死者の首飾り
「えっ、なんだって?」
「だからさ、死者の首飾りだよ」
僕はもう一度、同じ言葉を繰り返した。
「どうしても見付からないんだ。確かどこかにあったはずだろう?」
「そう言われてみればそんな気もするけど…」
彼は首を振っていった。
「よく探したのかい?」
「ああ、もちろんさ。でも、どうしても見付からないんだ」
彼はしばらく考えてから、肩をすくめていった。
「それじゃあ、君の思い違いだろう。よくある事だよ。他のものと記憶がごっちゃになってる、とかさ。なんせ古い話だからね」
確かに古い話だった。僕の思い違いで記憶がごちゃまぜになってるのかもしれない。
だが、しかし、本当にそうなのだろうか?
消えてしまった死者の首飾り。
それは呪われた首飾り。
本当にそんなものは存在しなかったのだろうか?
本当に?
◇ ◇ ◇
僕はもう一度、世界を旅し首飾りを探し続けた。
だが、結局、結果は同じだった。
もうよそう。無駄だ…
結局、俺の思い違いだったんだ。
そんなものなんて最初から何処にも無かったのさ。
俺が自分で創り出したただの幻想だ。
だいたい死者の首飾りを手に入れてどうしようっていうんだ?
呪いの首飾りなんて身に付けることも出来やしない。
せいぜい道具屋にでも叩き売るのが関の山じゃないか…
僕はそう考えると探し出すのを諦め、小さくため息をついた。
全てはただの幻だったんだ…
僕は深い眠りについた…
◇ ◇ ◇
友人が僕に死者の首飾りのありかを教えてくれたのは、それから二週間ほどたったある日のことだった。
首飾りの事などすっかり忘れていた僕に彼はこう言った。
「首飾りなら戦士の洞窟にあるみたいだぜ」
戦士の洞窟?
そんなはずはない。戦士の洞窟は隅々まで調べたのだ。
僕がそう言うと、彼はこともなげに言った。
「確率だよ。戦士の洞窟の宝箱にたくさんゴールドが入ってるやつがあるだろう? あの宝箱に何分の1かの確率で首飾りが入ってるんだよ」
僕は彼の言葉を聞き茫然とした。
確率。
そうだったのか。一度、洞窟に入り宝箱を取り尽くすだけではいけなかったのだ。
何度も洞窟を出入りして宝箱を取り続けねばいけなかったのだ。
僕はさっそく戦士の洞窟へ向かい、宝箱を取っては出て、また取ってと繰り返した。
そして、テレビ画面には「しのくびかざり」の文字が…
そうか、ファミコン版のドラクエ1で出て来たのは死者の首飾りじゃなくて、死の首飾りだったっけ…