第159話 破滅へのシナリオ 後編
カイゼル髭がとても似合っている男性
この人が造幣局の前局長のユリエルさん
シーナさんが、昨日会って今回の件を話したんだろう
「な、何故…、ここへ…?」
「ディゼラが不正に造幣していると聞いてね、真相を聞くためにネルドの家に来たのさ」
「ユリエル…局長…」
「久しぶりだな、ネルド。勇気をもって話してくれたな。リーヴェル様が味方に付いてくれているのもとても心強いぞ」
何の疑いもなく僕を見てくれている
男たちは、そのやり取りを見て
「なあ、俺たち…、とんでもない人を敵に回してしまったんじゃねえか…?」
「ああ…、と言ってももう手遅れだな…」
「とか言っているが、お前たち、本音は?」
「本音…?」
「ああ。そもそも、誰かが不正をやったら遅滞なく上司に報告するってのが定石だよな。それを、何故今回はしなかった?」
そう、仕事の基本はホウ・レン・ソウ
どれかが欠ければ、物事が遅滞されて、大変な方向へ向いてしまう
それこそ、賠償責任問題などに発展し、企業の信頼などはがた落ちする
でも、今回は少し違う
彼らは、報告しようにも報告できない何かしらの事情を抱えていたと考えるのがベターだ
「すみません、俺たち、エティエンに口止めされてるんです」
「そうか、シーナさんが話してくれた通りだな」
「驚かないんですね…」
「状況が状況だからな。ただ、こればかりは見過ごせない。お前たちに良心があるなら、俺やリーヴェル様たちに力を貸してくれ」
「「「「「はい!!」」」」」
すごい
あっという間に彼らを仲間に引き込んだ
この人の影響力は素晴らしい
でも、エティエンを追い詰めるための証拠は不十分
このまま乗り込んだとしても、黙秘を続ける可能性も否定できない
「…あの、リーヴェル様、昨日と言い今日と言い、あなたに失礼な態度をとってしまったことをお許しください」
「俺たち、今の仕事を辞めたくないんです。なのに、エティエンは無茶な要求ばかりしてくるんです…」
「本当はこんなことはしたくなかった…」
彼らは、僕に対して謝罪してきたけど、あまりにも綺麗すぎる理由だ
でも、目は一切泳いでなかった
「リーヴェル様、俺からもこいつらを助けてやってください。見ての通り、肉体的にも精神的にもボロボロの状態です。どうか、よろしくお願いします」
ユリエルさんが頭を下げる
この人たちを信頼しての言葉だ
ただ、犯罪行為にあたるから償ってもらう必要もある
まずは、エティエンを破滅へと追い込み、今の局長の不正を止めなければ
となると、また彼らにお願いするか
「す、すごい…、神獣を見るのは初めて」
「威圧感が半端じゃないね…」
「リーヴェルさんって、本当に強い人なんだ…」
ネルド家はフェンリルや白虎を見て感心していた
「お嬢さん、よかったらあっしの背に乗っても構いませんぜ」
「いいの!?」
「はいな!主は心の広い持ち主なんでさぁ」
「うん、遠慮せずに乗ってみて」
「わあ!フッカフカだ!」
「ホントだ!一生乗っていたい!」
アンナちゃんとデリアちゃんはすっかり虜になっていた
でも、仕事をやってもらわないとな…
ずっとこのままにしておきたいけど
「主、さっき話されていた通りの行動をとればいいんですね?」
「うん。僕やネルドさんだったらすぐに怪しまれる。でも、お前たちは犬や猫に化けれるし尾行するには最適だと思うんだ。ちょっと失礼な言い方になるかもね…」
「何言ってるんだ!?主の役に立つためなら、そんな言葉なんざ不必要だぜ!」
「マックス…」
彼らもまた、心の広い持ち主で、頼もしい存在だ
「それじゃ、行くとしますか」
タイシの掛け声で可愛い犬や猫に変身
「ふわぁ~…、この姿でも可愛い」
「ペットにした~い!」
はは…、メロメロになってるな…
この件が片付いたら、たまには顔を出してもいいような気もする
「二人とも、その辺にしなさい。リーヴェル様も私たちの事を心配しているのよ」
「「はい…」」
さすがは母親だな
エティエンを尾行し始めたのは、それから2時間ほど経ったころ
『主、標的の捕捉できやした』
「オッケー。それじゃ、頼んだよ」
念話越しでエティエンが造幣局から出てきたことが報告された
さて、その間に僕らも行動するとしますか
どうも、茂美坂 時治です
今回のお話のキーパーソン登場です




