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一話

これからよろしくお願いします。

御坂涼夜。

これが本作の主役に位置するものの名前である。変哲も無い普通の名前というよりはホストにいても不思議じゃないというかむしろその中にしか存在しないと言われても否定できないほどかっこいい名前である。近年、失敬。数年前に少しだけワイドショーを賑わせ時に芸人のネタに使われるキラキラネームとは違う。キラキラネームとは高橋王でたかはしキングなどその辺りであろう。そしてホストとキラキラと普通で大きく分けられる名前界に置いて大多数の国民がホストに票を入れるであろうこの名前の持ち主の風貌について諸君も少しは気になってくれた頃であろう。なあに君達はめちゃくちゃイケメンか名前のステータス全てをネタにつぎ込めるような男であることを期待しているであろう。まあその発想も間違いではない。

正解は顔をマスクでほとんど隠し、伸ばしきった前髪で目の前に生い茂る密林の如き漆黒の間から光を受ける、そう不審者である。勿論、これは比喩と思ってくれて構わない。だいたい今時、黒のパーカーとマスクとサングラスと、帽子を被っている奴はただの変質者であり、本当に罪を犯すのはいたってシンプルな服装でパッと見たくらいでは判断のしようもないほど普通なことくらい小学生でも知っている。

少し脱線してしまったようだ。彼の話に戻そう。彼、御坂はごく普通の私立高校に通う生徒である。まあただのつまらない一般人なら話を作ることはできないことは諸君らも存じ上げているであろうから先の発言は否定しよう。普通ではない。

私のような凡才には森見登美彦先生のようにただのモテない学生を面白おかしく描く技術はないし、当然その分は登場人物の非凡さで私の平凡を上回らなければならない訳だ。

え?時間切れ?これから私が宇宙のなんたらこうたらを実に意味ありげに話して読者の時間を奪おうとしていたのに?仕方がない。ではそろそろ前座は終わりとしよう。


夏は暑い。これは我々、日本人の話である。きっと夏が寒い国もあるのだ。オーストラリアやらニュージーランドやらなどなど南半球には多々あることだろう。そんなことを考えていると春の心地よいそよ風に吹かれたくなるのは仕方のないことだ。

私の理想とする誰にも構われない学生生活を手に入れることに尽力したこの3ヶ月でクラス内の構図もほぼ確定した。いくつかのグループが出来たし、勿論、ぼっちのような生徒も数名いる。だがここにドラマは生まれない。何故なら学園ドラマや小説のようにいじめが生じるほどの差ではないし、グループと言ってもそこに拘束性はほとんどないように外野からは見える。外野とぼっちを兼ね備えたハイブリッドが窓際の一番後ろの席で本を読んでいる僕のことだ。目立たないようにという目標を掲げ、それに向けて努力した結果は成功だった。努力と言っても入学式からずっとマスクを付けること。そして若干目つきを鋭くすることだった。そして数回あった会話チャンスをトイレだとかで回避すればあっという間にボッチ帝国の完成だった。人にとって第一印称は大きなものであり、この人は笑ってるから話しやすいかも。とかこいつは目つきが悪くて感じ悪いな。などなど。たくさんのアドバンテージもハンデもそこで生まれると言っていい。そんなファーストタッチをマスクという防護壁でシャットアウトし、先延ばしになった俺と言う人間の品定めを遅らせ続けた結果、マスクそのものが俺と一体化したように感じさせたのだ。入学当初はかなり髪も平均的な長さだったがそれもここまで放置し無法地帯と化した。そんな僕について次に語るとすればやはり席についてだろう。御坂涼夜という名前は当初の名簿順で配置が決まるものではまあ真ん中あたりの無難な配置だった。勉強が好きな者、もしくは熱心な者は前過ぎず後ろ過ぎずで狙っている人もいたであろうこの席だが僕が狙っていたのは最初から窓際最後尾のみであった。席替えについては予めパターンを予測し、この決め方ならこうとシュミレートしていたがずいぶん拍子抜けであった。四十席すべてに番号が振られており、教卓の上に置かれた小さめのかごに入った番号の書かれたくじを引くだけである。この方法で席を決めると分か

ったのは席決めの前日であって、くじ制作を頼まれたのは眼鏡を掛けたいかにも真面目そうな男子クラス委員長の佐々木と身長が低めのショートヘアの女子副委員長の春日の二人だった。

ここからは回想というかたちでお送りしよう。時は二人にくじ制作が依頼された高校生活二日目の昼休みの一幕である。

「ちょっと佐々木と春日来てくれ」

この時のクラス内の構図は全く定まっておらず、かなりの生徒が十分休みなどになれば中学が一緒だったやつか部活で顔見知りだったやつ。あとは探り探りで話すクラスメイト達という感じ。

前者の二組は教室内ではなく廊下で話し込んでいた。なので三分の一くらいの生徒は廊下に出ていたし、あまり目立ちたくない俺からすれば好都合だった。

2人が作業を止め教卓に近づくと同時に俺もその近くに寄って行った。

「二人にはくじを作って欲しい。三十六までの数字を書いたやつをな。頼めるか?」

当然のように二人は頷き、先生から渡された紙を受け取っていたところに俺は声を掛けた。その時の俺はまだ風邪気味の男として認知されていたと思う。まあ三日連続でマスクを付けるなんていうのは珍しいことではないからだ。それに髪も長くなかったので好印象も悪印象も与えていなかった。

「僕も手伝うよ」

まだ入学当初で手探りの状況で相手から声を掛けてきた状況でそれを断る人間などそう多くはない。少なくとも二人は断るタイプではないと確信があった。

「おっ。確か御坂だったな。お前いいやつだな」

担任は一瞬俺の苗字について考え込んだ様子だったが間違えることなく正解を導き出した。

「いえいえ。そんなことは」

僕がそう言うと担任は謙遜するなよと言って教室を去って行った。 

放課後までに各自が先生から貰った紙でくじを作って佐々木に渡すことになっていた。俺はさりげなく後半十二個のくじを作ることに仕向けると、四十番のくじは作らなかった。彼らや担任がくじをチェックする可能性も考えたがそれでも抜いていた方が得になると踏んだのだ。

くじを誰から引くことになるかも分からないし、引かれてしまうことも十分考えられることと、もし俺の想定する廊下側最前列が一番からなる順番が異なるかもしくは先生がその場でランダムに席に番号をふることも懸念したうえでのことである。

四十番のくじが引かれてしまった場合は白紙の紙を四十番にすればいいだけだし、ランダムになろうとその数字を記入するだけだからである。間違って同じ数字を書いていたという体に恐らくはなるし、そうなった場合、じゃんけんになることが考えられるがじゃんけんは絶対に負けない根拠があった。というか方法があった。

翌日の朝学活の時に急遽席替えをすることになり、方法は廊下側最前列を一とし、縦に数字を数えて最終的に俺の狙う席が四十番だった。チェックされることはなかったようだ。

俺はくじを引く際、袖から四十番の紙を出し、それを引いたというオチである。

こうして完全に仕組まれたくじ引きは幕を閉じる。

とまあこんな感じで手に入れた念願の席だったがここは最高だった。隣が物静かそうな女子生徒で俺に話しかけてはこないことも幸運だったし、机の上に堂々と単行本を置いて読書してもばれないことなどいいこと尽くしだった。俺は授業日数を稼ぐ鬼と化した。


彼、すなわちホストネームは諸君らの存在を認知してはいないし、そもそも彼が諸君らを知ってしまったら私のいる意味がないというものだ。なのでいくつか私の方から君たちの質問を想定し、それに答えよう。

一人クエスチョンとでも名付けようか。 

一 御坂は何であんななの? 

あんなという抽象的な語に込めた意味は大きい。それにはいくつか理由があるが一つだけ当たり障りのない解を一つ提示するとするなら彼は読書が好きであり、家ではそれをする暇も気分もない。家に帰れば彼にはやるべきことがあるのだ。天より授かった神が命じれば二日の断食もいとわないようなミッションが。というのは私のでまかせだが。とにかくあるのだ。

二 頭はいいの?

いい質問だ。これはこの世界の設定を説明するのに好都合だ。彼が通うのは都内の中高一貫校である。分け山より高く海より深いようで実はチリ紙のように薄っぺらい理由があったりなかったりで校名は明かせないが進学校と呼ばれる層には入るなかなか優秀な学び舎である。ここの特徴として一芸に秀でているものを取る傾向がある。小学時代に全国優勝チームのエースストライカーやテレビに取り上げられたこともある期待の書道家などなどあげればきりがない。基本的にエスカレーター式で中学から高校と上がっていくわけだが、勿論、外部入学もあるため中学時と比べると三クラスほど人口が増す仕組みだ。ちなみに彼も外部入学で入ったものの一人だ。まあ僕の場合は普通にテストを受けて入ったが。それに在学生徒と外部入学の生徒の溝が深まるように入学十日目にして大掛かりな二泊三日の京都旅行があり外部入学の生徒と在学の生徒が同じ班にならなければならないルールなどあり大部分の生徒はそこで仲が深まると言うわけだ。この時の話もいずれ彼の回想で出るだろう。そして簡潔に問いに答えを返そう。彼は頭が良い!

さあ二つの質問を処理したところで今日は終わろう。








まずは投稿しっかりします。

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