人狼
〜〜ヘイロンside〜〜
朝、俺はカラスの鳴き声を聞き目を覚ました。
そうか、朝はお前らの餌場だもんな。ここ。
俺は、腕にくっつくようにして寝ているラルナを起こさないように腕から離した。そして伸びをした後、周りを見渡した。
人間には見つかって無いみたいだな。こんな開けた場所じゃ見つかるかも知れないと思ったが、案外大丈夫だったな。さて朝食はどうするか…………
目の端にカラスが映った。
まぁ、バレなきゃあいつも嫌がらねーだろ。
俺は手早くカラスを何匹か狩り、適当に木を伐採して、爪と爪を擦り火花を起こし火をつけた。そしてカラスを綺麗に切り分け、火の近くの石の上に肉を乗せた。
あいつはちっこいし二匹ぐらいで十分だろ
俺はそう思い、それ以外のカラスを全て口に放り込んだ。
…………足りんな……まぁ、今は我慢しよう。
「もう、朝からドスンドスンなにぃ〜」
「お、姫様お目覚めですかな?」
俺は小馬鹿にするように、寝ているラルナにそう言ってやった。
「その呼び方止めてくれるかな?私には、しっかりとしたラルナって名前があるの」
ラルナはそう言って、目を擦りながらゆっくりと起きた。
「なにやってるの?」
「飯作ってんだよ」
「ヘぇ〜、竜もこうやって料理するんだ〜」
「しねーよ!」
「え?」
「お前のために作ってんの!ったく……めんどくせーなー」
「……ありがとう」
「はぁ?!」
「な、なんでもない!」
そう言ってラルナはそっぽを向いた。
本当は聞こえてんだけどな……なんかお礼されんのって嫌なんだよな……まぁ、そんなんだから俺は……
「ねぇ!!」
「あ?なんだよ」
「これ取ってよ……」
そう言ってラルナは焼いているカラスの肉を指差した。
「ああ、忘れてた。ちょっと待ってろ」
俺は指先で肉をつまみラルナに手渡した。
するとラルナは黙ったまま肉にかぶりつき始めた。
さーてと、この後巣を作る訳だけど……どこに作るか。
俺は周りをゆっくり見渡して巣をどこに作ろうか考えた。
バキッ!
「誰だ!!」
後ろから俺が伐採した木の小枝を踏み折った音がした。
まずい!ここでみつかったら噂になっちまう!
「出てこい!今素直に出てきたら見逃してやる!」
嘘だけどな……とりあえずどうする……殺すか?いやダメだろそれは。ならどうする?
「ゆ、許して!お願い!」
そう言いながら薄汚い服を着た少年が、木の後ろから両手を上げて出てきた。
こいつ人間にしちゃあ鍛えられているな……歳はラルナと同じ位か。
「ヘイロン……」
「分かってる、殺しゃしねーよ」
面倒くさくなってきたな畜生……どうする……か……ん?
ヘイロンは何かに気づきその男の後ろ側をのぞいた。
「ヒッ!」
「怖がるなっつーの!食ったりしねーから」
俺はそう言って、もう一度その少年の後ろ姿を見た。
少年のズボンからは予想通り、狼の尻尾が出てきていた。
「やっぱりな……お前、人狼だろ」
「じ、人狼?!それって人が狼になったりする奴のこと?」
「ああ。で、どうなんだ?」
「……な、なんでそれを……」
「まぁ後ろの尻尾で確信したんだか、その前に明らかにお前は人の匂いじゃない。クセーもん」
「…………」
「それに汚いし。今思ったらこの近くに人の住んでる場所ねぇじゃ…」
俺が最後まで言う前に、ラルナが俺の足の指を蹴ってきた。
「いでぇ!何すんだこのやろう!」
そう言って顔を近づけると、小声でラルナが喋りかけてきた。
「ちょっとヘイロン言い過ぎ…!彼少し泣いてるよ…!最初とは違う涙出てるよ…!」
少年の顔を見ると目の端に水が溜まっていた。
「わ、悪い悪い!そんなつもりはなかったんだ」
俺は急いで弁解したが…………
「い、いいし。僕どうせ臭いし汚いし……」
完全にいじけてしまった……
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