第十二話「城内ツアー」
俺はアイリスの案内で、城内を回ることにした。
まず最初は、食料調達のために狩りに出ることを仕事にしている、ゴブリンがいるフロアへと案内された。
彼らは、早朝に狩りに出て、昼時の今は自室で休憩しているようだ。
部屋はそれぞれに個室が与えられているらしく、とりあえず適当に一部屋入ることにした。
アイリスが代わりにノックしてくれる。
「魔王様の来訪ですっ。入りますよーっ」
「わ、わかりした!」
ドアの向こうから返事が来たので、アイリスはドアを開けて部屋に入った。
部屋の中には、赤黒い色をしたゴブリンがいた。
「魔王ディザ様、アイリス様、わざわざしもべの部屋に来てくれんなんて、ありがとうござます。私はレッドゴブリンのレブリンと申しす。よろしくお願いしす」
レブリンと名乗る男、多分男だ、は気をつけの姿勢で挨拶をした。
礼儀正しい男だった。少し話し方は変わっているが
こうして接してみると、人族と魔族の違いなんて外見ぐらいかもしれないと思った。
「あぁ、昨日からお前らを支配することになったディザだ。これからよろしく頼む」
そう言って右手を差し出すと、相手もそれに応えるるように右手を出し、握手をした。
面倒な相手だったら、と思ったが、これなら接しやすい。
「そういえば、ゴブリンのリーダーはお前なのか?」
「いえ、違ます。ゴブリン全体を束ねている、上位個体のカラーゴブリンは、五人いますが、私はその中で三番目ぐらいす。一番ではないす。五番でもありまんが」
「そうか、分かった。ありがとう。じゃあ他の部屋に行くよ」
そう言って、俺はブルーゴブリンのブブリンの部屋に行った。
「私は三番目ぐらいだすね」
次は、イエローゴブリンのイブリンの部屋へ。
「私は三番目ぐらいだすよ」
グリーンゴブリンのグブリン。
「私は三番目だす」
ブラックのブブリン。
「私は三番目なんだす」
五人の部屋をすべて訪れ終わった。
「俺、バカにされてるのか?」
「い、いえっ、彼らは謙虚に生きることが欲望で、ふふっ、それでいて強欲なとこもあって・・・ふへぇっ」
アイリスは顔を伏せて、身体を震わせている。
こいつ、分かっていながら黙っていたな。
「そういえば、やけに慕われていたな、アイリス"様"は」
アイリスの城内での立場が垣間見える。
「あはは~、なぜかみんな様づけだったり敬語使うんですよねぇ・・・・・・」
アイリスは苦笑いをしながら頭をかく。
次は、人事ならぬ魔事の悪魔のところに行く。
執務室とやらがあるらしく、魔族の大量の情報もそこで扱われるらしい。
部屋に入ると、数人の悪魔が机の上の大量の書類を処理していた。
悪魔たちは皆整った服装をしていて、翼と尻尾と赤い目以外は人族との違いはほぼ見られない。
俺とアイリスが部屋に入るのに気付くと、そのうちの一人が迎えにきた。
「ディザ様、アイリス様、いらしゃっていたのですね。他の者が仕事中での対応になり、申し訳ございません。室長のマモンと申します」
マモンは深々と礼をした。
「ああ、構わない。突然のことだからな」
「ありがとうございます。ところで、今日はどういった用件で?」
「聞きたいことがあったんだ。たった今一つ増えたけどな。お前は悪魔だよな?」
「は、はい。そうですが・・・・・・」
マモンはきょとんとした顔をする。
何を当たり前のことを、と思っているのだろうか。
「こいつは小悪魔だよな?」
俺はアイリスを指さす。
「はい、アイリス様は小悪魔と呼ばれる系統でございます」
「だよな」
「そうですが・・・・・・?」
マモンの表情は変わらないままだった。
小悪魔は悪魔の下の存在、というイメージだったのだが、どうやらそうではないらしい。
「なあ、アイリス。俺が変なのか?」
「すみませんっ、そういうものだと思って受け入れてくださいっ・・・・・・」
いちいちこういう扱いされるのがあまり好きじゃないのか、少しへこんでいるように見えた。
俺ももう気にしないことにしようと思う。
「今、城内の魔族について知ろうと思っていたんだ。この部屋の悪魔たちは何か目的があるか?」
「そうですね、世界を管理したい、と最初は思っていました。すべてを手中に収めてみたいと思ったのです。今考えるとスケールが大きすぎてお恥ずかしい限りです」
マモンは苦笑する。
俺も世界征服に似たようなことをするのか、と言われたことがあったので、なぜか自分まで少し恥ずかしくなってしまう。
「しかし、アイリス様に出会ってから、自分がいかにちっぽけな存在かに気づきました。それで、考え直したのです。魔族のために、魔族を扱う。上に立つ存在としてではなく、仲間として魔族の管理をしたいと思いました。役割分担というものですね。そういった想いで、この仕事をさせていただいております」
一部分は気にしないとして、素直に感動した。
仲間のため、か・・・・・・。
自分を最優先に生きてきた俺にも、そんな生き方ができるだろうか。
話も良い感じに終わったし、俺たちは部屋を出た。
次に向かうのは、戦闘員のリザードマンの場所らしい。
普段は門番だったり、武器庫の管理をしているらしい。
俺たちは、武器庫へと向かった。
「はいっ、ディザ様、こちらがリザードマンですっ!ほら、あなたたち早くディザ様に挨拶してしてっ」
そこには、鎧姿のリザードマンが一人いた。
アイリスは、リザードマンの一人に俺への挨拶を促すが、不機嫌そうな顔でこっちを見る。
「俺はつえェやつにしか興味ねェ。強くなり続けてェってのが俺の夢だかンな。俺にはおめェがつえェのかわかンねェからな」
どうやら、リザードマンたちの欲望は強くなることらしい。
シンプルで分かりやすい。
そして、どうやら俺は強者として認められていないから、新しく魔王になったと言っても、素直に従うつもりはないらしい。
「分かりやすくていいな、相手してやろうか?」
「はッ!言うじゃねェか、魔王さんよ。まァ、あのアイリス様の上司ッてンなら、失望させんなよ?」
リザードマンはうれしそうにニヤりと笑う。
期待されているようだし、少しやる気を出してみても面白いかもしれないな。
「ところで、アイリス。またお前の名前が出たが、ツッコんでいいか?」
やっぱり気になってしまって、アイリスの方を向く。
「私は悪くないんですっ、私はっ」
アイリスはこっちも見ずに、真顔で答えた。




