幕間
戦いを見学している間、遠くからの視線を感じた。
どうにもそれが気になって、一人になった今、それを確かめようと思った。
辺りに集中すると、少し離れた位置で気配を感じる。
こちらの気配は消して、気配の感じる方へと向かう。
その場所に着くと、ローブ姿の男が居た。
視線の正体はこの男だったのだろう。
「さっきの戦いの時、私たちを監視していたのはあなた?」
突然声をかけられたことに驚いた男は、ひどくこちらを警戒していた。
「な、なんだお前は」
「なんだと言われても。それはこっちのセリフ。遠くから見られて、不快に思わないわけないよ」
ローブの男は、腰からナイフを取り出し、構える。
どうせ殺すが、些細な抵抗に付き合うのすら面倒だ。
「あなたは何者?誰かに雇われてこんなことしてるとか?」
「だ、だから何だってんだ。監視するだけで金になる仕事だって言われてんだ。お前に悪いことはしないから、ここは素直に引いたほうがいいぜ。女に何かできるわけないだろ」
適当に質問をしてみたら、図星だったらしく、ぺらぺらと話してくれた。
どうやらこの男は、何も知らずにこんなことをさせられてるらしい。
性別で強さの判断をするような男だし、所詮小物ということだ。
私たちにとって邪魔なだけで、存在価値はない。
私は、男に向かって歩き出す。
「う、うわあああああ!!!!」
怯えた男は、私の心臓を貫こうと、ナイフを突き出してくる。
私は避けるつもりもなく、正面からそのナイフを受ける。
男にとっては不気味だっただろう、何もない場所を深く刺したような感覚など、そう味わえるものではない。
「ひ、ひぃぃぃ、許してくれ!俺はただ頼まれただけなんだ!」
あまりの恐怖に腰を抜かして、男は立てなくなっていた。
私はその男の耳に口を近づけ、
「あなたの喉には大量の蛆虫が湧いている。さあ、そのナイフで掻き出さないと死んでしまいますよ」
と、囁いた。
男は持っていたナイフを逆手にし、一心不乱に自身の喉を抉りだしていった。
絶命するその瞬間まで手が止まることなく、喉から大量の血が噴き出し、見るも無残な姿になっていた。
「無知というのは本当に罪だね。それに対して、魔族のことを知ろうと、色々質問してくれたあの人は、やっぱり素敵だなぁ」
私は自分の主のことを思い出す。
私にとって、あの人は特別な存在になっていた。
自分は不遇な環境に追われているというのに、それでも何を恨むわけでもなく、ただ幸せを求めている。
私はその姿に心打たれ、力になりたいと思うようになっていた。
だから、邪魔をしてくる奴らから、私が守ってあげるんだ。
「ディザ様、早く戻ってこないかなっ」
リトレ村に行った主の帰りを、私は待ち合わせ場所の広場で待っていた。




