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伊賀忍者に転移して、親孝行する。  作者: 風猫(ふーにゃん)
第一章 藤林疾風、戦国の伊賀に登場す。
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第八話 伊勢北畠領の始末と、その後。

 北畠具教が討ち取られ、多気城と大河内城が籠城もできずに、落城したことで、北畠領の城代や各地の豪族達が、降伏と臣従を申し出てきた。

 父上は、それを全部、俺に丸投げして来たので、俺は、当分伊賀には帰れない羽目になった。

 俺は、領地を召し上げることを条件に、臣従を許可した。

 2·3の豪族が本領安堵を主張したので、有無を言わさず、城ごと殲滅した。

 戦国の習いとしては、落城しても降伏すれば、当主を挿げ替えて、本領安堵するのが普通だが、そんなことを続けると、情勢次第で寝返ったり裏切るので、臣従した者は、全て金銭による俸禄とし、地縁のない代官を配して、支配を固めることとしたのだ。



 伊勢の石高は、50万石超。伊賀は、商売を除けば10万石だから、石高だけなら、一気に6倍に増えた。

 北畠領だった伊勢征服を期に、伊賀各家は、藤林家に臣従を決め、百地丹波と服部半蔵は、家老職となった。

 彼らの俸禄は、5万石相当としたが、それまで各々の家臣に与えていた俸禄が、一部の郎党を除き、藤林家から支給されることになるので、数十倍の加増になる。



 新しい伊勢の代官には、伊賀の中忍30名ほどが、任命されて伊勢各地へ散って行った。

 伊賀で行なった農地改良や商品開発を手掛けることになる。月にニ度、藤林砦で評定を行うこととしたが、半数ずつの参加で、半分は代理の参加とした。

 こうして、3ヶ月ほど、伊勢の治世に追われたが、やっと、伊賀に帰れることになった。

 そろそろ他国で戦乱が起きる。5月には、織田と今川の《桶狭間の戦い》が控えている。静観してはいられない。

 特に織田は、伊賀の脅威となる。なんとか恩を売っておかなければ。

 そして、8月に浅井と六角の《野良田の戦い》が起きる。



 峠を抜けると、懐かしい伊賀の風景が広がる。伊賀に入ったところで、小猿達、百地一党と分かれ、伊賀北部の藤林砦に向かう。

 俺達に気づいた領民達が、畑から手を振ってくれている。俺達も振り返す。


 伊賀北部に近づくと、驚いたことに、商家が立ち並んでいる。50軒ほどにも増えて、人で溢れ返っている。

 俺達が通ると、道の両脇に並び、大歓声だ。少々照れくさい思いをしながら、藤林砦に辿り着く。

 跳ね橋を渡って、敷地に入ると、家人達が総出で迎えてくれた。そして、父上と母上、母上に抱かれた妹の綺羅がいる。


「御曹子、お帰りなさいっ。」

「若様、お帰りなさいまし。」

「疾風様、ご苦労さまでしたぁ。」

 皆、口々に出迎えの言葉を言っている。



「父上、母上、只今戻りました。」


「おう、よう戻った。頑張ってくれたようじゃのぉ。」


「父上のせいで、酷い目に遭いました。もう、しばらくは、母上を父上から取り上げさせてもらいます。」


「まあっ、嬉しいわっ。疾風はもう、母に甘えてくれないのかと、心配してたのよ。」


「母上には、いっぱい聞いていただきたいことがあります。

 そうだ、綺羅には、いっぱいお土産を買ってきたよ。」


「なんじゃ、儂には、文句だけか。まあ良い、さあ、家に入るが良い。」




 その夜の夕餉は、両親と綺羅だけでなく、道順や城戸、才蔵に佐助、乳母の梅や女中の楓と紘、郎党の孫太夫、八右衛門、半六、そして権爺の一家皆で、賑やかで楽しい夕餉となった。


「坊、北畠具教を討ち取ったのは、大手柄ですが、大将としては、やり過ぎじゃねぇですか。」


「それがさぁ道順。せっかく城戸に教わった騎乗と槍捌きを試す、絶好の機会だったもんだから、初陣だし頑張っちゃった。エヘッ。」


「若の雄姿を見られなかったのは、残念ですな。しかし、騎乗で具教を蹴り飛ばしたのは、いい判断ですぞっ。」


「城戸が居なくて良かったよ。見られてたら、緊張して失敗してたかも。あははっ。」


「お方様、すみません。疾風様は、誰よりも速くて、追いかけるのがやっとでした。」


「まぁ、才蔵には苦労を掛けたわねぇ。皆、無事に戻れたのだから、良かったわ。」


 今、俺の膝の上には、綺羅がお坐りしている。2才になった綺羅は、危なげなくトコトコ歩いて、俺の膝に納まっている。

 俺が綺羅用に作った木のさじで、少し冷めた茶碗蒸しを食べさせてやっている。おかげで隣には、お守り役の楓が、はらはらしながら見守っていて、自分の食事ができないでいるよ。


「お方様、どうして綺羅様は、私でなく、疾風様のところに行くのでしょう。ずっと毎日、ご一緒しているのに。」


「そうねぇ、疾風は綺羅の目の前で、いろんな珍しいものを、作ったりするからかしらねぇ。」


「そうです。若様は見たこともない、忍びの道具も、簡単に作ってしまわれるのですよ。」


「坊の頭の中は、いったい何が詰まっているんでしょうかねぇ。普通の味噌じゃねぇことは、確かですぜい。」


「「「あははははっ(ほほほほほっ)」」」


『皆して、笑い過ぎっ。』

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