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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第二章「新生・魔王軍」
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第十六話「オーク魔王軍加入作戦」

 休憩をしたおかげで体力が回復したので、また森を進み続けていると、物音が聞こえてきた。


「アイリス、何か音が聞こえた、一応気配を潜んでおけ」


「はいっ」


 俺たちは小声で会話する。


 音がする方向は茂みの向こう側で、陽の光がしっかりと差し込むほどに、草木は生い茂ってなく、広場みたいになっていた。

 そして、そこにはオークの群れが立っていた。

 何か目的があるわけでもなく、ただ武器の棍棒を持って、ウロウロしているだけだった。

 身体は俺よりも大きく、筋肉も相当鍛えられているように見える。


「アレで間違いないか?」


「はいっ、調べた情報と一致していますねっ」


 アイリスはいつもより小さめな敬礼をする。


「特に深い作戦だったりとか、難しいことをするつもりはない、相手自体が小細工とか無縁だし、シンプルに行くほうが上手くいくだろ」


「了解ですっ」


 俺とアイリスはまっすぐオークの群れの前へと出た。


「俺は魔族を統べる王だ。突然だが、お前らをここで倒させてもらう」


「ウォ、ウォオオォ!」


 オークたちは大声で叫んで、棍棒を上に振りかざした。


「せいぜい抵抗でもするんだな、俺を倒すことができたら、俺の部下のすべてをお前らの好きにしていいぞ。お前らオークが魔族の王になれるんだ」


「ウォアアアア!!!」


 オークたちは、再び大声で叫ぶ。


「なぁ、アイリス。俺の言葉こいつらに伝わってるのかな?知性がないと言葉を喋ることはできないっぽいが・・・・・・」


 俺のすぐ後ろで待機しているアイリスに耳打ちする。


「察しの通り、知性のない魔族は言葉を話すことができませんっ。でも、雰囲気は伝わっていると思いますっ」


 それを聞いて、上手くいくかどうか少し不安になった。

 大丈夫なのだろうか。

 冷静に考えれば、人族と知性のある魔族が、同じ言語を喋ってることも不思議に思えてきた。


「まあ、やるしかないよなぁ・・・・・・」


 俺は持ってきた木刀を構えた。

 殺すことは目的ではないし、本気でやらなくても十分だろうと考えていたからだ。


「アイリスはどうする?一緒に戦ってみるか?」


「いえっ、私は見学しておきますっ。ディザ様お一人で戦うほうが、都合も良いでしょうしねっ」


 アイリスの能力が何かしら探ることができないかと思って、提案をしてみたが、どうやらダメみたいだ。

 確かに、俺に従いたいと思わせるなら、俺一人で圧倒したほうが良いだろうし、そう言われてしまっては、返す言葉もない。

 俺は諦めて、一人で戦うことにした。


 オークは全部で四体いた。

 正直見た目の違いはほとんど分からないが、一回り大きいのが一番前に立っている。

 一応リーダー格だと思っておこう。


 お互いの間に少しの沈黙が流れた。

 何も考えずにすぐ突っ込んでくると思っていたが、そんなことはなかった。

 いくら知性がないとはいえ、本能で舐めてかかってはいけない相手だとでも思ってくれているのだろうか。

 そうだったらいいのだが。


「ウォォァ!」


 沈黙を破ったのは、リーダー格のオークだった。

 真正面から走ってきて、振り上げた棍棒をそのまま俺の頭に叩きつけようとする。


 俺はそれを木刀で、真正面から受け止める。

 相手は俺の上から体重をかけているとはいえ、純粋な力比べでは、俺には明らかに分が悪いとすぐに感じた。

 後ろに引くことで、棍棒から避け、力比べから逃げる。


 パワーで俺より勝っていると分かったせいか、ニヤりと笑った。

 正直あまり舐められたくない。


「全員でかかって来い」

 

 全員を指さして、手招きをする。

 それを見て、オークたちは俺を囲むように、四方向にバラける。

 オークたちは俺が力で劣っていることをバカにしたように、へらへらと笑いながら襲い掛かってきた。

 俺よりパワーがある四体が同時に攻めてくるなら、すべてまともに受けることは無理だろう。


 俺は四体すべての攻撃に集中し、動きを確認する。

 最も到達するのが早い棍棒を横から弾いて、その勢いのままに身体を屈ませる。

 四方向から来たオークたちは、攻撃対象が急に下に落ちて、全員の目の前に、それぞれ仲間が現れる。

 そして、その瞬間に隙が生まれた。


 その隙を逃さず、弾いた棍棒を強引に奪い、それに闇を覆い、消滅させる。

 そして、棍棒を持ったオークの隣に居た、リーダー格のオークの腹に刀を突きさす。

 もちろん木刀なので、死にはしないだろうが、十分なダメージは与えられるはずだ。


 一連の流れが終わった後、俺は包囲から抜け出して、四体全員の方を向く。


「そっちは武器が無くなったやつと、大きなダメージを負ったやつがいる。俺は無傷だが、格の違いは分かったか?」


 オークたちには先ほどの勢いは無くなっていて、顔も心なしか焦っているように見える。


「どうやら戦う意志はもう無いみたいだな。だが、お前たちの力には目を見張るものがある。俺に仕え、その力を活かさないか?俺のために、欲望を持ってみろ」


 そう言って、俺は右手を差し出した。

 演説などやったことないが、圧倒的力を見せつけたり、それでも相手を認めたりと、良い線言ってるんじゃないだろうか。


 そして、オークは俺の手を取って、俺に仕えたい欲だったり、自分の力を活かしたい欲だったりと、何かしらの欲望が生まれ、オークたちは知性が生まれた。

 そんな展開を期待したが、結果は全く違った。


「ウ、ウァァァァァ!」


 オークたちは、一目散に俺から逃げていった。

 思いっきり拒否されてしまって、若干傷ついた。


「失敗、だよな・・・・・・」


「完全に怯えて逃げちゃいましたねぇ・・・・・・」


 遠くで見ていたアイリスは苦笑いしていた。


「いきなり現れて、いきなりボコボコにされちゃって、それで怖くなっちゃったみたいですねっ」


「いや、知性が無いなら、シンプルに戦って力を示せば、従ってくれるとも思ったんだけどな」


「そもそも知性が無いから扱いは難しいですしっ!今回たまたま上手くいかなかっただけで、ディザ様は悪くないですよっ!」


 アイリスは両手でガッツポーズをして、励ましてくれた。

 それでも、傷ついてしまったことは確かだ。


「俺、魅力ないのかな・・・・・・」


 空を見上げると、雲ひとつない青空で、自分がものすごく小さい人間だと思わされた。

 アイリスはその様子を、ものすごく心配そうに見ていた。


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