第5話 警備局にて
サイロン村から出発して10日あまり、森の中を抜け出して平たんな道が続き
「リーヴェル、王都が見えてきたぞ。」
「あれが、王都ジェティス。」
馬車から顔を出して見ると、中世ヨーロッパを思わせるような城があってその周りをかなり高い城壁で守られている。まさに、鉄壁要塞って感じだ。
その中に、父さんが働いている警備局や僕がこれから入る冒険者ギルドがある。
どんなのか、楽しみだ。
王都に入る前に、検問が行われる。
「カヴェリア・ジェスナーさん、警備局の方ですね。で、そちらの赤髪の子は?」
「俺の息子のリーヴェルだ。これから冒険者ギルドに向かうところだ。」
「こんな小っちゃい息子さんがですか?」
とくすくす笑っている門番
「言っておくが、こいつは既に成人だ。」
「嘘でしょ!?てっきり、成人していないのかと。」
「いろいろと失礼な方ですね。そんなに僕の容姿を見ておかしいですか?」
あまりにも無礼だから殴りたいと思ったが、ここは何とか堪える
「・・・いや、これは失礼。男でこれほど身長が低いのは珍しいので。」
「そりゃそうでしょうね」
と門番を睨みつける。
「そんな顔しないでください。今後、気を付けます。」
ならいいですと言って、検問は終わった。
「初っ端からお前の容姿を見て笑われたな。」
「ていうか、父さんも笑ってた。」
「すまん。こうなることは予想していたが、実際見るとな・・・。どうしても。」
「もういい。で、冒険者ギルドはどこにいけばある?」
「いや、まずは警備局に行く。」
「何で?」
「冒険者ギルドは、警備局の管轄なんだ。冒険者同士の争いやいざこざなどが起きた時に迅速に対応するためにな。まずは、ギルド入所申請書をもらう必要がある。書き方は、警備局に着いてから教える」
馬車に揺られて5分ほどで警備局に着いた。赤レンガが美しい建物で、しかも広い。
中に入って受付の女性が父さんの顔を見るや
「あら、カヴェリアさん。おかえりなさい。」
「おう、シーナ。局長はいるかい?」
「すみません、今は出かけておりましてもう少しで戻られると思います。あの、そちらの可愛い女の子は?」
女性に女の子と呼ばれると心臓に矢が刺さったようにズドンとショックを受けた。
「・・・フッ、どうせそう言われるだろうと覚悟していたんだけどな・・・」
「・・・あの、もしかして・・・」
「ああ、こいつは男だ。俺の息子のリーヴェルだ。」
「こ、こここ、これは大っ変失礼な発言をしてしまいました。ええっと・・・、リーヴェル・・・君?」
「・・・はい、何でしょうか・・・?」
低い声で振り返る。シーナという女性はおどおどしながらこちらを見ている。
2,3度深呼吸してから、僕に近づき優しく抱きしめる。
「さっきはごめんね、本当に女の子と思っちゃったから。」
「・・・いえ、慣れてますので・・・」
シーナさんは僕に抱き着いたまま父さんに尋ねる
「カヴェリアさん、リーヴェル君がここに来たという事は、彼もここに入局するんですか?」
「違う。冒険者ギルドに入るんだ。」
「えっ!?リーヴェル君、冒険者になるの!!?」
「え?はっ、はい・・・。それで、ギルド入所申請書が必要と父さんから聞きまして。」
「はぁ、なぁんだ・・・。てっきり、ここに入るんだと思ってたのに・・・」
シーナさんはその後もぶつぶつ何か言っているようにも聞こえたが、
「おい、シーナ。リーヴェルをダシにして、警備局の宣伝に使おうなんて思ってないだろうな?」
「うっ・・・」
「まったく、お前の考えはバレバレなんだよ」
「・・・すみません」
この人も危ない感じがするのは気のせいか?
そんなこんなで、ギルド入所申請書に必要事項を記入し、シーナさんに確認してもらう
「はい、これで大丈夫ですね。では、ここから500m北の冒険者ギルドで登録を済ませてください。といっても、ディーレスト王国唯一なんですけどね」
「えっ、たった一つしかないんですか?」
「そうなの。もともとは各地にも何軒かはあったんだけど、冒険者同士の争いがしょっちゅうあって建物の修理ができたと思ったらまたすぐにボロボロにされるわ、警備局に摘発され挙句には冒険者資格をはく奪されてギルドを追い出されるわの悪循環が生まれて、どのギルドも壊滅したの。結局残ったのはジェティスのギルドだけ。」
話を聞いてると、冒険者はくせ者ぞろいって感じだな。
「危険は多いけど、気を付けてね」
「ご忠告ありがとうございます」
入所申請書を手にした僕は、このまま冒険者ギルドに向かう。
どうも、茂美坂 時治です。
リーヴェル、2度も容姿を間違われました。
そして、シーナという女性はこれからリーヴェルにとって重要な人物になっていきます。