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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第八章「人魔和平委員会」
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第九十三話「救出」

 死刑の執行日、俺はマモンとアイリスを連れて、再びジーラ王国へと訪れた。

 俺の顔は広く知られている以上、ノコノコと民衆の前に出るわけにはいかない。

 俺は、右半分が黒、左半分が白の仮面をつけて行動することにした。

 今日は魔王として行動する。

 

 魔王として行動するとは言っても、魔王を明言して行動するわけではない。

 人族に牙を剥ける存在として、行動するにすぎない。

 これも、超上会の権力の強さに逆らうことは、勇者の俺には難しいせいだ。


 俺が闇属性の関係で、勇者として魔王の手下疑いの人を助けるのも、闇属性の心証が悪くなる可能性がある。

 今回は闇属性の力を見せつけるような使い方は封じよう。


「ディザ様、準備はできました」


「私もいつでも行けますっ」


 マモンとアイリスもいつでも出られる準備ができているらしい。

 一応マモンとアイリスも顔を隠すために、マモンは黒の仮面、アイリスは白の仮面をつけている。

 顔だけでなく、二人の羽など、魔族だと一目で分かる物も、アイリスの幻覚によって消している。

 これによって、一応謎の三人組が急に少女を救ったという形にしておく。

 察する者は察してしまうかもしれないが、仕方がない。


「あと一時間後か・・・・・・」


 シックの処刑時間まで残り一時間。

 執行の時間よりも少し前に、処刑台にシックは出てくるはずだ。

 そのタイミングで、場を荒らして、シックを連れて行こう。


 処刑執行の四十五分前、俺たちは処刑台らしきところへと辿り着いた。

 城下町のど真ん中、この街で最も大きな広場に、人の頭の上ぐらいの高さの台が置かれていた。

 事前に知らされていた場所と一致しているので、間違いなくあそこが処刑台だろう。

 

 街の中心で、仮面をつけた男女が三人集まっているのは不自然かもしれないと思っていた。

 けれど、街があまりにも栄えているため、少々奇抜な格好をしていても、少し変わった人たち程度にしか思われない。

 これはあまりにも好都合だった。

 このままなら、大きな行動を起こす前に、不審に思われずにすみそうだ。


 周囲を確認してみると、特に死刑執行に興味を持ってそうな人は多くはない。

 半数ほどは、処刑台に興味を示さず、ただ通り過ぎていく通行人ばかりだ。

 尚更、いったい何故人族の闇属性の死を、大勢に見せつけようとするのか、理解に苦しむ。

 公開処刑のおかげで、数少ない付け入る隙が生まれたのは、不幸中の幸いとも呼べるが。


 残り十五分。

 俺たちはずっと広場で待機している。

 緊張が走ってきた。

 人族を初めて殺した時もそうだが、今回も人族の街を荒らすことになる。

 どうも、さっきから手の汗が止まらない。


「大丈夫、ですか・・・・・・?」


 アイリスは心配そうな声色だった。

 仮面で表情は見えないが、その声からどんな顔をしているかが分かる。


「大丈夫だ。心配はいらない」


 俺はアイリスの頭をポンと撫でた。

 緊張しているところ、声をかけられたことで、少し気持ちが落ち着いた。

 

 残り五分。

 鎧を着た騎士の男が数人、姿を見せてきた。

 奴らは処刑台の周りを囲む。

 周囲を警戒しているような配置だ。

 もうそろそろ来るだろうか。


「来たっ・・・・・・!」

 

 男二人に挟まれて、手首に手錠をかけられたシックが、処刑台の方へと運ばれてきた。

 シックは死んだ目をしていた。

 まるで、もう生を諦めたかのようだ。

 完全に死を受け入れた表情になっている。


 予定時刻まで、残り四分になった。

 そろそろ動き出すべきだろうか。

 

「アイリス、頼めるか?」


「分かりましたっ」


 事前に決めた作戦の通りやっていこう。

 まずは、アイリスに行動をしてもらう。


 分かりやすく闇属性を使うわけにはいかない。

 だが、アイリスなら、そこらの人には気付かれないように、幻覚を見せることができる。

 俺たち三人の姿を、周囲から見られないようにまずはしてもらう。

 そして、その隙にマモンと俺でシックの周りの奴らを気絶させる。

 それから、シックを連れて、即撤退する。

 アイリスがかなり質の高い幻覚を生み出せるため、おそらく失敗はしないだろう。


 アイリスが、気付かれない程度に、周囲を闇で覆う。

 場が少し冷えてきた。

 ただ、このわずかな変化は普通の人族から察することはできないだろう。


「マモン、行けるか?」


「いつでも」


 マモンも準備はできているようだ。

 早速行動を始めよう。


 マモンは自身のスピードを活かして、一気に処刑台の方へと走り出す。

 一人一人心臓を圧迫させ、一気に全員を気絶させる。


 俺も闇を用いて、一人一人首を絞めていく。

 首を絞められた男たちは、次々と意識を失って、一人ずつ倒れていく。


 そして、周囲の鎧の男たちが全員気絶した後、マモンはシックを抱えて、即撤退を始める。

 いくらアイリスが幻覚を見せているとはいえ、さすがに鎧の男たちが大勢倒れてしまっては、違和感を感じられる。

 その違和感から、俺たちの姿が見られることもおかしくはない。

 事は早めに済ませたほうがいい。


「アイリス、撤退するぞ」


「了解ですっ」


 シックを抱えたマモンと共に、アイリスの元へと戻り、それから街の中心から街の外へと向かって走り出す。


 さっきまで居た後方では、ざわめきが聞こえてくる。

 処刑対象がいなくなったこと、多くの人族が倒れていることに、民衆が不安に駆られているようだ。

 だが、それを気にしている暇はない。

 早く街から出るとしよう。

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