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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第二章「新生・魔王軍」
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第十三話「不透明な未来」

 リザードマンに連れられて、城内にある闘技場まで来た。

 闘技場なんて完全に娯楽施設なんだが・・・・・・。


「ここだ、ちゃんと武器はあンだろうな?魔王さん」


「ああ、もちろんだ」


 さすがに城内探索で剣の必要はないと思って、自分の部屋に置いていたが、移動の時間にアイリスに取ってきてもらった。

 一応、素手で戦うこともできなくはないだろうが、相手の実力が未知数だし、剣なしの戦いは慣れていないから、素直に使うことにした。


「俺はリザードマンのリザ。魔王城戦闘隊長のリザだ!」


「魔王のディザだ」


 俺たちは、お互いに名乗る。


「それじゃァ、いくぜ!!」


 二人の戦いが始まった。


「はぁはぁ・・・、負けだ!」


 そして終わった。

 リザは馬鹿正直に突進してきたので、俺はそれを回避して、ついでに足を引っかけたら、思いっきりこけた。

 後は、顔の前に剣先を出して、終わりだ。


「なぁ、アイリス、こいつ本当に戦闘隊長か?」


 俺はリザに聞こえないように、小声でアイリスに聞く。


「他にできそうなこともないし、欲望も噛み合っていて・・・。例えば、マモンとかはリザードマンよりも何倍も強いんですっ」

 

 アイリスも小声で返事をする。

 適材適所というか、仕方がなく回されたというか。

 

「あなたの実力は認めます、ディザ様。俺ンとって仕えるべき存在だってこたァ間違いねェです」


 リザは片膝をついて頭を下げる。

 強い者にはついていく、分かりやすい奴らだ。


「これからよろしく頼む」


 その後も、様々な魔族を訪れた。

 掃除担当のスライムや、土木担当のオーク、料理担当のケットシーなど、数多く居た。

 どの魔族の欲望も、人族を襲うようなことに繋がる欲望ではなかった。


 時間はすっかり夜になり、俺とアイリスは一度魔王室に戻った。


「いろんな魔族見たけど、平和的に感じたな・・・・・」


 魔族というと、人族を襲う恐ろしい存在で、いつも血に飢えていると人族に言われている。

 ところが、知性を持った魔族を見れば、そんな風には思えないだろう。


「そうですねっ、強力な魔族はだいたいが平和的な欲望を持っていますからねっ」


 しかし、前魔王は、確かに魔族が人族を征服しようとしていたような動きをしていた。

 前の魔王は人族支配の欲望が強く、自らが生み出した魔物を使役していたんだろうか。


「どうしようかな・・・・・・」

 

 アイリスにも聞こえないぐらい小さい声が漏れる。

 人を支配する欲望がない以上、魔族が人族の脅威になり得ないかもしれない。

 そうすれば、人族での俺の価値がないとみなされ、目的を達成できなくなるかもしれない。

 

 時間稼ぎ程度には使えるだろうか。

 人族での活動を主軸において、闇属性の地位を上げていく。

 魔族を使って、俺が勇者として活躍できる場を作るのも悪くない。

 いわゆる八百長だ。


 魔族の働きを見せることで、勢力の衰えを悟らせず、俺が勇者として活動することで、人族での存在価値を残す。

 うん、これなら悪くないかもしれないな。


「ディザ様、どうしましたっ?」


 アイリスが首を傾げて、きょとんとこちらを見る。

 考え事をしていたのが気になったのかもしれない。


「ああ、ちょっと考え事をしてただけだ。特に何でもない」


 俺の本来の目的を、アイリスに語るわけはいかない。

 きっと彼女は、魔族の支配者としての俺を求めているだろうが、俺は自分のために魔族を利用しているだけであって、冷たい言い方をするならば、魔族は道具のようなものだ。

 アイリスは有能なだけあって、失望されるようなことがあってはならない。


「ディザ様は、一人で考え事をすることが多いですっ。私をあなたの補佐ですので、一人で抱え込みすぎず、何かあったら力にならせてくださいっ」


 まだ俺たちの付き合いは浅いが、アイリスはかなり俺を信用しているみたいだ。

 それが欲望、アイリスの優れた知性の根源だからだろう。

 

 俺は、アイリスに今日の用事は終わったと伝え、魔王室から出るように言った。

 寂しそうにしていたが、今は一人になりたかった。

 

 しかし、今日城内を回ってみて思ったが、魔族は人族である俺のことも受け入れてくれている。

 人族での生活を求めている俺だが、その目的が達成された後、俺はその魔族をどうしたいのだろうか。


 思えば、俺が勇者に、もっと言えば育成学校に入ろうと思ったのは、自分が強くなれば、その力を認めてもらえるのではないかと思ったからだ。

 別に、魔族が憎いだとか、人族の平和のためにといった、高尚な考えがあるわけではない。

 もちろん、人族は好きで、魔族に滅ぼされたくないとは思っているが、それが一番の理由ではない。


 ミールやメリーは、魔族が憎くて育成学校に入っていた。

 アルは俺と同じで、魔族は関係なかったかな。

 自分がどれだけ強くなれるか気になる、強さを求めて学校に入ったと言っていた。

 

 やっぱり、アルは本当に気が合うし、仲間思いな奴だったと思う。

 アルという最高の友達を殺したことは後悔しているが、後悔してもどうしようもないところまで行ってしまおうと決めたのは自分だ。

 それでも、自分の複雑な感情をスッキリさせることはできない。

 俺はまだまだ未熟な人間だと思ってしまう。


 先はまだまだ見えないし、手探りの状態だが、自分が納得できるような未来を作れるように、努力するしかない。

 これから答えを見つけていこうと、今はそう思うことにし、俺は就寝することにした。


 ちなみに、翌朝目が覚めると、アイリスが許可もなく、勝手にベッドの中に入っていた。

 


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