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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第二章「新生・魔王軍」
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第十七話「居場所」

 オークに知性を付けようという実験は失敗に終わったが、退治をすることはできたので、リトレ村に報告に行くことにした。

 そもそも、こっちが本来の目的なので、オークに逃げられたことはもう気にしないことにした。


 リトレ村に行く際、アイリスは置いていくことにした。

 俺は勇者として訪れるし、何より魔族を人族の村に連れて行くのは危険だと思った

 そのことに関しては、アイリスも納得してくれたようで、オークが居た広場で待つ、と言っていた。

 最初は先に帰らせるつもりだったが、やたらとごねてきたので、俺が妥協をした。


 アイリスから聞いたとおりの場所にリトレ村はあった。

 村は木々に囲まれていて、木漏れ日がさしていて、神秘的に感じた。

 建物は木造建築物が多く、生活用品などはヒューゼ王国で見たものと変わりはなかった。

 後で聞いた話だが、ヒューゼ王国から品物を仕入れたりしているらしかった。


 村に入ると、番人らしき人が迎えに来てくれた。


「旅人の方ですか?すみませんが、少し身体調査をさせてもらいます」


「わかりました」


 番人が俺の持ち物を調べる。

 木刀を除いて特に危険物は持っていないので、村の中に通してもらえるようになった。


「どうぞお入りください。リトレ村へようこそ」


 中に入って、とりあえず村人に村長の場所を聞いた。

 村長の家は村の一番奥にあり、会いたいと言えば、すぐに会わせてくれた。


「失礼します」


「いらっしゃい、旅の方。リトレ村の村長です」


 村長はずいぶんと年老いた人だった。

 柔和な顔立ちで、優しそうな雰囲気をしていた。


「この村がオークに襲われていると聞いて、退治しておきました。おそらくオークから襲われる心配はもうないでしょう」


「なんと、ヒューゼ王国に救助要請を送ったのは、ついこの前だというのに、もう助けてくださったんですね」


 どうやら、王国側に救助を求めていたらしい。


「いえ、偶然です。俺は四代目勇者のレイスと言います。今は王国を離れて行動しているので、救助要請の話は今初めて聞きました]


「なんと勇者様でしたか、お会いしたいと思っていたんです」


 村長は優しく微笑んだ。

 柔和な雰囲気に、この笑顔を見せられたら、無条件で気を許してしまいそうだ。


「少し前までこの村に滞在していた人が、我々に代わって、ヒューゼ王国に救助要請を出してくださったんです。その時に、もし勇者がこの村に救援に来てくれたなら、歓迎してあげてくれ、と言っていました」


「そんなことがあったんですね」


「その人の素性は私もよく分かりませんでした。訪れる村人すべてに素性を聞き出すのも、野暮なことだと思いますしね。ただ、村のみんなに優しく、勇者様の話をするときも、強く信頼を置いているような話しぶりでした」


 どこの誰だかは分からないが、自分のことを良く思ってくれている人がいたらしい。

 素直にうれしかった。


「食事でもしていきませんか?お礼もしたいですし」


「いえ、すみません。待たせている人がいるので、私はそろそろ帰ろうと思います。その旅人にもしまた会うことがあるならば、気遣いありがとう、と伝えておいてください」


「分かりました、それではお気をつけて。またこの辺りを訪れることがあったら、ぜひ寄ってください。いつでも私たちは歓迎しますよ」


 村長と別れを告げて、俺はそのまま村を出ることにした。


 村の人も俺に優しくしてくれて、なんだか自分の居場所が増えたような気持ちになった。

 こういう小さなことを積み重ねていけば、徐々にではあるが、俺も過ごしやすくなっていくのではないだろうか。

 ちょっとだけ未来が見えたような気がする。


 広場に戻ると、アイリスが待っていた。


「ディザ様、なんだか少しうれしそうですねっ」


 どうやら、顔に出ていたらしい。

 アイリスはその些細な変化も見逃さない。


「アイリスにはすぐバレるな。まあ、良いと思えることはあったな」


「それは良かったですっ」

 

 アイリスもうれしそうにしている。


 アイリスもそうだが、魔王城にいる他の魔族も俺を慕ってくれているし、いきなり現れた人族を受け入れてくれた。

 知性のある魔族は、人族を襲わないし、本来なら脅威にもならないだろう。

 それでも、人族を襲っていたのは、俺と同じように自分たちの居場所を求めていたのかもしれない。

 優秀な支配者を求めていたという話も、自由に生きる自信がなく、導いてくれる人が必要だったのかもしれない。


「俺もなんだかんだ魔族に愛着が湧いてきたのかもしれないな・・・・・・」


 これから帰る魔王城の魔族は、俺を迎えに来てくれるだろうし、大切に思ってくれるだろう。

 もちろん、人族に自分の居場所が無くても良いとは思わないが、魔族に俺の居場所があってもいいのではないかと思い始めた。

 強欲ではあるかもしれないが、俺の夢が一つ増えた。

 人族に認められ、人族として過ごせるようになること、俺のもう一つの居場所である魔族を守ること。

 魔族は何かしらの欲望を持っているんだから、魔王の俺の欲が強くてもいいだろう。


「それじゃ、帰るか。俺たちの魔王城に」


「はいっ!」


 やるべきことは多いし、まだ目標まで全然進んでいないが、俺は希望を抱いていた。

 

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