表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伊賀忍者に転移して、親孝行する。  作者: 風猫(ふーにゃん)
第二章 伊賀忍者 藤林疾風 戦国を行く。
18/107

第八話 諸国行脚 信州の《歩き巫女》

《歩き巫女》(渡り巫女)の起源は、一説によれば『日本書紀』に見える豊鍬入姫命(とよすきいりひめのみこと)倭姫命(やまとひめのみこと)に至るといわれている。

 或いは、諏訪神社の巫女が、伝道師として各地を巡ったことに始まるともいわれている。


 歩き巫女と呼ばれる巫女は、神社に務める巫女とは違い、特定の神社に所属していない。


 原始の日本では、邪馬台国の卑弥呼に代表される〘シャーマン〙など、女性が神憑(かみがか)りとなり、神託や預言を行なっていた。

 それら神事は、時代を経るに従い、男性神官に

取って替わられて来たが、現代至っても青森県の〘イタコ〙などに、その形跡を見ることができる。


 歩き巫女達は、呼び掛ける時に『のう、のう

(ねえ、ねえ)』と発したことから、《ノノウ》とも呼ばれていた。各地の祭りや市を巡って

「のう、のう、巫女の口ききなさらんか〜。」と言って、禊や祓い、口寄せ、或いは占いなどを行い、報酬を得ていた。なかには遊女に身を落とした者もいた。




 蓼科の山岳道を抜けて、上田へ続く街道へ出た。

 禰津村の手前の街道で、5才から10才くらいの

女の子を5人ばかり連れた商人達を追い越したが、おそらく人買いだろう。

 甲斐で金次に聞いた、この先にある《巫女道場》に売られるのであろう。



 板壁で囲われた、かなりの広さがある神社。

 大きな正門の上には「甲斐信濃巫女修練道場」

という、看板が掲げられている。

 門を入るとすぐ横に社務所があり、中年の巫女が声を掛けて来た。


「なんの用かしら、ここは殿方禁制なのよ。」


「伊勢の商人でございます。こちらは巫女様の修行道場と聞きおよびまして、鈴を買うていただけないかと、伺いました。」

 

 そう言い、鈴なりの鈴を、鳴らして見せる。

 『しゃりん、しゃりん、しゃらしゃら。』


「あらっ、いい音色ね。待っていなさい、神女様にお伝えして来るわ。」




「鈴を売りに来たとか、どんな鈴なの。」


 麻糸で繋がった10個の小鈴を手渡すと、振られた鈴は、『しゃりーん、しゃりーん。』可憐な音色を立てる。


「いい音色ね。いくらで売るの。」


「一個一文(約400円)で、いかがでしょう。」


「ふーん、いいでしょう。幾つあるの。」


「今、手元には100個しかありませぬが、2月ほどお待ちいただければ、1.000個以上をご用意できます。」


「いいわ、2,000個届けて頂戴。代金はその時に渡すわ。100個は、今貰うわ。」


「ありがとうございます。」




 俺達はそのまま、信州を抜けて、越前に向かう。お銀が黙りこくって、考え込んでる。


「あの子らのことを考えているのか。」


「ええ、口減らしに売られて、仕方がないと思うんですが、それにしても不憫に思えて。

 そう言えば、巫女道場では、伊賀へのお誘いは、しませんでしたね。」


「あそこは、それなりに生きる手立てを学ぶことが出来る。

 巫女頭達も子らを育て、ひもじい思いはさせておるまい。

 武田が滅びた時には、手を貸してやらねばならぬが。」


「放って置くしか、ないんですかね。」


「放っては置かぬぞ。お銀、そなたもあの鈴をつけるか。」


「いやですよ若旦那、猫じゃあるまいし。

えっ、あれって、もしかして。」



 巫女道場に売った小鈴は、伊賀焼きで型に入れて作った極薄の可憐な音色の鈴だ。

 ど·こ·に·も·ない、疾風自慢の鈴である。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ