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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第九章「軋轢」
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第百話「新たな選択」

 旅人さんこと、アルさんが俺の元から離れて、自称精霊のチーダの姉貴と一緒に旅をすることになってから数日、アルさんと一緒に旅をしている時と変わらない楽しさがあった。

 初めは、また知らない人と旅をしないといけないのかという不安があったが、その不安も今は綺麗さっぱり無くなっている。


「姉貴、ご飯できましたよ」


「おー。待ってたぞ、モンデ」


 未だにこの姉貴呼びには慣れないが、そう呼ばないと怖いから仕方がない。

 と言っても、面倒を感じることはそこぐらいで、優しい心の持ち主だと思う。

 何をするにしても、俺に危険が及ばないように見張っていてくれているし、旅先も俺が楽しめるようにしてくれているのが分かる。


 前は猛獣が大量に湧く密林に連れて行かれて、死ぬ思いをしたけど、姉貴が守ってくれた。

 まあ、守ってくれないと本当に死ぬところだったけど。

 でも、命を奪うことに特化した生物は、俺の人生で出会うことが全く無かったから、見たこともないような性質を持つ生き物にも出会えて、興味深い体験ではあった。

 俺一人が街で暮らしていても、経験できないことだ。

 共に旅する人が変わっても、旅は面白いと感じ続けられているのは、自分にとっても嬉しいことだ。


「今日も肉焼いただけかよ。レパートリーがねーな」


「いや、野宿する時は、姉貴もいつも肉焼いただけじゃないですか」


「それもそうか」


 姉貴は焼いた肉に一気にかぶりつく。

 文句は言うものの、結局彼女もこれが好きなんだから、それ以上文句言わずに、ものすごい勢いで食べ始める。

 なんだろう、とりあえず文句言いたいだけなんだろうか。

 でも、今思ってるのを口にしたらどうなるか分からないし、俺は何も言わないんだけど。


「それにしてもお前って弱っちぃよなぁ。前も猛獣だらけのところでも何もできなかったしよ」


「姉貴が強すぎるだけですよ。俺、普通の人族なんですから」


 それに、俺だって普通の人族とはいえ、それなりに強いはずだ。

 並外れた力を持っているわけではないが、並の大人以上の実力はあると思う。


「でも、アルは強いんだけどなー」


「それを言われてしまっては・・・・・・」


 アルさんはさすがに俺とは格が違うだろう。

 実際どれぐらい凄い人なのかはよく分かっていないが、チーダの姉貴が認めるほどだ。

 姉貴も俺の何倍も強いんだけど、そんな姉貴に認められるなら、多分姉貴と同じぐらいには強いんだろう。

 俺もそれぐらい強くなれたらいいんだが。


「強くなりたくないか?」


「え?」


 俺の心を読んだかのような発言に、思わず俺は驚いてしまった。


「これから行こうと思ってるところに、武道大会がある。モンデ、それに出ろ」


 唐突な提案に、なんと答えればいいか困った。


「武道大会出るだけで、強くなれるんですか?」


 とりあえず、真っ先に頭に浮かんだ疑問をぶつける。

 

「ああ、悪いな。言葉足らずだった。あたしが力をつけてやるからさ、その後武道大会出て優勝しろ」


「ゆ、優勝?!」


「なんだよ、あたしが強くしてやるんだから、それぐらいやれよ」


 姉貴はさも当たり前のことのように言う。

 だが、姉貴の特訓でどれぐらい強くなれるかも分からないし、そもそも武道大会優勝ってどれぐらい強くなればできるんだ?

 全く分からない。

 だのに、どうして姉貴はこんなに自信満々に言えるんだろうか。


「優勝できるならしたいですよ。でも、そんなすぐできるようになるんですか?」


「あたしが信用できないのか?」


「いや、そういうわけじゃないんですけど」


 やばい、面倒なモードに入ったかもしれない。

 早く話を進めないと。


「強くするって、どんなことするんですか?武道大会に出ることは反対しません。強くなれるならなりたいし」


 強くなりたいという気持ちがあるのは当然だ。

 けれどやっぱり、強くなる方法が分からなければ、いまいち信用できない。


「あたしが誰か、忘れたのか?」


 姉貴は誇らしげに自分に親指を向ける。

 

「土の精霊、ですよね・・・・・・」


 未だに信じていないが、姉貴は土の精霊。

 だけども、土の精霊といっても、何ができるか分からない。


「そう、土の精霊だ。精霊がどんな存在かも、知ってるよな?」


「はい、姉貴と初めて会った時聞きましたしね」


 なかなか強くする方法を教えてくれなくてもどかしい。

 むしろ、わざと焦らされてるような気持ちだ。

 アルさんといい姉貴といい、俺はそういう扱いをされる人になってしまったようだ。


「だからさ、土属性使えるようにしてやるよ」


「で、できるんですか?!」


 姉貴の提案は、確かにできそうではあるが、想像してもいなかった提案だった。


「できるに決まってるだろ。属性使えるのは精霊のおかげって知ってるだろ?」


「そうなんですけど、想像していなかったんで。自分が闇属性以外を使えるようになるなんて」


 今まで、闇属性以外の属性は、自分にとっては無縁だと思っていた。

 けれど、土属性を使えるようになるチャンスが目の前に転がっている。


「土の精霊に直接土属性の扱いを知れるなんて、貴重なことだぜ?どうする?」


 闇属性はどうしても、疎まれる存在だ。

 だけれど、土属性はそうじゃない。

 強くなれるなら、闇属性に拘る必要は無い。

 だったら、俺の選択は・・・・・・。


「お願いします。土属性を使えるようにしたいです」


 もちろん決まっている。

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