ねぇ、知ってる?
「やっぱり蒼央くん、カッコイイ。」
英園 涼夏。高校2年。
好きな人がいる。
「あ、蒼央くんだぁ!おーい!」
他の女の子の声に、ニコリと笑って手を振る、サッカー部の王子様。
勇里 蒼央。
彼が、私の好きな人。
前に、少しだけお話して、それでいつの間にか好きになっていた。
まぁ、私みたいな嫌われ者に好かれても、迷惑かもしれないけど。
「ねぇ、英園さんって……」
私の苗字が聞こえた。
声のトーンからして、いい話じゃない。
悪口かな。
私はそっと、教室を出た。
悪口で傷つくわけじゃない。
もう、慣れっこだ。
口ベタで、つまらない私は、コソコソ言われても仕方ないと思う。
けどやっぱり、蒼央くんに嫌われるのは辛かった。
だから、関わらない。
眺めて、満足する。
寂しいけど、楽しい。
「ねぇ、知ってる?」
突然、私にむけての声。
ここは屋上。
誰も居ないはず。
「誰?」
キョロキョロ周りを見ると、女の子が1人、私の背後に立っていた。
「ミイだよ。」
黒のロングヘアーを縦ロールに巻いていて、目は薄い茶色。
色が白くて、お姫様みたいだった。
見知らぬ学級の制服(?)を着ていて、チェックのスカートが可愛い。
歳は私より下、中学生ぐらいだろう。
「ミイ、ちゃん?」
「うん!……それより、知ってる?恋愛探偵所。」
ミイちゃんの問に、私は小さく頷いた。
「名前だけなら、聞いたことあるよ」
“恋愛探偵所”
四人姉妹と、男女一人ずつで構成される団体。
恋愛のお手伝いをしてくれて、恋の困難を謎解きみたいに華麗に解いていく…っていう噂。
本当にいたなんて、思わなかった。
「聞いたことあるんだ。なら、どうぞ」
ミイちゃんは、可愛く微笑むと、私に名刺を渡した。
「あなた、恋してるみたいだったから」
“恋愛探偵所
No.3 蜜姫 魅衣”
「…それ、私の名刺。場所は裏面に書いてあるから、気になったらぜひ来てね!ばいばい。」
裏面には、地図がかいてある。
「ねぇ、これって……あれ?」
目を離した一瞬。
その一瞬で、ミイちゃんは消えていた。




