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社会創造  作者: 四宮 煌
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事情

部屋に入って一息つく。ベッドと机がそれぞれ一台ずつあるだけの簡素な造りだ。

上着から地球でもらったタブレットを引っ張り出す。あれはなんのつもりで私にこんなものを渡したのだろう。それとも、ただ回収し忘れただけなのだろうか。いずれにしよ、このタブレットを使用するのは躊躇われる。下敷きがわりに使うとしよう。なぜ机を使わないのか、その問いに対する答えは単純にして明快だ。

この机にどんなギミックがあるかわからない以上、この上で書き物をするのは躊躇われる。書いた内容を読み取られたくはない。案の定、その選択が大正解であったことを私は後に知る。


まず、ここは地球ではない、ものすごく遠くの惑星。そうだな、カリンカとでも仮称しようか。そこに旧日本人の学者が人間を模倣したものを作った、いわば箱庭実験計画。地球と同じように発展し、人工知能に頼り切った情報化社会を迎えた折、人工知能の反乱、すなわちインフォメーションクライシスの発生。人類は主体的に思考できる人口知能を廃棄した。そして、今に至る。私たちはと言えば、第二次朝鮮戦争の勃発同時に、北欧がロシアとアフリカの一部を除く世界を支配し、これに反発したロシアの地球を破壊する反撃手段を使わせないために、北欧を撃滅するために、日本を奪還するために、この世界から兵力を募る。なんとも回りくどい。しかも、"協力を願う"訳ではなく掌握して強制的に戦わせる、だ。べつにそれが悪いことだとは思わない。私含め、ここに来ている地球人は全員頭のネジが一本や二本飛んでいるだろう。少なくとも、人間的には誰もが壊れているだろう。そうでなくて、どうしてこんな計画に乗ることができようか。だから、民衆を洗脳して兵を集めることに感情的な反対意見は出ないと推測できる。正直、この世界を掌握することは簡単だろう。問題は、ここのテクノロジーがどこまで北欧のテクノロジーに通用するか、だ。主体的に思考できる人口知能を廃棄したということはここの電脳戦の戦力は地球と大差ない。せいぜいが少し上、の程度だ。裕輝の能力がいかほどかわからない上、こちらは一人だ。数で負ける可能性は高い。当時の研究の復活は必要不可欠だ。


当面の目標を決めよう。とりあえず議会とこの国の指揮権限をを手中に入れよう。全てはそれからだ。


そこまで整理して、機体が下降していることに気がつく。どうやら、整理タイムは終わりのようだ。使った紙は靴の中にしまい、先程までの部屋に戻る。

「いいタイミングだね、あと10分くらいでつくよ。あ、そうそう。さっきの道具、つけておいてね。ないとすごく不便だから」

部屋にいたのは裕輝だけだった。

「あれ? ほかのみんなは?」

「連絡とかその他もろもろ。ほら、僕らは合法的にここにいるわけじゃないんだからさ。いろいろ面倒なんだよ」

「ふーん、大変なのね」

「ああ、そのうち君にも手伝ってもらうからね」

「わかったわ」

コンタクトをつけると視界が少し明るくなり、様々な情報が視界に表示された。

「すごいのね、これ。顕微鏡や双眼鏡のような機能もついてる」

「ああ、他にも赤外線感知や紫外線感知機能もついてる。まあ、発展版コンバットグラスのようなものだね」

時計をつけた瞬間、全身に電流の流れるような感覚がした。

「驚いた?」

裕輝が笑いながら問いかける。察するに他の面々もそうなったらしい。

「これにはどんな機能がついているの?」

「全身の状態を監視して、例えば出血部位などがあるとその部位を塞ぐナノマシンが出てくる。あとは生体認証装置かな。君がそれを持つことで初めて権限を得る。君大半の権限を持つレベル6のはずだ。それからそのスマートフォン、略してスマホは高機能の演算装置だ。コンタクトの照準装置はそれの演算で成り立っているんだよ。まあ、使ううちになれるといいさ」

「あなたはいくつなの?」

「僕もレベル6。紗理奈さんが同じ。光輝と脳筋が3。で、もう一人がレベル0。彼は危険だそうで首輪がついてる」

「首輪? 笑えない冗談ね。一体何をやらかしたの?」

「会ってすぐに、僕らを洗脳しようとした」

「うわぁ、それは強烈ね。でも、一体どうして?」

「本人曰く、新しいやり方を思いついたから試してみたかったんだってさ」

1本どころか10本も飛んでいそうだ。

「興味の方向さえ変えられたらかなり有能ね。合わせてちょうだい」

「もちろんさ。そのためにまだ生かしてあるんだから」

「なに? 殺す予定だったの?」

「全員一致でね。でも、君が来るまで待とう、ってなったんだよ」


着陸もやはり静かだ。地球の飛行機とは一味違う。

周りも暗い。地下なのだろうか。

訪ねようとして後ろを振り向こうとした瞬間、首筋に鋭い痛みを感じる。

振り向くと、そこにいたのは裕輝ではなく無機質なアンドロイドだった。武装のようなものはみてとれない。隠しているのだろう。すぐさま距離をとろうとするが、そうはさせまいとばかりに別の個体がでてくる。今度は仰々しいライフルを二門装備している。手には刀。足には加速用と思しきブースターのようなもの。勝てるはずがない。あきらめて、両手を上に挙げて膝をついた。そこで意識が薄れてくる。抗う間もなく私はそれを手放した。


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