第十七話「居場所」
オークに知性を付けようという実験は失敗に終わったが、退治をすることはできたので、リトレ村に報告に行くことにした。
そもそも、こっちが本来の目的なので、オークに逃げられたことはもう気にしないことにした。
リトレ村に行く際、アイリスは置いていくことにした。
俺は勇者として訪れるし、何より魔族を人族の村に連れて行くのは危険だと思った
そのことに関しては、アイリスも納得してくれたようで、オークが居た広場で待つ、と言っていた。
最初は先に帰らせるつもりだったが、やたらとごねてきたので、俺が妥協をした。
アイリスから聞いたとおりの場所にリトレ村はあった。
村は木々に囲まれていて、木漏れ日がさしていて、神秘的に感じた。
建物は木造建築物が多く、生活用品などはヒューゼ王国で見たものと変わりはなかった。
後で聞いた話だが、ヒューゼ王国から品物を仕入れたりしているらしかった。
村に入ると、番人らしき人が迎えに来てくれた。
「旅人の方ですか?すみませんが、少し身体調査をさせてもらいます」
「わかりました」
番人が俺の持ち物を調べる。
木刀を除いて特に危険物は持っていないので、村の中に通してもらえるようになった。
「どうぞお入りください。リトレ村へようこそ」
中に入って、とりあえず村人に村長の場所を聞いた。
村長の家は村の一番奥にあり、会いたいと言えば、すぐに会わせてくれた。
「失礼します」
「いらっしゃい、旅の方。リトレ村の村長です」
村長はずいぶんと年老いた人だった。
柔和な顔立ちで、優しそうな雰囲気をしていた。
「この村がオークに襲われていると聞いて、退治しておきました。おそらくオークから襲われる心配はもうないでしょう」
「なんと、ヒューゼ王国に救助要請を送ったのは、ついこの前だというのに、もう助けてくださったんですね」
どうやら、王国側に救助を求めていたらしい。
「いえ、偶然です。俺は四代目勇者のレイスと言います。今は王国を離れて行動しているので、救助要請の話は今初めて聞きました]
「なんと勇者様でしたか、お会いしたいと思っていたんです」
村長は優しく微笑んだ。
柔和な雰囲気に、この笑顔を見せられたら、無条件で気を許してしまいそうだ。
「少し前までこの村に滞在していた人が、我々に代わって、ヒューゼ王国に救助要請を出してくださったんです。その時に、もし勇者がこの村に救援に来てくれたなら、歓迎してあげてくれ、と言っていました」
「そんなことがあったんですね」
「その人の素性は私もよく分かりませんでした。訪れる村人すべてに素性を聞き出すのも、野暮なことだと思いますしね。ただ、村のみんなに優しく、勇者様の話をするときも、強く信頼を置いているような話しぶりでした」
どこの誰だかは分からないが、自分のことを良く思ってくれている人がいたらしい。
素直にうれしかった。
「食事でもしていきませんか?お礼もしたいですし」
「いえ、すみません。待たせている人がいるので、私はそろそろ帰ろうと思います。その旅人にもしまた会うことがあるならば、気遣いありがとう、と伝えておいてください」
「分かりました、それではお気をつけて。またこの辺りを訪れることがあったら、ぜひ寄ってください。いつでも私たちは歓迎しますよ」
村長と別れを告げて、俺はそのまま村を出ることにした。
村の人も俺に優しくしてくれて、なんだか自分の居場所が増えたような気持ちになった。
こういう小さなことを積み重ねていけば、徐々にではあるが、俺も過ごしやすくなっていくのではないだろうか。
ちょっとだけ未来が見えたような気がする。
広場に戻ると、アイリスが待っていた。
「ディザ様、なんだか少しうれしそうですねっ」
どうやら、顔に出ていたらしい。
アイリスはその些細な変化も見逃さない。
「アイリスにはすぐバレるな。まあ、良いと思えることはあったな」
「それは良かったですっ」
アイリスもうれしそうにしている。
アイリスもそうだが、魔王城にいる他の魔族も俺を慕ってくれているし、いきなり現れた人族を受け入れてくれた。
知性のある魔族は、人族を襲わないし、本来なら脅威にもならないだろう。
それでも、人族を襲っていたのは、俺と同じように自分たちの居場所を求めていたのかもしれない。
優秀な支配者を求めていたという話も、自由に生きる自信がなく、導いてくれる人が必要だったのかもしれない。
「俺もなんだかんだ魔族に愛着が湧いてきたのかもしれないな・・・・・・」
これから帰る魔王城の魔族は、俺を迎えに来てくれるだろうし、大切に思ってくれるだろう。
もちろん、人族に自分の居場所が無くても良いとは思わないが、魔族に俺の居場所があってもいいのではないかと思い始めた。
強欲ではあるかもしれないが、俺の夢が一つ増えた。
人族に認められ、人族として過ごせるようになること、俺のもう一つの居場所である魔族を守ること。
魔族は何かしらの欲望を持っているんだから、魔王の俺の欲が強くてもいいだろう。
「それじゃ、帰るか。俺たちの魔王城に」
「はいっ!」
やるべきことは多いし、まだ目標まで全然進んでいないが、俺は希望を抱いていた。




