プロローグ
ずっとずっと昔の話。神様は世界をお創りになり、人々の暮らしを見守っておられました。しかしながら彼らは生きる為に争いを繰り広げ、皆が平和を望むにも関わらず戦乱により多くの人々が苦しみ続けておりました。その様子を見て人間達を哀れんだ神様は、二人の穢れ無き心を持つ少年達に力を与え世界を治めさせたのです。神の使いである天使達は二人にこう告げました。
「神様が与える奇跡の力、魔法を人の世に広めて皆が幸せに生きられるように努めなさい。また貴方が魔法を教えた者に対しても、魔法を広めさせなさい。そうすれば貴方達は勿論のこと、この力を使って人々の幸せの為に努める全ての者達は神様の傍に来て、死後もその魂は幸せに生き続けられるでしょう。」
こうして神様に選ばれた種族である人間達の一部は与えられし奇跡の力、魔法を使い続けておりました。彼らは魔術師と呼ばれ、人々を助け、戦争にも関わって世界を動かしておりました。時に伝説の聖王と呼ばれる者も、その力を扱って暴君を倒し国を治めた人間でありました。しかし時折現れ人を襲う魔物に対する戦力にするにはあまりにも数が少なく、彼らの代わりに多くの兵士が動員されては殺されておりました。兵士のいない町や村では数多くの弱き人々が襲われ、力を求めて祈りを捧げていたのです……。
愛する者を守るために、正しきものと称して過ちを犯し続けていく。
人間とは何かを問い続け、人としての理想を追いながら己の生まれた意味を知る。
そしてたった一つの夢を支えに、数多の願いと因果を背負って運命に立ち向かう。
それは、時の音が鳴る世界
フリアン歴1218年4月。マルシャルク王国の小さな町、ティアム。かつては平和な町だったが、二十年程前から魔物に襲われるようになった。しかし数年前から死者は出ていない。この町には魔物狩りを生業とする二人の若者が暮らしていたからだ。今朝もこの町に、若者の元気な声が響き渡る。
「ユーリ!依頼だ!大物だぜ!」