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日常復帰

 数日の時が過ぎて退院の時が来た。それまでの間、シリウスは俺の家の飼い犬になっていた。小さいころから犬を欲しがっていた弟の優勝まさかつは喜んでいた。一方シリウスは不服そうな表情を浮かべる。

 もちろん病院で犬を飼うわけにはいかないから病院を襲撃された次の日、親父を呼んだ。シリウスを説得して何とか、家まで連れて行ってもらった。

 俺は親父と退院の手続きを済ませて、病院を出た。すると、目の前にシリウスがいた。相変わらず雪化粧の町からは浮きに浮きまくる真っ黒な姿だ。

「あれ?シリウス?どうしてここに?」

 俺はいつもの調子でシリウスに問いかけた。普通の人はシリウスの言葉は分からないと知らずに。

「あんなとこ居られるか。暇だし、窮屈だし。」

「…あんなとこって。おいおい、逃げ出してきたのか?」

 当たり前だと言うように頷いて見せる。

 その様子を訝しげに見ている人物がいた。他でもない親父だ。

「ほら、いくぞ。」

 親父が怪しがっているのを気づかずにシリウスを誘導する。

 

 数週間ぶりの我が家。前と変わらない玄関から家に入ると、前と変わらないリビングに優勝がいた。そのあとを親父とシリウスが入ってきた。相変わらず、不機嫌そうな顔だ。

「ただいま。」

「あ、兄貴。やっと帰ってきたか。」

 俺と違って、優勝はサッカー部でレギュラーだ。たしか、ポジションはサイドバック。俺より運動はできるが勉強は俺の方が上だ。ただし、背は優勝の方が高い。つまり1勝2敗。だから、俺はあまり考えないようにしている。それに兄弟の仲が悪いわけではないから、まぁいいか。

「そう言えば、シリウスはどう飼ってる?」

「ああ、家の中で。」

 案の定、シリウスを家の中で飼っていた。

「だから、あんなことを…」

 俺はシリウスの言葉を思い返した。こんな大きな犬が室内で飼えるはずがない。

「外で飼った方がいいんじゃない?」

 俺が言うと、優勝は考えてもみなかった、と言う表情で俺を見る。

犬を飼いたかったなら、そこまでしっかり考えときな。と思った。

 次の日、学校へ行く。

 いつもと同じようにごった返す生徒、教師、事務員。いつもと同じ教室かと思ったが、席替えをしていたらしく、自分の席が移動していた。しかし、もう2月。残るはあと数週間。

 教室に入るとどっと歓声が起こった。俺が戻ってきたからだ。クラスの中では地味な方だったが、どこか信頼は厚かった。しかし、俺を嫌う輩も当然いる。

 彼がそうだった。大久保孝明おおくぼたかあきだ。そして彼が言う。

「ほう、いい度胸だ。俺に殴られに来るとはな。」

 威圧的かつ挑戦的な声が頭上から降ってくる。さすが、クラス1の大男。身長188センチ、体重82キロ。学校中が恐れをなす生徒。その力は体育の教師2人がかりでしか押さえつけられないほどだ。

 その大男の右手が拳となって飛んでくる。

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