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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第八章「人魔和平委員会」
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第九十六話「弱いことを証明する者」

「くそっ!くそったれ!くそったれ!」


 イーニは鉛玉を連続で飛ばしてくる。

 それらは全て、俺の急所を狙ったものだ。

 玉の勢いからして、命中するのならば、どれも致命傷になりかねない。

 命中するのならば。


 俺はその全てを、強大な闇の壁で防ぐ。

 今までならば、闇を使い続けることを考えれば、勢いを殺す程度しかできなかったが、今は違う。

 飛んでくる鉛玉全てが、闇に触れた途端飲み込まれ、それから消滅する。

 ただ棒立ちしているだけで、イーニの攻撃は全て無効化される。


 それに、この力が一向に収まる気配もしない。

 無限に戦い続けられそうな感覚だ。

 闇の力を放出したならば、それと同量の闇が、また身体の中に溢れ出ているような感じがする。

 そして、どれだけ時間が経とうとも、それはキープされ続けている。


「無駄だ。何回やっても。お前では今の俺には勝てない」


「不愉快、なんだよっ!」


 イーニはポーチから大量の鉛玉を取り出し、それら全てを同時に発射する。

 けれど、数が増えようと、威力が変わるわけではない。

 全ての鉛玉が、全て等しく、俺の闇によって消滅した。


「不愉快なのは、そっちだ」


 俺は闇を使って、槍状のものを作る。

 その槍をイーニの顔面に向けて放つ。


「なっ・・・・・・!」


 とても人間に反応することは難しい速さで放ったつもりだが、イーニは何とか身体を逸らして、槍は顔すれすれのところを通り抜ける。


「今のを避けるか。目も良いようだな。だが・・・・・」


「ぐ、うぅっ!」


 イーニは左耳を痛そうに抑える。

 何とか即死は免れているが、耳に少しだけ掠っている。

 しかし、威力が高すぎる故に、わずかに触れただけで、掠った部分は消し飛んでいた。


「認めない、僕より強い奴が居るなんて、認めない。この世の全ては、僕の強さを証明するために存在するんだ」


 この期に及んでも、イーニはまだふざけたことを言っている。


「残念だったな。俺はどうやら、お前の弱さを証明するために居るらしい」


「まだ、終わりじゃない・・・・・・!」


 イーニは、今度はナイフを取り出した。

 ナイフを片手に、足に力を込め、こちらに飛び込んできて、一瞬で距離を詰めてくる。

 脚力が異常というわけではなく、足の裏で爆発を起こして、その勢いで超スピードで突進してきているのだろうか。


 俺は右手を下から上へと振り上げ、闇の壁を下から上へと展開する。

 馬鹿正直に突っ込んでくるなら、それを防ぐだけだ。


「真正面から突撃して、通用するわけがないだろう」


「それはどうかな」


 イーニはニヤりと笑う。

 一歩目は、俺はと真っ直ぐ突進するものだった。

 二歩目で、イーニは空高く跳ぶ。

 そして、空中でも爆発を起こして、先へ進む。

 俺の後ろに回った後に、もう一度爆発を起こして、俺の真後ろから一直線に向かってくる。


 だが、その程度。

 どうってことはない。

 

 俺は振り上げた手を、そのまま自分の後ろまで回す。

 自分の周囲の闇が、ドーム状になる。

 

「まず、死・・・・・・っ!」


 この勢いのままイーニが闇に突っ込めば、イーニ自体を闇に飲み込んで、消し去ることができた。

 だが、イーニも自分の身の危険を感じないわけがなかった。

 ナイフの持っていない方の手を前に出し、そこから爆発を起こして、勢いを正反対の方向に変える。

 

「つぅっ・・・・・・!」


 爆発で勢いづいた推進力を相殺し、さらに反対方向に進むための爆発は、並の威力じゃない。

 しかも、イーニは咄嗟に手から爆発を起こした。

 さすがに、彼の身体に負担が無いわけがない。

 イーニは苦痛に顔を歪ませている。


 だが、イーニが勝手に苦しんでいようと関係ない。

 俺は追撃として、逃げるように飛んでいくイーニに向かって、闇の槍をイーニの心臓に向けて飛ばす。

 イーニは苦痛から一瞬の隙が生まれていて、再度爆発を起こすことは間に合わなかった。

 それでも、何とか身体を動かして避けようとする。

 しかし、完全に避け切ることはできず、イーニの左肩の上部が、完全に消滅した。


「がっ、ぐぅあっ・・・!」


 イーニの消え失せた肩の部分から、大量に血が噴き出た。

 イーニは出血部分を繊細な爆発で焼却し、何とか血が流れ出ることだけは防ぐ。

 けれど、今以上の被害を防いだだけに過ぎない。

 光属性でもなければ、ダメージが無くなるわけではない。


「調子に、乗るなよ・・・・・・っ!」


「調子に乗っているのはどっちだ?今の状況が分かっているのか?」


 イーニはまだ強がってみせる。

 いい加減もうウンザリだ。


「まだ、手はあるからな。覚悟しろよ」


 わざわざ、イーニは奥の手を今から使うことを教えてくれた。

 戦闘狂だとは思うが、自分の行動を事前に晒すだなんて、こいつはバカなのだろうか。

 

 イーニはポーチからありったけの鉛玉を出し、空中に投げる。

 そして、足のホルスターからも、ナイフを五本空中へと投げた。


 ナイフと鉛玉全てに爆発を起こして、全部俺のところへと飛ばしてくる。

 数が増えただけで、やってることは変わらない。

 俺は闇の壁でそれを全て飲み込もうとする。

 

 だが、闇で飲み込もうとした瞬間、鉛玉とナイフが全て強烈な爆発を起こした。

 相当量の鉛玉とナイフが同時に爆発しては、さすがの威力だ。

 俺の闇の壁と相殺して、俺の闇は消滅してしまった。


「ここぉ!」


 イーニは地面の砂を掴み、それを俺へとぶちまける。

 そして、その砂つぶ一粒一粒が、全て熱を帯び始めた。

 イーニの掴んだ砂が、全て爆発した。 

 完全に不可避、防御に使った闇も消えたタイミングだった。


「はぁ、はぁ・・・・・・。砂も爆発させることは、見せていなかったからな・・・・・・。さすがに死んだか・・・・・・?」


「なるほどな、一度手に触れたものなら、何でも爆発させることができるのか?鉛玉とナイフ以外を爆発させられるとはな」


 さすがに爆風が激しすぎて、砂埃が舞った。

 全身に砂がかかる。

 だが、爆発自体は全く効かなかった。


「なんで、無事で・・・・・・?!」


 イーニは驚愕と恐怖が入り混じった表情をしている。

 さすがに、余裕そうな口ぶりも消え失せている。


「なんでって、散々見てただろ。闇で飲み込んだだけだ。闇の壁が消えても、もう一度作ればいいだけだ」


 今の俺の闇属性は、無限に力を出せる。

 消えたのなら、もう一度出すだけでいい。

 全力を出して相殺程度なら、いつまで経っても俺に勝つことはできない。


「それで、奥の手とやらは終わりか?」


「ふざけるな、ふざけるなぁっ・・・・・・!」


 イーニはまた口調を強めた。

 だが、足は震えていて、腰も引けている。

 もう戦意がないのは明らかだ。


「もう、終わりにする」


 俺は再び闇の槍を生み出す。

 槍の数は一本どころじゃない。

 十本は超える数の槍を出した。


「行くぞ」


 俺は、イーニに向かって大量の槍を飛ばした。


「くぅぅっ・・・・・・!」


 イーニは全力で逃げ始めた。

 爆発を利用して、一目散に俺から離れていく。

 途中で爆風も起こして、視界も遮りながら逃げていく。


 一応槍はイーニの居た方向へ飛ばしているが、どこに居るのか分からないなら、当てようもない。

 結局逃してしまった。


「ちっ、殺せなかったか・・・・・・。無駄に時間をかけてしまったか」


 超上会の一人を殺せる絶好のチャンスを逃してしまった。

 けれど、俺はもう圧倒的な力を手に入れた。

 誰が来ようと、全てを飲み込んでやる。

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