表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伊賀忍者に転移して、親孝行する。  作者: 風猫(ふーにゃん)
第二章 伊賀忍者 藤林疾風 戦国を行く。
11/107

第一話 諸国行脚 尾張津島への旅

 永禄3年 (1560年)4月中旬。遅咲きの桜も散り、春の陽気が伊賀の地に溢れていた。

 俺は、伊勢から帰郷して一ヶ月半、家族に囲まれながら、のどかな日々の休養を経て、次の行動を起こすことにした。



「父上、母上。これから半年ばかり、旅に出て参ります。 織田信長と、浅井長政がどういう人物か、自分の目で確かめてきたいのです。」


「うむ、そうか。こちらのことは、任せるがよい。

今のところ、紀州の畠山家や根来寺、雑賀衆とは、商売を通して(よしみ)を通じておる。

 そうそう(いくさ)には、ならんじゃろう。」


「疾風、、はぁ。母が行かないで、と言っても聞いてくれないのでしょう。母と約束してちょうだい。決して死なないで帰って来るのよ。」



「 · · 危険なことは、極力致しません。才蔵と佐助が護ってくれると思います。」


「才蔵、佐助、頼みますよっ。」


「「 お方様、お任せくださいっ。」」



 尾張へは、伊勢の商人《伊勢屋七兵衛》の商船で、商売を兼ねて行くことにした。

 伊勢へ出て、伊勢屋の安宅船(あたけぶね)で、伊勢湾を渡り、津島ヘ行く。

 俺の供は、才蔵と佐助のほか、織田との繋ぎを持つ服部半蔵の嫡男《服部正成》と、その一党が従うことになった。

 史実では、5月19日に桶狭間の戦いが起きる。

 信長に会えるかどうかは未知数だが、できれば、言葉を交わしてみたい。



 4月21日の朝、伊賀をでる。旅装は小袖を着た、商人の出で立ちで、忍び装束は背中に背負った、行李(こうり)に入っている。

 3日後、伊勢の伊勢屋七兵衛の屋敷に着いた。


「七兵衛。伊勢の町は大層な活気だな。伊勢屋も、儲けておるのか。」


「あはははっ、疾風様がそれを申されますか。  

 関所を廃し、寺社の利権である座を駆逐して、荷馬車が通れるように街道を整備され、商人に大層な便宜を図られたのは、ほかならぬ疾風様では、ございませぬか。

 おかげで、伊勢の商人は、京、難波はもとより、東は関東の津々浦々まで、伊賀や伊勢の産物を売り捲くっておりますぞっ。


 加えて、領民達も農作物の収穫が驚くほどに増え、石鹸や豆腐、味噌などの商品の生産や、街道、河川の賦役の収入で潤い、笑顔が溢れておりますぞ。」


「そうか、それは重畳。時に、他国での伊賀や伊勢の評判はどうか。」


「はい、北畠家が滅んだことは、大層な驚きと受け留められておりますが、領国が見違えるほど、豊かに変わりつつあることに、領主藤林家の治世が素晴らしいものと、評判でございます。」


「それは大方、お前達商人が広めた評判であろう。あまり派手に言うでないぞ。 欲に長けて、他国が攻めて来るからな。」


「大丈夫でございます。 伊賀の麒麟児、疾風様の武威も、恐ろしく強いと、轟いております故に。」


 困ったものだ、目立ち過ぎるのは、避けたいな。

争いする者達から、同盟など求められても、なんの得もない。

 俺は伊賀を、戦乱の地にはしたくないのだ。




 伊勢の港を出て、途中桑名の港に寄った。

 桑名は、一応伊勢の勢力圏であるが、商家の勢力が強く、堺と同じで商人達の自治が許されている。

 伊勢湾の奥にある港町には、多くの船が出入りし、商家が軒を連ねて活気に満ちている。



「伊勢屋はん、お久しぶりでんな。来られるのを、楽しみに待っとりましたん。」


「これは、湊屋さん。ご無沙汰しておりました。

 相変わらず、桑名は賑わっておりますなぁ。」


「なんの、これも伊勢からの品々が、勢いを付けてくれるおかげですさかい。

 おや、そちらにおられる御仁は、伊勢屋さんの関わりのある方でございますかな?」


「伊賀の商家の御仁で、尾張までご案内するところです。」


「これはこれは。桑名の湊屋でございます。

伊賀といえば、藤林の若殿が、えらいできたお方と聞いとりますが、どのような御仁でございますかな?」


「伊賀名張の八兵衛です。武具の商いの伝手を求めて、津島まで参るところです。

 藤林の若殿は、お見かけしたことはございますが、普通の若者でございましたよ。」


「私には、とても普通な方とは思えませんな。

あんな便利な農具を、しかも高価な鉄でお作りになるなど、普通ではできん。余程の変人にしかできんことですがな。」


 横で才蔵と佐助が、吹き出しそうにしている。

 主が変人と言われてるのに、笑うとは不謹慎なやつらだ。罰として、今夜の夕餉のおかずを一品ずつ取り上げてやろう。



 桑名を出て、夕刻前には、津島に着いた。

 港には、織田家の役人がいて、荷検(にあらため)が行われた。俺達の行李(こうり)(あらた)められたが、巧妙な二重底になっているので、忍び装束は見つからずに済んだ。

 役人に、信長様に献上したい品があると話すと、清須の城に出向くように言われた。取次ぎをしておいてくれるそうだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ