黒竜現る
最初はちょっと暗めな感じですが、しばらくしたら明るい感じになるのでご安心を……
それではどうぞ…
~~ラルナside~~
「ラルナ様、朝でございます。起床の時間です」
その声が聞こえて私はパッと目が覚めた。
「ええ、今行きます」
寝起きでなかなか声が出なかったが、私はなんとか返事を返した。
まだ外は暗く、虫の鳴き声が小さく響いている。
その音に耳を傾けながら私は着替えをした。
枕には私の紅い髪が何本かくっついている……
「……きたない」
私はその髪を払い落としてゴミ箱に入れた。
そして私は、部屋のドアを開け、長い廊下をスタスタと歩き食堂へと向かった。
「おはよう、ラルナ」
食堂に入ると、私の紅い髪とは似ても似つかない、黒髪の母上がそう言って私を迎えてくれた。
「おはようございます、母上」
私は、イスに腰を掛けテーブルの上に置いてある朝ご飯に目をやった。
テーブルには牛肉のステーキ、綺麗に飾られたスープとご飯があった。
朝からだと正直きついのだが、せっかく料理人さんが作ってくれたのだからしっかりと食べなくては。
それに、母上も残してはいけないと怒るだろう。
私はスプーンとフォークを取り、牛肉を切り分けご飯と共に口に運んだ。
肉は頬がとろけて落ちるほど美味しかったが、やはり朝にステーキはキツイ。
「ラルナ、昨日の話しの事覚えているわよね?」
それを言われて私は思い出した。
私は食事の手を止めて母上を見た。
「はい、私の15年目の誕生祭....」
「そう、貴方はもう15歳....立派な大人。だからそこで民への誓いをしてもらうわ」
民への誓い....それは、私が民のために王妃として永遠に光を見せて癒やします。だから民の皆も国のため…ジャダイのために私に力を下さいと言う誓いだ。
正直私はこんなのしたくない。こんなの誓いでもなんでもない。
ただ私は民が働くのを見ているだけということを宣言しているだけなのだから。
しかし、民は私を信じて働き続ける....何故なのだろうか....
「はい、わかっています」
「ならいいわ、貴方は今日....太陽が真上に上がる頃、ジャダイの民の光となるわ」
もうしかたないのだ....運命は変えられないのだから
私はこれから....いや、これからも一生甘やかされて生きていくのだろう。
外の世界を知ることなく死んでいくのだろう。そんな事を考えると涙がでそうになる。
食事が終わり私は、庭の噴水に腰をかけて外の空気を吸っていた。
外は、暑くもなく寒くもない、風もない……圧迫感だけが感じられる。
まるで自分が箱に入れられているかのような感じだ。
周囲は静かで水の音とたまに鳥のさえずりが聞こえてくる。
民の誓いでは、何を話せば良いのだろう。
ただの誕生祭ならば話す事は簡単だった。ただ感謝の気持ちを言えばいいだけだから。
しかし、民の誓いは違う…どうしようか。
そんな事を悩んでいると近くに、白い鳥が飛んできた。
「お前達は良いね....何をするのも自由で。私も自由に飛んでみたいなぁ」
小さな白い鳥は首を傾げてこちらを見ている。
「フフ、貴方にそんなこと言ったって何も変わらないのにね、何言ってるんだろう」
話し終えた後白い鳥は、どこかへ飛び去ってしまった。
飛んでいく白い鳥を見つめていると視界の端に武装した兵士が写った。
「ラルナ様、そろそろお時間です。」
「そう、早いわね」
鳥に一方的に話しているうちにもうそんな時間になってしまったのか。
結局何も話す内容を考えていなかったけど、まぁその場で考えれば良いか。
式場には、沢山の人々が来場していた。
さっきまで静かで何も感じていなかったのに、人の熱と厚いドレスのせいでとても暑く感じられた。
「貴方の為に集まったのよ。さぁ、皆に希望を与える言葉を」
「はい」
私は、ゆっくりと式団に上がり前をまっすぐ見た。
会場は拍手と喝采で更に盛り上がり始めた。
会場が静まるのを待ちながら私は何を喋るかを考えた。
そして、会場の拍手喝采が静まり始める。
私はギリギリまで考えた。そして、全ての音が止んだそのときであった。
いきなり突風が吹いたかと思うと、目の前に黒い竜が姿を表したのだった。
辺りが、何かが弾けたように一気に騒がしくなる。
恐怖に怯え叫ぶ者や、驚きに何も喋る事ができなくなっている者もいた。
「ラルナこっちへ!!早く!」
母がそう叫ぶのが聞こえた。しかし、私はその母上の言葉を聞き流した。
ただただ、私は太陽に照らされて輝く黒い竜を眺めていた。
私は、この時思っていた。
この竜は私をここから助けに来たのかも…なんて事を。
私は一歩一歩とその竜に近づいていった。
そして手を伸ばしたその瞬間、目の前の竜の口が近づいてきたかと思うと、私は口の中へと入ってしまっていた。
あっと言う暇もなく全てが終わったと思った私は、そのまま目を閉じた。
ご閲覧ありがとうございます。
これから頑張って書いて行きますのでよろしくお願いいたします。