第103話 王子の憂鬱
「・・・う・・・ん」
太陽の光で目が覚めた
もう朝なのか・・・
窓を見ると、日はかなり高い
つまり、昼頃だ
かなりの時間寝ていたのか
「ムニャ・・・、ベル・・・君」
「ベルく~ん・・・」
寝言・・・だよね?
シーナさんとジュリーに両腕を挟まれている
あれ?アリアさんは?
そういえば、頭の上にぬくもりが・・・
顔を上げると
ムニュっと柔らかい感触が
って、何この状況!!?
二人はともかく、アリアさんなんて場所で寝てるんだよ!?
とにかく、起き上がろう!
でも、二人の力は思った以上に強い
離そうと思えば、余計に力を掛けてくる
ん?
もしかして・・・
ちょっと手を動かしながら
二人の腹に届いた
そして
コチョコチョコチョコチョ・・・
「キャァ、くすぐったい!!」
「ヒヒヒ、や、やめて・・・」
あまりのくすぐったさに笑う二人
「二人とも、起きた?」
「ちょっと、何するのよベル君?」
「せっかくベル君の匂いを堪能していたのに」
「匂いって、ジュリー。僕、昨日風呂に入ってないから汗臭いはずだよ?」
「そんなことないわ。とってもいい匂いよ。ねえ、シーナ?」
「ええ。でも、せっかくならベル君と風呂に入りたかったわ」
皆は風呂に入ったのか・・・
というか、この二人匂いフェチなのか?
「そうだ、今からみんなで風呂に入りに行きましょう」
「いいわね、ベル君の背中流してやりたいわ」
何か嫌な予感がするのは気のせいか?
「それはやめておけ」
聞き覚えのある声
部屋の入口に立っていたガティッシュ王子がいる
「お、王子・・・。お、おはようございます」
「おはようといっても、もう正午すぎたけどな。それより、リーヴェル。お前風呂に入ってないんだろ?早く入ってこい」
「え?私たちは?」
「君たちは昨日入ったんだろ?男のリーヴェルに何かエッチな事でもしたいって思ってたんだろ?」
「そ、そそそ・・・、そんなことは・・・」
「焦るってことは図星だな。ったく、リーヴェルも少しは自重しろ」
自重はしてますけど、この二人の勢いが凄すぎるんです
王子のご厚意に甘えて、風呂に入ることにした
風呂は公爵家に負けないくらいの広さだ
王族や貴族となるとこういうところにも金をかけてるんだなって改めて実感した
20分ほどで風呂から上がる
「もう入ったのか?烏の行水だな」
部屋に戻ると、ガティッシュ王子だけだった
「他の三人は?」
「あの人たちには身支度をするように言ってきた。君と少し話をしたくてね」
要するに僕が戻ってきたら二人にしてほしいという事か
「それで、話とは?」
「ヴァリアル国王から聞いたが、君はザイドルス公爵の屋敷で証拠が燃やされているのを食い止めたそうだね」
「あ・・・」
「別に責めるつもりなんてない。その証拠を君が持っているのかと確認したいだけだ」
「はい、ここに全部」
収納魔法を出した時
「収納魔法が使えるのか?」
「はい・・・」
「便利なものだね。でも、あまり人前で使わない方がいいと思う。過去に、いくつもの冒険者パーティーで掛け持ちしていた冒険者が収納魔法を使えたため、ひっきりなしに呼び出されて休む間もなくまた次の冒険者パーティーの元へ駆けつける。そういった無理がたたって、帰らぬ人となったという事例もあるから用心したほうがいい」
「ご忠告痛み入ります」
そして、証拠品を全て部屋に出す
「こ、こんなに大量にか!?」
膨大な量に王子も絶句
「一部だけ見させていただきましたが、公爵とグフカ騎士団長は、盗賊団の頭とつながっていました。罪のない子供たちを奴隷商に引き渡し、その金は全て私腹を肥やすために蓄えていたと推測しています」
「・・・そうか、それを伝えてくれるだけでもありがたい。これは二日後にヴァリアル国王と父上、アースラー王国の貴族たちと会談の時に見せたい。預かってもいいか?」
「もちろんです、ダメなんて言うはずがありません」
「ありがとう」
そう言い終えると、王子の顔はどこかモヤモヤした感じだ
何か言いたいことがあるのかな?
「リーヴェル、もう一つ聞いていいか?」
「はい、何でも」
「・・・君は、どうして強いんだ?」
「強い・・・、それは魔法でという事ですか?」
「それもあるが、俺が一番聞きたいのは心が強い秘訣は何かだ。あんな恐ろしい魔物にもどうして戦えたんだ?」
予想外な質問だったが
僕は不思議とすぐに答えた
「僕だって、あの魔物は怖いと思っていましたよ」
「・・・え?」
「勝てるのか、魔法や剣で通用するのかと不安でした。でも、戦いの中色々と模索したことで、勝てたんです。初めから勝つ自信なんてありませんでした」
「それが何故、君の自信につながったんだ?」
「自分を信じたからです」
「自分を・・・。でも、俺は君に頼りっぱなしだ。俺は自分を信じれるかどうか・・・」
「王子、僕の真似をしなくてもいいんです。王子は王子らしい行動を示せばいいんです。それが、きっと自分を信じることにつながるんです」
「俺らしい行動・・・」
僕は王子の肩に手をのせる
「少しずつ、自分を変えていきましょう。誰だって不安はあります。その不安を自信に変えるんです。王子にはその力があるはずです」
不安を自信に変える・・・か
「君と話していると、少し気持ちが楽になったよ」
緊張が解けたように顔が笑顔になった
その後、パーティーメンバーたちと協力して証拠品を全て国王に献上した
国王も驚いた顔をしていた
これで王子からの依頼は達成
あとの事は、国王や王子に委ねよう
どうも、茂美坂 時治です
ハーレム状態羨ましい




