もりのおく
目が覚めるとそこは全く知らない場所だった。
周りには沢山の木が生えていて薄暗い。
どうやら山の奥に迷い込んでしまったようだ。
ここはどこだろう。
どうして俺はこんなところにいるんだろうか、思い出そうとしても何も思い出せない。
それどころか、自分に関することが何も思い出せない。
何もわからない現状に恐怖を感じていた。
しかし、立ち止まっていてもどうしようもないと思い人が通れそうなところを探して進むことにした。
もうどれくらい歩いたのだろう、辺りは先ほどよりも暗くなり、肌寒くなって来た。
かろうじてまだ足元は見える。
「ねぇ、そこの君。」
突然背後から話しかけられた。
恐る恐る振り返ると高校生くらいの青年がそこにはいた。
なんでこんなところにいる?
足音は聞こえなかった、いつから後ろにいたんだ?
そんなことを考えていると、
「僕の話を聞いてくれる?そんなに時間は取らせないからさ。」
と、話しかけられた。
見ず知らずの人の頼みを聞く必要はない。
けれど、なぜか断ってはいけないような気がした。
だから、黙ってうなづいた。
「ありがとう、聞いてくれるんだね、こんな僕の話を。今までに断る人が何人も居たんだ。断られなくて本当に良かったよ…。」
ホッとしたような感じで言った。
「さあ、付いて来て。」
青年について行くと、ボロボロの建物の前で立ち止まった。
「僕の家はここなんだよ。」
そう言ってその骨組みの見えているボロボロの建物を指差してた。
どう見ても人が住めるような場所じゃない。
下の方を見ると、『✖︎✖︎病院』と書かれたボロボロの看板が落ちていた。
どうやらここは、昔、病院だったようだ。
「昔ね、ここでみんなで暮らしてだんだ。みんなっていうのは、僕みたいにここに入院していた人の事だよ。」
そう言って昔のことについて青年は話し始めた。