雇われてこんなことしてるとか?」


「だ、だから何だってんだ。監視するだけで金になる仕事だって言われてんだ。お前に悪いことはしないから、ここは素直に引いたほうがいいぜ。女に何かできるわけないだろ」


 適当に質問をしてみたら、図星だったらしく、ぺらぺらと話してくれた。

 どうやらこの男は、何も知らずにこんなことをさせられてるらしい。

 性別で強さの判断をするような男だし、所詮小物ということだ。

 私たちにとって邪魔なだけで、存在価値はない。


 私は、男に向かって歩き出す。


「う、うわあああああ!!!!」


 怯えた男は、私の心臓を貫こうと、ナイフを突き出してくる。

 私は避けるつもりもなく、正面からそのナイフを受ける。

 男にとっては不気味だっただろう、何もない場所を深く刺したような感覚など、そう味わえるものではない。


「ひ、ひぃぃぃ、許してくれ!俺はただ頼まれただけなんだ!」


 あまりの恐怖に腰を抜かして、男は立てなくなっていた。

 私はその男の耳に口を近づけ、


「あなたの喉には大量の蛆虫が湧いている。さあ、そのナイフで掻き出さないと死んでしまいますよ」


 と、囁いた。

 男は持っていたナイフを逆手にし、一心不乱に自身の喉を抉りだしていった。

 絶命するその瞬間まで手が止まることなく、喉から大量の血が噴き出し、見るも無残な姿になっていた。


「無知というのは本当に罪だね。それに対して、魔族のことを知ろうと、色々質問してくれたあの人は、やっぱり素敵だなぁ」


 私は自分の主のことを思い出す。

 私にとって、あの人は特別な存在になっていた。

 自分は不遇な環境に追われているというのに、それでも何を恨むわけでもなく、ただ幸せを求めている。

 私はその姿に心打たれ、力になりたいと思うようになっていた。


 だから、邪魔をしてくる奴らから、私が守ってあげるんだ。


「ディザ様、早く戻ってこないかなっ」

 

 リトレ村に行った主の帰りを、私は待ち合わせ場所の広場で待っていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 2章まで読みました。なかなか見かけないレベルの人格破綻主人公で大変好感が持てます。今後もイカれっぷりを発揮してくれることを期待しながら読もうと思います。
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