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伊賀忍者に転移して、親孝行する。  作者: 風猫(ふーにゃん)
第七章 伊賀忍者 藤林疾風 戦国に暗躍する。
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閑話 戦国の京の都と、妹達の大改装。

天正2(1574)年4月中旬 京都二条御所 藤林疾風

 


 戦国時代の京都のイメージは、貴族文化が優雅に花開いた平安時代390年の歴史があり、戦国時代に戦乱で荒れたと言っても、日本一の都市で人が溢れているというものではないだろうか。


 戦国時代の後期、当時は住民登録なんてないし、何も記録が残ってないから定かではないが、人口は20万人を超えるくらいではないかと推測する。

 鎌倉時代の終りから、飢饉や戦乱で人口が減ったとしても、その数は3〜5万人くらいだろう。

 平安京を舞台とする『源氏物語』など、貴族達の〈きらびやかな生活〉が描かれた恋物語もあるが、映画『羅生門』や『陰陽師』などからは、治安の悪い京の都を窺うことができる。

 室町幕府の権勢が衰え、治安を担う侍所や所司代が無くなって、戦国時代のこの頃は、住民達の自衛しかなかったのである。


 応仁の乱が始まると、東西の武士の争いから身を守るため、貴族達は上京に環濠(かんごう)(周囲を囲む堀)を掘り櫓を組んで自衛し、下京では商人や庶民階層が環濠を掘って、両軍の長期滞陣に耐えた。

 応仁の乱の後も治安を護る守護もなく、武装した野盗集団が昼間から横行し、酷いあり様だった。


 当時のある貴族の日記には、こう記されている。


【 上京の一条烏丸にある土倉(金貸し)に無頼の者共が押し入った。周辺の町人達が加わり矢を撃ち合う激戦となり、戦った土倉一家の夫婦は殺され子供も負傷した。

 無頼の者共は火を放って、運悪く強風にも煽られ一条大路に面する一帯は焼け野原になった。】


 一条烏丸と言えば御所の間近であり、この時代、帝と言えど一歩外へ出れば命の危険があったのだ。


 都の人々にとって、その野盗よりもっと恐しいものがあった、火事である。京の都は応仁の乱以後に何度も大火に見舞われている。

 主に野盗達の放火である。都の民は放火が怖くて熟睡できない夜を過ごしていたのである。


 この大都市、当時の人々にはさほど問題視されていなかったかも知れないが、現代人からすると耐えられない最大の問題があった。


 『悪臭』である。臭いの元はいろいろあったが、まずは『人糞』である。水洗トイレなどは当然なかったが、大寺院などを除けば雪隠(トイレ)などなかった。

 庶民は家の周囲、道端に垂れ流しである。身分のある者や裕福な商人であれば、樋箱(ひばこ)(携帯便器)という小木箱を使用し、用便後にいちいち汚物を捨て洗い清めていた。

 樋箱を洗い清める女性は、比須万之ひすまし、又は樋洗(ひあら)いとよばれ、高貴な邸には必須の職業であった。

 樋箱は漆塗りの円筒形又は長方形で、高級品には紫檀地に螺鈿、蒔絵などが施されたものもあった。


 『悪臭』の第二の元は死骸である。犬猫鼠などの動物の死骸もあったが、多数の人の死骸が葬られもせず放置されて腐敗臭を放っていたのである。

 野盗に殺されたり、貧しい者が病気や怪我で亡くなった死骸もあるが、飢饉の度に飢餓により、数え切れないほどの死人が出ていたのである。

 腐敗した死体は、腐敗臭とともに疫病の原因ともなっていた。



✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣✣

 

 

 今まで男ばかりで、どちらかと言えば沈んでいた幕府跡の二条御所の離れが、五日程前から急に華やいで賑やかになっている。

 理由はと言えば、伊賀から姦しい一行が到着したからである。

 

 幕府が去った二条御所は、都の代官所として使用されている。

 代官は三好義継殿だが、政務に忙しい彼とは別に別館に『都普請所』なる奉行所が設けられている。


 俺は軍師として、新政全体の戦略を担っており、一つのことに掛かりきりにはなれない。

 治安が乱れ世情に不安のある都の改修は急務だ。

 だが誰に任せられるかと考えた時、進んだ伊賀の暮らしを知り、俺と同じ夢を知る我が妹達に戦乱で荒んだ都の改修を託すことにしたのである。

 そういうことで、伊賀から彼女達を呼び寄せたのだが、それがこの館が姦しくなった原因である。



 そうしてここに「都普請奉行 綺羅姫(16才)」と「奉行代理 八重緑姫(15才)」の誕生(デビュー)である。


 彼女達には、この5日間みっちり構想を伝えたし指示も出した。思うようにやってみろとも言った。

 二人ともとても張り切っている。



 『都普請所』には、綺羅達の補佐役の城戸とお銀寺社相談役の恵空殿、世話係の侍女楓と絋がいる。

〘侍女の二人は『姫様の世話には私達が欠かせないのです』と付いて来た。隠しても生まれて初めての都見物が目的だとわかるよ。〙


 普請所には21人の差配役がいて、綺羅達の指示で動く。差配役には、三好家の家臣が6人、堂上家の公家が5人、京の町衆から10人を選んでいる。

今、その皆を奉行所の広間に集めているところだ。


「皆よく集まってくれた。今から我々がやることは京の都を安心して暮らせる都に修復することだ。

 野盗、無頼の徒の討伐。貧しい民の救済。道や橋壊れた壁の修理。そして暮らしを豊かにする施設の建設など、果てしなくある。

 しかしこれをやりとげねば、京の都はこの国の都とは言えぬ。皆の力で京の都を『日の本一の都』に作り変えてほしい。


 綺羅、それでは差配役の皆に、これからやらなければならないことを話してくれるかな。」


「はい兄上。それじゃあ、私から話すわね。」


〘 言葉使いが普段のままだ。城戸が顔を顰めてる。確かに威厳がないけど、でもまあいいんじゃないの慣れるよ皆がさ。〙


「まず最初にやることは、市中の修繕箇所を調べて地図に落とすことよ。危険な順に①②③の3段階に分けて書いてね。

 それに寺社の場合は、⑴⑵⑶で書いてね。あとは別紙に所有者、破損の箇所、破損度合など気づいたことを書いて頂戴。

 二番目にやることは火事や川の氾濫の危険がある場所を調べることよ。最初と同じ要領でやってね。

 三番目には、 · · · · 。八重緑ちゃん。」


「はい、今の綺羅姉様が話したことは、配った紙に書いて置きました。調べて回る時は危険もあるかと思いますので、十分注意なさってくださいね。」


〘おお、八重緑の優しい言葉に皆が笑顔だ。〙


「なにか質問はあるかしら。遠慮はなしよっ。」


「綺羅様、調べておる時に怪我人を見掛けた時は、どのように。」


「そうね、いずれ寺社の炊き出しの場所で救護所を設ける手はずだけど、今はこの代官所で治療することにするわ。八重緑ちゃん手配をお願いね。」


「怪我人はそれで良いが、病人は長く留置くことが必要になるじゃろう。東福寺に連れて参れ。

 今、洛中に傷病治療所を作る準備をしておるが、そのための薬師などが東福寺に多勢おるでな。」


「恵空様、治療所ができるのでございますか。」


「うむ、三条六角堂の近くでその昔、通玄寺という寺があったところじゃ。もう1ヵ月もすればできるじゃろう。金は取らんぞ、だが悪さは許さぬ。」



 そこへ代官の義継殿が現れた。この頃よく来るんだよね。綺羅が目あてらしい。


「皆集まっておるな。皆に伝えて置くことがある。明日から、都の各所に設けた番所に人を配置する。番所には3人ずつ交代で常駐しておる。

 番所は東西南北に1町ごとに配置した。狼藉者がおれば知らせるが良い。呼子を所持しておるから、応援もすぐに駆けつけよう。」


「まあ義継様、これで都の治安も良くなり、民達も安心できますね。」


「ああ、綺羅殿。治安を良くせねばと忙せたのだ。1日も早く民が安心できるようにな。綺羅殿にも、もにょもにょ · · 。」


 あぁ皆の前で何やってんだか。お銀も差配役達もくすくす笑ってるよ。侍女の二人は、目を輝かせているけどね。


 

 妹達二人には、危険箇所の確認修繕と、道路や橋と下水道、防火壁の整備、火葬場造りと死体処理、汲み溜め便所の設置を最優先とするよう指示した。

 また、恵空殿の差配で貧しい民に炊き出しをしているが、怪我人や病人のための傷病治療院を設置と公衆浴場の設置。そしてこれらの賦役に貧しい者達を充てるように頼んだ。

 

 それらが一段落したら綺羅と八重緑のやりたい事造りたい物をやって良いと言ってある。

 二人が何を仕出かすのか、期待(ワクワク)心配(ドキドキ)がないまぜではある。


 いつもご愛読いただき、ありがとうございます。

 次章は戦国統一の戦い?などの話になりますが、少しの間、休養をさせていただきます。

 他の作品などを書きためて、充電期間としたいと思っています。


 それから、もし読んでいただいている方の中で、評価を付けていただいてない方がいましたら、正直な評価をいただきたくよろしくお願い致します。


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