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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第二章「新生・魔王軍」
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第十五話「魔王は勇者を語る」

 俺とアイリスは、リトレ村の周辺を探索することにした。

 これから行うのは、魔族の退治で、さすがに魔王として村に直接行って村を救うことはさすがに避けたかった。

 勇者として村を救いに行くことも難しいと思った。

 アイリスの前で勇者として活動などしたら、魔王として求められている自分がどう見られてしまうかがまるで分からない。

 そんな理由で、リトレ村を襲うオーク達は、その周辺を根城にしているのではないかという予想の元、あたりを調べてみることにした。



「このあたりに来るのは初めてかもしれないな・・・・・・」


 俺は、草木の茂った所を一歩一歩かきわけて進む。

 リトレ村は森の中にある小さな村で、あたりは植物が多く生えていた。

 魔王討伐の旅に出ていた時は、森の中には魔王の住処はないだろうと勝手に思って、こういった場所には訪れていなかった。

 そのせいで、慣れない移動に少し体力が持っていかれる。


「うぇ~、虫とかいっぱい居ますよっ。やだなぁ」


 アイリスは足元の虫が相当嫌なのか、不快そうな顔で道を進む。

 まあアイリスも女だし、虫とかそういう類のものは苦手なのだろう。


「仕方がないことだ、我慢しろ」


「は~い・・・・・・」


 アイリスはもう諦めたらしく、あまり気にしないようにしていた。

 

「というか、ディザ様がこんな探索までしなくてもよかったんじゃないですかっ?」


「俺だって、こんなに大変だって分かってたら、部下に頼んでたよ」


「オークの住処まで私がちゃんと調べとくべきでしたねぇ」


 お互いなかなか気が滅入っていた。

 慣れないことはするもんじゃない、と二人とも思っていただろう。


「少し休憩するか、ちょっと無計画だったかもしれない、いったん落ち着こう」


 俺が大きな木にもたれかかろうとしたところ、アイリスは簡素な椅子を二つ持っていて、一つを俺に渡してきた。


「どうぞっ、使ってくださいっ」


「いや、どこから持ってきたんだ?」


 アイリスは椅子どころか、おそらく武器に使うのだろうナイフを腰につけているだけで、他には特に何も持っていなかった。


「これですかっ?椅子欲しいなーと思ったら、これが出てきた・・・・・・って感じですっ。まあ、私の能力の一つですね」


「ずいぶん便利な能力だな」


「小屋とか出せって言われたら、さすがに難しいですけど、椅子ぐらいなら何とかなりますっ。あっ、ちなみに方法は企業秘密ですっ」


 全く理屈は分からないが、とりあえず願ったら出てくるらしい。

 それなら、外出する時に特に必要なものはない。

 それにしても、アイリスのことがますます底が見えなくなった。


 とりあえず、椅子に腰かけて休憩することにした。

 アイリスも、失礼しますっ、と一言入れて、同じく椅子に腰かける。


「そういえば、私ってディザ様の人族の頃の話をあまり知らないのですが、聞いてもいいですかっ?」


 確かに、アイリスには俺のことはあまり話していなかった。

 アイリスは俺が勇者であることは知っていたので、俺のことはとっくに分かっていると思ったが、そんなことはないみたいだ。

 話せる部分ぐらいなら、話してもいいかもな。

 

「そうだな、俺は昔は強くなって色んな人に認められたいと思っていたんだ。まあ、本当にそれだけの理由で努力し続けてたら、勇者として認められるぐらいに勝手に強くなってて、それでいつの間にか勇者になるぐらいの実力を持ってて・・・、そもそも人族ではあるけど、魔族とか魔王とかにはあまり関心はなかったんだ」


 アイリスは興味深そうにこちらを見ながら、相槌を打ってくる。


「それで、勇者になったものの、なんかこれは違うって思ったんだよな。俺の居場所はここなんだろうかって。認められたくて頑張ったのに、人族での生活が少し息苦しかったんだ。だから、魔王にでもなってみるか、と思ってここに来たんだ」


 若干ボカして話したが、嘘は言ってないはずだ。

 詳細に言えば、人族に認められなかったから、それを改善するために魔王という立場を利用しているというわけだが。


「もしかして、人族での生活に支障が出たのって、ディザ様が前の魔王様と同じ、闇属性を使うからですかっ?」


 アイリスは真剣な表情で質問してくる。

 彼女はやけに鋭いことがあるが、まさに、彼女が言ったことは図星だった。


「人族では、闇属性が疎まれているという話は聞いたことありますっ。おそらく、敵対している魔族の王がそうだから、恐怖の対象になっているのではないかと思っていましたっ」


 否定する意味も言い訳も特に思いつかなかったので、頷きで肯定した。


「ディザ様は、自分が闇属性が扱えることに、嫌気はささなかったんですかっ?」


 考えてみると、俺は特に何かを恨むわけではなかった。

 どうして俺は闇属性なんかが得意なんだ、とかそういった感情が湧いていてもおかしくはなかっただろう。

 むしろ、この闇属性を人族に浸透させたいとまで思っている。


「思わなかったな。なんだかんだここまで強くなれたのは、闇属性が上手く扱えるようになったからだ。ある意味相棒みたいなものだし、愛着も湧いてるよ」


 俺は右手を握って、闇を作り、それを開いて確認する。

 そうだ、これは俺の相棒と言っても過言ではない。

 自分の強さとは切っても切れない存在だ。


 それを聞いて、アイリスは優しく微笑んだ。


「ディザ様って、やっぱり強いですねっ。私は、ディザ様には闇属性を大切にしてほしいですっ。私も、ディザ様がその力に誇りを持ち続けられよう、補佐として頑張っていきますからっ」


 それから、俺は自分の話をつづけた。

 通っていた食堂の羊肉のステーキが美味しいとか、学生時代にいた尊敬する先生の話とか。

 アイリスはどれも楽しそうに聞いてくれて、俺もとても楽しい時間を過ごせた。


 会話もひと段落ついたところで、休憩もそれまでにし、再び探索を始めることにした。

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