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伊賀忍者に転移して、親孝行する。  作者: 風猫(ふーにゃん)
第一章 藤林疾風、戦国の伊賀に登場す。
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第七話 伊賀 藤林疾風 VS 北畠具教 その2

 日刊ジャンル別ランキングで、第四位になりました。

 皆様のご支援の賜物です。本当にありがとうございます。

 お礼に替えて、できるだけ長編にして、行きたいと思います。

 多気城を壊滅させた翌日、大河内城に向かった俺達は、途中の中間地点で一泊し、十分な睡眠と食事を取り、英気を養った。

 


 我が領、伊賀の総人口は、およそ6,000人。そのうち、戦える者は、4,000人程いる。その割合が高いのは、その中に『くノ一』つまり、女衆が800人程含まれるからだ。

 伊賀では、女性の地位が高い。家の田畑を養い、外へ出て忍び働きもする。2才以下の赤子以外の子供は、各家(中忍以上)が集団で養育している。これにより、16才から35才くらいまでの『くノ一』が活躍できる訳なのである。

 ましてや近年、藤林家がもたらした各種農機具により、繁忙期でも農作業の時間が1/5程度に短縮されて、余裕ができた時間で、焼酎や石鹸、陶磁器や塗り物の商品製作に従事して、稼いでいるのだから、男衆は頭が上がらない。


 また、伊賀では、年寄も貴重な働き手だ。

 元々、薬草を採取して、薬を調合していた年寄り達だが、近年は鉄砲火薬や焙烙玉、火炎瓶を製作し、椎茸栽培や豆腐、味噌、醤油の製造に大活躍している。



 


 北畠の軍勢のあとを追って出陣したが、途中で追い越してきたという、服部半蔵殿が率いる、伊賀からの増援部隊1,800人が到着した。

 さすが伊賀者、山道に詳しく、体力も半端ない。

 その頃、俺達、奇襲部隊200人は、大河内城を攻撃中で、既に城の建物は炎上し、籠城もままならず、城から出てきた軍勢と交戦中だった。

 城から出てきた、およそ800人の大河内城の軍勢は、50人ずつの鉄砲隊の三段撃ちと焙烙玉の投擲で、既に半数以上を討ち取っていたが、そこへ現れた増援の伊賀の軍勢により、たちまち蹂躙され、討ち果たされた。




「半蔵殿。来てくれたのですか。俺達は大河内城を焼き払ったら、伊賀へ戻るつもりでいたのですが。」


「伊賀に攻め込んだ北畠勢は、藤林砦を包囲したところで、藤林砦から北畠本陣への、焙烙玉の攻撃で、震え上がったところへ、多気城が攻撃されているという知らせが、届いたのでしょうな。

 藤林砦への攻撃を放棄して、退却して行きましたぞ。

 その後すぐに状況を確認のため、皆が藤林砦に集まりましてな、そこへ疾風殿からの伝令が到着して、奇襲成功の仔細を聞きました。


 それを聞いた皆の意見が、疾風殿への増援と、決まったのでござるよ。」

 伝令のやつ。まる一日で伊賀に辿り着いたなんて、どんだけ無茶をしやがったんだっ。


「そうだったのですか。伊賀に被害が出なかったのは、望外の喜びです。

 しかし、相手は、ほぼ無傷の8,000の軍勢。一筋縄では勝てませんよ。」


「なあに、お父上、長門守殿の指示でな。1,000個の地雷と、投擲機20台を持参したわい。

 あとは、『疾風殿の策略に任せよ。』との仰せじゃ。期待されとるのぉ、気張りなせぇ。はははっ。」




 それから一刻後、北畠具教率いる軍勢が姿を現した。

 敵を迎え撃つ俺達の眼前には、収穫の終った麦畑が広がり、俺達の手前500mには、伊賀の軍勢が抱え持ってきた1,000個の火炎地雷が埋め込まれている。

 地雷と言っても、踏みつけて爆発する訳ではなく、焙烙玉や火炎瓶の投擲により、誘発させるものである。


 俺は、味方を6つの部隊に分けた。地雷原の正面に姿を現すのは、俺達奇襲部隊200のみ。

 北畠勢は、伊賀から増援が来ているのを知らないはずだ。2km後方には、増援の投擲部隊200、及び投擲機20台が控えている。

 俺達の左右に、2km離して、4つの400ずつの伏兵部隊を配置した。

 

 北畠の軍勢は、体制を整えると、まず先陣2,000が攻めて来た。

 その先陣に対しては、地雷原に辿り着く前に、焙烙玉をお見舞して、ほぼ半壊にさせた。そして残った兵には、鉄砲で迎撃。

 敵は、主力の5,000を投入して来る。半数が地雷原に到達した時点で、一斉に火炎瓶を投擲。たちまち、地雷が誘発し、先陣の残兵を含めた3,000が壊滅した。

 そして俺達は、退却を開始する。怒り狂った北畠勢は、俺達を逃すまいと、追撃してくるのだが、忍びの者達の足は速い。

 


 俺達は、後方に控えている投擲部隊のところまで、2km後退すると反撃に出る。

 20台の投擲機から、次々と焙烙玉や火炎瓶が投擲されると、敵勢は再び混乱に陥り、鉄砲の餌食となって、いたずらに兵力を失って行く。

 そして、ついに具教の本陣が姿を現した時、伏せていた伏兵が、四方から襲いかかり、乱戦となった。


 俺は、20騎の騎馬武者を従えて、具教の本陣へ突撃。途中の雑兵を蹴散らし、一直線に駆けた。

 この戦いの時の俺は、あの現代から用意した装備、フルフェイスのヘルメットに、防弾チョッキなどを着用していて、おかげで矢などものともせず、ひたすら具教の本陣を目指した。

 

 見つけたっ。あそこにいるのが、北畠具教だっ。


「伊賀の藤林疾風っ、伊賀に仇なす北畠具教を成敗するっ。」


 そう叫んで、騎乗したまま、馬で具教に体当たり。吹き飛んだ具教に、とどめの槍を突き刺す。

 起き上がろうとしていた具教は、そこで力尽きて、横たわって動かなくなった。



『北畠具教っ、伊賀の藤林疾風が討ち取ったりっ。』


 追いついて来た騎馬の近習達が、次々と声を上げる。

「北畠具教を討ち取ったぁ。藤林疾風様が討ち取ったぁ。」

「北畠具教、討ち死にっ。刀を捨て降伏せよ。」

「北畠具教、討ち死に。北畠具教、討ち死に。」

「大将が討ち取られた、(いくさ)の決着はついた。兵を引け。」


 次第に喧騒が治まり、北畠の兵士達は、その場にしゃがみ込み、脱力感に覆われていった。



俺の取った戦法は、九州の島津家が得意とした《釣り野伏り》と言われる戦法で、北畠具教達が、伊賀からの増援部隊の存在を知らなかったために、まんまと包囲殲滅された訳だ。

 

 伊賀の兵には、手傷を負った者はいるが、死者は皆無という《完全勝利》で終った。

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