俺と真と怒りとビンタ
俺の前に立って息を荒くしていたのは、真だった。
「やめたほうがいいんじゃねぇ??」
静かに真が言う。
明らかに、キレている。
完全に頭にきている。
なぜだ。真だってこんなに不器用じゃなかったはずだ。
なのに……なぜ…。
明野の力って、すげぇのかもしんない。
「……痛……。し、ん……君?」
茜が動揺している。無理も無い。
真はクラスメイトにキレたことがない。
怖い。真がキレたら怖い。
何が起こるか、分からない。
「明野が切れる前に、俺が先にキレたほうが
いいと思ってよ」
薄笑いを浮かべながら真がいった。
「お前さあ。
この前言ってたよなぁ。
陽に逆らう奴以外は絶対に絞めない。約束する。って」
「え……あ…その…」
「これってさぁ、約束破りなんじゃねぇの」
真顔に戻る。
「そのくせして何で間宮虐めてんだ? なんで美雪殴ってんだ? あ?」
胸ぐらを掴む。
怖い。俺さえ怖いと思った。
「ちょ、待ちぃ。真」
美雪が口をはさんだ。天の救いだ、と俺は思った。
真にあれ以上切れられたらとんでもないことになる。
茜の胸ぐらから真の手が離れる。
「大阪だな、やっぱ。すぐに口をはさみやがる」
「黙り。あんたには関係ないこととちゃうの?
あんたが皆本さんを殴る権利ないんよ?
それを、あんたは」
パンッッ
ビンタ。
真が顔をしかめる。
「女の子殴ってどないすんの、アホ」
「………」
真は黙ったまま引き下がった。
明野。明野美雪。
こいつの力はすごい。
今まで見てきた中で一番すごい。