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伊賀忍者に転移して、親孝行する。  作者: 風猫(ふーにゃん)
第三章 伊賀忍者 藤林疾風 戦国を生きる。
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閑話 伊賀の水軍 九鬼嘉隆。

永禄4(1561)年4月 伊勢 中之郷 九鬼嘉隆



 先月、九鬼家の本城である兄の浄隆の田城城が、志摩の地頭7家の奇襲に合い、兄浄隆は討ち死に。救援に駆けつけた俺は、燃え盛る城から甥の澄隆と兄嫁達を連れて、城を落ちるのがやっとだった。

 甥の澄隆はまだ7才。俺の波切城から逃げ出せた者達を含め、一族80余名を支えて行かねばならぬ。

 伊勢の朝熊山に逃げた俺達は、伊勢の者に捕まるのを恐れたが、伊賀の代官 名張源四郎殿は何故か、全てを承知していて、俺達を代官屋敷に招いて庇護してくれた。


 その後、伊賀に臣従する気があるなら、藤林の大殿の元へ参るよう言われ、一族の者と相談の結果、伊賀への臣従を決めた。

 藤林の大殿から聞かされた話は、驚くことばかりだった。

 領地はないが俸禄をいただけるとか、身分がなく役職があるのみとか。しかし、伊賀の領民は皆で明るく親切に話し掛けてくれ、俺達を気遣う気持ちをひしひしと感じた。


 そして、伊勢の中之郷に屋敷と長屋を与えられ、ここの港造りから新たな生活が始まっている。

 もう何度目か分からない驚きだが、港造りには、多勢の賦役の者達が動員され、鉄でできた重機鍬という巨大な機械で、港を掘っている。

 重機鍬には鉄線の入った綱が繋がれ、陸から多勢で綱を引き、てこの原理と滑車で動かすのだとか。

 そして深く掘られた岸には、木杭を打ち込み板を貼って、コンクリートを流し込んで固めている。

 理解が追いつかないがそういうことだ。

 現場には、七島党の安楽島(あらしま)左門殿が来て、指揮を取られている。俺の基地の副官に任じられたのだ。

 あと伊賀の水軍には、田城左馬之助、浦豊後守、和具豊前守、小浜久太郎殿達が入る。

 責任の重さに身が引き締まる。


「おお嘉隆殿、来ておったか。あと1月お待ちくだされ。そうしたら大湊や桑名に優る伊勢の港が誕生しますぞっ。はははっ。」


「左門殿、お世話になり申す。それにしても大きな港ですなぁ、いったい何十隻の船が泊まるやら。」


「若殿は日の本の船など眼中にないのでござるよ。

 南蛮船と戦って負けないおつもりですからなっ。はははっ。

 今作っている船など練習船で、今の倍以上の船が本番だそうですからなぁ。」


「大殿からは、大名達とは争わぬと聞きましたが、南蛮とは戦うのですか。」



 船の建造は既に完成した造船所で始まっている。御曹子の指示で、新造船と呼ばれる船の建造がされている。

 全長20m幅6m、3本柱で綿布の三角の帆を張る船だ。構造はなんと船体に鉄骨が入れられており、船体と甲板が鉄板で覆われている。

 新造船は2隻目が完成間近で、あとは港の完成を待って進水するばかりになっている。



 伊賀に臣従して一族の暮らしもずいぶん変わった。俺や母上、澄隆母子と女中や郎党の屋敷は、広々とした庭のある二階建ての大きな屋敷だ。

 一族の者達は、その隣のコンクリートでできた、三階建の建物に住んでいる。

 朝は玄米に野菜と卵料理に味噌汁。昼は蕎麦か、うどんの麺料理。夕餉は白米に魚か肉料理が2品。ときに鍋料理もある。

 蕎麦や小麦を麺にして食べたことなどない。大豆味噌や醤油も口にしたことがない。ましてや料理の出汁に煮干しや魚貝、そして酒や砂糖を加えるなど考えられもしなかった。

 料理人が御曹子に精がつく料理を言いつかって、女衆を率いて作り、一族の者も皆食堂で同じ料理を食べているのだ。


 水軍の者は、揃いの《繋ぎ着物》3着与えられ、女子供には普通の着物を3着いただいている。

 また、靴という滑らず丈夫な草鞋の上をいく物や靴下という足袋もいただいている。

 屋敷と団地には、多勢で入れる湯の風呂があり、毎日夕方に入れ石鹸で洗うこともできる。

 湯には、温泉で作ったという湯の花が入れられ、温まり疲れが取れる。

 おまけに女衆には化粧水という肌を艷やかにするものまであり、皆美しくなったと喜んでいる。

 志摩にいた頃の貧しい暮らしとは雲泥の差だ。

 こんな暮らしが戦国の世にあるとは夢にも思わなかった。


 一族の者は港と船ができるまでは、伊勢の漁師の手伝いをしている。一緒に酒を飲み、漁師の娘達と仲良くなっている者もおる。

 皆ここの暮らしを楽しんでおる。この御恩は誰に返せば良いのか、大殿は伊賀の民達皆で働くことだというが。

 


 

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