表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第八章「人魔和平委員会」
100/175

第九十二話「堪えきれない怒り」

「この国なんだな?」


「はいっ、間違いないです」


 俺とアイリスは、ヒューゼ王国の次に大きいという、ジーラ王国に来ていた。

 シックは確か、この国の田舎街である、スモラ街の出身のはずだ。

 まさか、自分が生まれ育った国で死刑が執行されるだなんて。


 俺たちは、とりあえずジーラ王国の城下町へと赴いた。

 その町のど真ん中には広場があり、そこには掲示板が置かれていた。


『魔王の手下の人族、公開処刑執行』


 掲示板にはそんな文章が書かれていた。

 

「公開処刑されるのか・・・・・・」


 日付は明後日。

 まだ少しだけ猶予はあるが、のんびりしてもいられない。


 この国は、城の地下に牢獄があると聞いていたことがある。

 他の場所にも牢獄はあると思うが、シックは公開処刑されるほどの罪人扱いをされている。

 それならば、城の地下の牢獄に幽閉されているのではないだろうか。

 とりあえず城に訪問することにしよう。


「アイリス、城に行くぞ。おそらく、勇者の権限があれば、それなりに融通が効くと思う」


「分かりましたっ」


 俺とアイリスは城へと向かった。


 城の前には門があり、当然のことながら門番が居た。

 事前の約束無しだが、何とかなるだろうか。


「これは、勇者様じゃないですか。何か御用ですか?」


 この門番は俺のことを知っているようだ。

 これなら、話も始めやすい。


「今度処刑される者についての話を聞きたい。その報告がどこから来たのか、裏取りはあるのかといった詳細が欲しい」


「申し訳ございませんが、その件に関しては一切お話しすることができません」


「一切話すことができない?どういうことだ?」


「そのままの意味です。その件については何も話すなと上から言われています。死刑も中止されることなく、確実に執行するとのことです」


「何がそこまで・・・・・・」


 明らかにおかしくないだろうか。

 たしかに俺の訪問は突然のものだが、一切の拒絶までされるものだろうか?

 とてつもない強制力が働いているような気がしてならない。


「とにかく、用がそれだけならお帰りください。いくら勇者様とはいえ、重要な用件が無ければ、城内に通すことはできません」


「くそっ・・・・・・」


 結局、何もできないまま、俺たちは城下町へと戻った。


 俺とアイリスは喫茶店で一度休むことにした。


「どうしましょうっ、レイスさんっ」


「いくらなんでも、一切関与を許さないだなんて、そこまで・・・・・・」


 ただただ腹が立つ。

 絶対に処刑を遂行しようという意思を感じる。

 

「一度、魔王城に戻るしかないか?明後日まで猶予はまだある。今日と明日の内に、何としてもマモンに情報を集めてもらうとしよう」


「そうしましょうっ」


 俺とアイリスはジーラ王国から魔王城に一度戻ることにした。

 とりあえず、今の状況を聞くために、マモンのいる執務室へと向かう。

 

「ずいぶん早いお帰りですね、ディザ様」


 マモンは机の上の書類を眺めていた。


「ああ。何の成果も得られなかったよ。処刑の話は一切関与させないと言われた。まるで手が出せない」


「そうですか・・・・・・、私も今人族を洗脳して情報を集めています。さすがにまだ有益な情報を手に入れてませんが・・・・・・」


「そう、だよな・・・・・・」


 さすがに期間が短すぎて、有益な情報はまだか。

 もどかしい時間が続く。


「明日。明日までに何とかしてくれ。明後日に処刑が行われる。それまでに何とか使える情報を手に入れろ」


「承知しました」


 マモンは深く頭を下げ、再び書類へと目を向けた。


 この日、俺はもうやることが特になくなってしまった。

 こういう時は、本当に自分の無力さを感じる。

 勇者の称号も何の役にも立ってくれない。

 

 だが、これも全て世の中をこんな風にした超上会が悪いんじゃないか?

 自分への無力感よりも、むしろ怒りの方が湧いてくる。


 潰したい。

 消し去りたい。

 不思議と、心臓の奥底から力が湧いてくるような感覚が生まれてくる。

 もはやこの力を解放したくて、ウズウズしてくるほどだ。


「ディザ様、お顔が優れないようですが、大丈夫ですか?」


 マモンが心配した表情で、俺に声をかけた。


「あ、ああ。ちょっと焦りが出てきたのかもしれない」


「その、ディザ様から気迫というか、側にいる私の肌がぴりぴりとするような感覚を覚えてしまって・・・・・・、少々危険な気配がします。どうか無理はなさらずに」


「・・・・・・大丈夫、だ」


 俺は何の根拠もない、適当なことを言ってしまった。

 マモンの表情は心配そうな顔から変わらない。


 翌日になった。

 俺は魔王室で待機をしている。

 早く情報が集まらないかと気持ちが焦る。

 椅子に座りながら、椅子を貧乏ゆすりしてしまう。


 待っていると、トントンとドアをノックする音がした。


「入っていいぞ」


「失礼します」


 来訪者はマモンだった。


「集まったのか?」


「一応、集まったのは集まりましたが・・・・・・」


 マモンは浮かない顔をしている。

 あまり期待はできなさそうだ。


「どうだった?結果は」


「あの、超上会の下っ端らしき人から話を聞けました。そいつによると、今回は超上会の力が働いていると。王国の上部組織にシックさんを捕らえるように命令したとのこと。魔王城からシックさんが出てきたというのも、超上会から伝えられたことらしいです」


「超上会が直接関わっていて、シックを狙い撃ちしたということか・・・・・・」


「そういうことになります」


 超上会がこんな世界を作ったからだけでなく、今回の件に直接関わっている。

 本当に碌でもない奴らだ。


 超上会は相当の権力を持っていて、国自体に命令を下すことができるらしい。

 なら、俺一人が抗議したところで、もう覆すことはできない。

 勇者としての俺はあまりにも無力だ。


「もう、やるしかないか・・・」


「ディザ様?」


 もし行動を起こせば、闇属性の印象は悪くなるかもしれない。

 だが、このまま放置してしまっては本当にどうしようもない。

 なら、シックは生かしておいた方が、何か役に立つ可能性だってある。

 今だけ、今回だけは仕方がない。


「マモン、明日出かける準備をしろ。お前の力も借りようと思う」


「私が、ですか?しかし、私は魔族です。大丈夫なんですか?」


 マモンは理解不能といった顔をしている。

 だが、魔族だから行けないなんて話じゃない。


「魔王として、俺はシックを助けに行く。超上会の好き勝手にさせない。俺が処刑をめちゃくちゃにぶっ壊してやる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ