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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第九章「軋轢」
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第百二話「街のざわめき」

「着いた着いた。この街だ」


 姉貴に連れられて来た場所は、ジーラ王国の城下町だった。

 ジーラ王国にはでっかい城があって、その城下町で武道大会が開かれる。

 ジーラ王国はかなり大きい国で、その城下町とかあって、街の繁栄っぷりは尋常じゃない。

 ヒューゼ王国にも、ほとんど劣らない。


「すごい・・・・・・」


 ここ最近は小さな村だったり、そもそも人の居ない場所で過ごしていたから、人族が多く居る場所だと、つい圧倒されてしまう。


「とりあえず武道大会の参加受付だけ済ませるぞ。その後、いくらでも街を楽しんでいいから」


 呆然としている俺を見て、姉貴は苦笑しながら言う。

 なんだか、少し恥ずかしい気持ちになった。


「分かりました。行きましょう」


 そうして、俺と姉貴は武道大会の受付を済ませに、移動した。

 

 武道大会は、闘技場で行われるらしかった。

 やはり、栄えているところなら、どこにでも闘技場はあるのだろうか。

 人気の娯楽だし。


 武道会は、俺は結構お固いものを想像していたけど、結局のところ、一対一でどっちが強いか競うシンプルなものだった。

 技の美しさとか競い合うものだったらどうしようと、ちょっとだけ思っていたから、安心だ。

 まあ、姉貴が出ろという大会だから、強さを競うものだろうとも思っていたけど。


 闘技場の入り口には、武道大会の受付も行われていた。

 受付の女性に参加表明すれば、もうそれで参加できるようになるらしい。

 栄えた街の、大きなイベントにしては、ずいぶん気軽に参加できるものなんだな。


「すみません、大会参加希望なんですけど」


「はい、かしこまりました!お名前の方をお願いします!」


 受付嬢は美人で、俺が声をかけると、ニコッと笑顔を浮かべて、対応してくれた。

 思わずドキッとしてしまう。

 

「モンデです」


「モンデ様、ですね。受付完了いたしました。今から二時間後にまたこの受付にお越しください。集合時間に少しでも間に合わなかった場合は、参加は取り消しになりますので、お気をつけください」


「分かりました」


 参加受付はすぐに終わった。

 後は時間を潰すだけだ。

 本当に、あっさりと受付が終了した。

 二時間、好きに時間を潰そうかな。


「あたしは適当に遊んでくるよ。金は渡しておくから、モンデも時間潰しとけ」


 姉貴は小さな袋から、いくらかお金を出して、俺に渡してくれた。


「ありがとうございます」


 姉貴は姉貴で、遊びに出かけるようだ。

 どうやら一人の時間ができるようだ。

 街を好き勝手探索しちゃおう。


 俺と姉貴が別れて、俺は一人で街を探索し始めた。

 二時間という短い時間だから、俺は街を歩く程度にすることにした。


 相変わらず、人通りの多さに驚かされる。

 その人々それぞれが様々な目的でこの街を歩いていて、それぞれに夢があったり、大切な居場所があったり・・・・・・。

 って、臭すぎること考えてしまったな。

 とにかく、みんな幸せならそれでオッケーってことでいいや。


 街の真ん中に行くと、ざわざわとした様子が見られた。

 そのざわつきは、何やら不安な声色のように感じる。

 何か問題が発生でもしたのだろうか。


 人々は、みんな同じ方向を向いている。

 自分の背の低さのせいで、その先に何があるのか、何が起きているのかを確認することができない。


「え、もう時間じゃん!」


 飛んだら跳ねたりして、何とか見ようと思っていたら、ふと時計が目に入った。

 もう闘技場へと戻らないといけない時間になってしまっていた。

 結局何が起きているのか知らなかったのは惜しい。

 武道大会が終わったら、またここに訪れて確認しよう。

 誰かに聞けば教えてくれるだろうし。


「はぁ、はぁ。モ、モンデです!時間、大丈夫ですか?!」


「はい、大会参加者のモンデ様ですね。どうぞこちらへお進みください」


 闘技場には、走って何とか間に合った。

 同じ道を戻ればいいと思っていた油断していたが、普通に迷子になってしまった。

 幸い、闘技場は目立っていたので、何とかその方向に進むことで辿り着きはしたが、急いで来たので、息も切れ切れだ。

 姉貴と再会することもできなかった。


 受付の人の示す方向は、観戦者とは別の道だった。

 おそらく、参加者用の道なのだろう。

 俺はその道を歩いて行く。


 時間ギリギリだったせいか、周りに俺以外居ない。

 それとも、もともと参加者が少ないのだろうか?


 答えは、前者だった。

 おそらく控室であろうホールへと入ると、そこは大勢の人が居た。

 百人ぐらいは居るだろうか?

 

 大柄な男や、筋肉隆々な男など、強そうな見た目の人がいっぱい居る。

 この中で優勝するなんて、俺にできるのだろうか?


 知り合いも居ないので、ホールの隅で次の案内を待つことにした。

 この人数で優勝を決めるとなると、相当時間がかかりそうだ。

 詳しいルールとかは、どうなんだろう。


「あ、あなたは、モンデさんですか?」


 突然、女性の高い声の人が、俺へと話しかけて来た。

 聞き慣れない声だし、誰だろうと思ってそっちを見てみたら、意外な人物だった。


「ル、ルピナス?」


「はい!以前モンデさんに助けていただいた件、本当にありがとうございました!」


 ルピナスはペコりとお辞儀をし、それからにっこりと笑った。


 ルピナスは、俺が旅を始めて最初に訪れた村の住人で、誘拐されてしまって、俺が助けた女の子だ。

 戦えるようになったら、一緒に旅をしようという約束をしたのだが・・・・・・。

 この街に居るってことは、この子もう旅に出ているのか?

 ってか、武道大会に出るってことは、もう戦えるの?


「え、えっと、武道大会に出るん、だよね?」


「はい。モンデさんと一緒に旅したくて、毎日一生懸命頑張ってるんです!今日は今まで頑張ってきた成果を確かめるために、ここに来ました!」


 ルピナスは屈託の無い笑顔を俺に向ける。

 武道大会に出ようと思うぐらいなら、もう一緒に旅をしても、心配はないと思うのだけれど。

 でも、それを言うのはさすがに無粋か。


「そうなんだね。一緒に頑張ろう」


「はい!」


 俺が右手を出すと、ルピナスも右手を出して、お互いに握手を交わした。


 そうか、ルピナスも大会に出るのか。

 正直、この屈強な男たちの中で、きちんと戦えるのだろうかと不安だ。


 あともう一つ。

 もし俺がルピナスより先に負けちゃって、不甲斐ない結果になってしまったらどうしようと不安だ。

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