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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第九章「軋轢」
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第百一話「新しい力」

「目瞑って座ってろ。土属性を使えるようにしてやるから」


「分かりました」


 チーダの姉貴に言われるがままに、俺は地面に座って、目を閉じた。

 未だに、土属性が使えるようになるかは、半信半疑だ。

 でも、姉貴にはそれなりに信頼があるし、悪いことにはならないだろうと思っている。

 逆らう理由もほとんどないというわけだ。


 俺が目を閉じている間、姉貴はずっと無言だ。

 何が行われているのか、全く分からない。

 それでも、目を閉じていろと言われているから、俺は目を閉じたままだった。


 何分経っただろうか。

 自分の体内時計に自信が無いため、正確な時間は分からない。

 なんだか、身体が熱くなってきている気がして、少し怖い。

 いつになったら終わるのだろうか。


「はい、終わった。もう目開けていいぞ」


「お、終わったんですか?」


「おう。もう土属性使えるぞ」


 終わる瞬間は一瞬だった。

 ハッキリと、土属性が使えるという感覚は無い。

 なんとなく、身体に今まで感じたことの無いような熱が残っている感覚があるだけだ。


「それで、どうすればいいんですか?」


「身体の中になんか力を感じるだろ。それを外に出す感じ」


 俺は姉貴の言う通り、力を放出することにした。

 イメージをしやすいように、右手を前に出して、そこから力を出すようにする。

 身体の熱い部分を、右手に出すようイメージする。

 熱が移り変わっていく感覚を覚える。

 そして、その熱が右手から外へと放出される瞬間。

 俺の右手から、岩石が放たれた。


 その岩石は一直線に、姉貴の方へ飛んでいく。


「あ、やば・・・・・・」


「そうそう、そんな感じ!」


 姉貴は俺が飛ばした岩石を、指一本弾いて、軽々と粉々にした。

 まだ全く慣れていない力とはいえ、いきなりそんなことされては自信を失いかねないが、そんなの気にしてはいないんだろう。

 俺が姉貴に間違えて攻撃してしまったのが悪いのだけれど。


「これで晴れて、モンデも土属性が使えるってわけだ。おめでとう」


 姉貴は嬉しそうに拍手をした。


「ありがとう、ございます・・・・・・」


 俺の方は未だに実感が薄く、ぼんやりとしたお礼になってしまった。


 まさか、本当に新しい力が手に入るなんて。

 姉貴って、本当に土の精霊なのかな・・・・・・。


「それじゃ、早速特訓始めるか」


「あの、待ってください。闇属性って今まで通り使えるんですか?」


 様々な属性を使っている人を何人も見てきたし、もちろん使えるだろうとは思う。

 でも、なんとなくこの質問が出てしまった。


「もちろん。今まで闇属性とかは意識せず出せていたと思うけど、それと同様でいい。土属性を使う時だけ、身体の中にあるいつもと違う力を出せばいい。感覚が研ぎ澄まされたなら、多分別々の力二つを感じられると思うけど、まあそれは感じられるようにならなくてもいいや」


 ずいぶん抽象的だと思った。

 でも、言っていることはだいたい理解できる。

 闇属性を使いたいなら、今まで通り。

 土属性を使いたいなら、意識して出せばいい。

 慣れは必要だろうけど、難しいことでは無い。


「疑問は解消したか?それじゃ、土属性の扱い方を教えてやる。一気に全部出来なくていいから、とりあえず教えることは頭に叩き込んでろ」


 それから、姉貴に土属性の扱い方を色々教わった。

 基本的なことは全く教えられていない。

 土属性でどういう戦い方をするか、応用の仕方といった、実践的なことばかりだった。

 それでも、問題なく教えられることの理解はできた。

 基本は、闇属性と同じだったからだ。


 属性によってどういう風に扱うかが違うだけで、そもそも力を使う方法はほとんど同じだ。

 闇属性の基本はレイス先生に教わっていたし。

 そのことを分かってるからこそ、姉貴も応用だけ教えてくれたのだろうか。

 

 それに、与えられた力がかなり強力なのも感じる。

 闇属性しか使えなかった頃では、考えられない規模のことだってできるようになった。

 やはり、直接精霊から力を与えられているからだろうか。

 楽して強くなっていることは否めないが、楽したとしても強くなっていることには変わりない。

 

「まあ、だいたいこんなもんかな。ちゃんと頭に入れたか?」


「はい。大丈夫です」


 姉貴との特訓は、あまり長くはないが、充実した時間だった。

 まだイメージが出来ていなかったり、力の出し方に慣れていないせいで、言われたこと全てができたわけではないが、鍛錬を積めばいずれできるだろうという感覚がある。

 もしかしたら、勇者に相当するぐらい強い男になれるんじゃないか、俺。


 でも、どうして姉貴は俺を強くしようとしてくれるのだろう。

 今まで聞いたこともない存在の精霊が、いきなり俺に力を与えてくれるなんて、納得できる理由が欲しくなってしまう。


「姉貴はどうして俺に力を与えてくれたんですか?姉貴に良いことなんて無いと思うんですけど」


「え?今更か?まあいいけど」


 姉貴はキョトンとした顔で俺を見つめる。

 確かに、色々教えてもらった後のこの質問は、今更感がある。


「別に、弱いより強い方が面白いだろ。それだけ」


「そ、それだけですか・・・・・・」


「そう、それだけ」


 姉貴は当たり前だろと言わんばかりに、平然とした表情だった。

 思わず苦笑いしてしまった。


 正直納得はできないけど、まあ人族を超えるような存在だ。

 意味不明ぐらいがちょうど良いかもしれない。

 そういうことにしておこう。


 何はともあれ、パワーアップに成功した。

 次は力試しの武道大会だ。

 考えてみれば、どうしてこんな成り行きになったかも分からないが、そんな細かいことはどうだっていい。

 予測不可能な毎日を、俺は楽しんでいるんだから。

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