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人生初の食欲不振

その日、僕はいつもと同じように放課後コンビニタイムを迎えていた。

部活で汗を流しヘトヘトになった後に立ち寄るコンビニはまさに天国だ。

特に愛しているのはやっぱり肉まん。

春も終わりに差し掛かるともう秋まで食べれなくなってしまうので、今のうちにたくさん味わっておかなければならないのだ。

いつものように新作のおにぎりやスイーツが無いか念入りにチェックし、今日のお小遣い2,000円で買えるギリギリまでカゴに詰め込む。

一通りのチェックが済み、いざレジへ。

「あ、肉まん一つお願いします。」

ところがどっこい、隣のレジで同じタイミングで肉まんを買うお客さんが。

肉まんは最後の一つだった。

同時の注文で店員さんがあたふたしていたので

「あ!じゃあ僕ピザまんでいいですよ!」

と声をかけた。

ピザまんも肉まんもどっちも大好きだし帰りに違うコンビニに寄って肉まんも買おうと思っていた。

コンビニを出てピザまんにかぶりつこうとしたした、そのときだった。

「あの!さっきはありがとうございました!」

その声に振り返ると、そこにはさっき隣のレジにいたお客さんが。

「あ、いや。僕ピザまんも好きなんで。」

僕と同い年くらいだろうか、細くて可愛らしい女の子だった。

「あの!!良かったら半分どうぞ!」

彼女はそう言って肉まんを半分ちぎって僕に渡した。

突然のことで少し呆然としてしまったが、すぐに

「あ、ピザまんも半分食べますか?」

と僕のピザまんも半分ちぎった。

「え!いいんですか?」

嬉しそうな彼女にピザまんを手渡した。

「私もピザまんも好きなんです!選べなくて迷ってたんで…すっごく嬉しいです!何か得した気分!ありがとうございます!」

大きな目を細めてにっこりするその姿に、僕は今まで感じたこのない気持ちになった。

その日の僕は本当に変だった。

肉まんもピザまんもどちらも大好物なのに食べる気がしなくて、はしごするはずだったコンビニも素通りして、いつも三回はおかわりする夕食も一回もおかわりしなかった。

親は心配して熱を測ってきたが熱はなくて、ため息ばかりが口を出た。

ギイッと、きしむベッドに横になりながらいつもは感じない体の違和感に苦しんでいた。

空腹でもない、食べ過ぎで苦しいわけでもない。

なのに何でこんなに腹が辛いんだ…。

しばらく悩んでからハッと気がついた。

苦しいのは腹じゃない。

胸だった。



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