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第8話 子爵の過去

「ノバリスト家は代々薬師として生活している家系だ」

「薬師とは?」

「薬草や木の実を調合して薬として民に売る職業さ」

なるほど、前世でいう薬剤師みたいなものか


「だが、今となっては薬は全く売れない。患者は皆、薬じゃなく治癒魔法に頼り過ぎているからな」

「無属性の部類に入るあの治癒魔法ですか?」

「そうだ、いかなる怪我や病もあっという間に治せるんだからな。だが、私はほとんど魔力がなく治癒魔法などは使えない。君は使ったことはあるかい?」

「いえ、一度もありません」

実際、この世界に転生して此の方怪我や病気は一度もなく治癒魔法を使ったことはない。たとえけがをしたとしても治癒魔法を使おうとは思わない。なんだか胡散臭い感じがする


「そうか。話を戻すが、私には婚約者がいたんだ」

「その婚約者の方は今どうされているのですか?」

「・・・5年前に亡くなった、病でね」

「し、失礼なことを聞いてしまいました」

「・・・いいんだ、ここで話しておいた方が私としても気が楽になる。その時の私は薬師になったばかりだった。彼女の両親や医者は薬を使わず治癒魔法を使えと私にうるさく言ってきたんだが、彼女は私の薬が安全と治癒魔法の使用を断った。その言葉は今でも鮮明に覚えている。どれだけ嬉しかったことか。だが、その時点では薬はもう効かなかった」

「・・・末期ですか」

「へぇ、そんな言葉も知っていたんだね」

前世の知識ですけどねと言えばまずいから

「・・・まあ」

とごまかす

「そのせいで、彼女は帰らぬ人となりご両親からもこの役立たず、二度と我々に近づくなと罵られ、挙句には“治癒魔法の使い方も知らない無能な薬師”のレッテルを貼られた。あの時治癒魔法を使うべきだと彼女に説得すればこんなことにはならなかったとずっと罪悪感に苛まれた。」

「・・・」

「ああ、誤解しないでくれ。その罪悪感を晴らすために彼らを見返してやろうとは思っていない。私がここにいるのは去っていった薬師たちの想いに応えているだけだ」

「想いですか」

「そう、3年前までは私を含めて5人の薬師がいたんだがそのほとんどが70を過ぎたベテランばかり。体力的にも続けるのは難しいと判断して薬師をやめていった。結局、この国での薬師は私一人だ。だが、彼らはやめる前に私に“薬師がいなくなろうとも薬草や木の実の効果を後世に伝えてほしい”といったんだ。だからこそ、私は今ここにいる」

「それで3年もギルドに依頼を続けた」

「ああ。しかし、誰も受けてくれなかった。事情はマスターから聞いてるはずだ。だが、私は絶対にあきらめない。彼らの思いを託している限りは」

そう言い終えると、子爵は一息ついて


「長話をしてしまったな。すまない」

「謝る必要はありません。お話を聞けて何よりです・・・」

「ん?なんだか、浮かない顔をしているがどうかしたか?」

「あ、いえ。ただ、子爵は貴族ですよね?」

「そうだが?」

「なら、使用人の姿があってもおかしくないのでは?」

「・・・・・・」

そう、この家に訪れた時の違和感

子爵の家なのに使用人の姿がどこにもない


「ああ、婚約者が亡くなった話で続きがあるんだ。その婚約者は国王陛下の使用人の娘だ」

「・・・へっ?」

「ノバリスト家に仕えていた使用人たちは彼らの親戚にあたる。あの事件が起きてから、国王陛下の逆鱗に触れ私に仕えることを禁じられる王命が下された。だから、この家には私一人しかいない」

「ご両親は?」

「・・・私の両親は2年前に私に子爵を譲ってからは別荘で暮らしてる」

「そうですか」




「さて、採取の話だったね」

ここまでで1時間ちょっと費やした

「これが採取に使う籠だ」

子爵から渡された籠は太い木の枝で編まれた大きめの籠だ。持ってみたが意外と軽い

「これに、薬草を摘んできてくれ。といっても、どれも森のどこかに自生しているからさすがに1日で全部を採取するのは難しい。なので、2~3日を目安にした方がいいだろう。もちろん、食事や泊まるところも私の家でだ」

「そんな・・・、気を使わなくても」

「これぐらいはさせてくれ」

「・・・では、お言葉に甘えて」

「夕暮れ時になったら戻るといい。夜になったら迷い込んでしまうぞ」

「はい」


今回採取する薬草は、ドクダミ、アオダモ、オオバコ、カモミール、クコの実の5つ

色や形は覚えているから探しやすいと思う


森に入ると、草木がうっそうと生い茂る

子爵の言ってた通りだ


それと、森に入った瞬間から何かの気配を感じる

しかし、魔物らしい気配ではない


それを気にしつつ草木を分けて探索していたら、目の前に小さな白い光が現れた

空中をフワフワと浮かんでいる

蛍か何かかと思い手に取ると、その光はさらに強くなりあたりがまぶしくなる


光は収まり、目を開けるとそこには手のひらサイズほどの女の子

いや、背中に羽が生えている女の子がいる


・・・つまり、妖精か?

どうも、茂美坂 時治です

もうすこし重い話にしようとも考えていたんですが、それだと話がより重くなると思ったのでこういった話にしました。


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