表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

千文字現代ループ

作者: 転寧々
掲載日:2026/02/05

今日見た記事からインスピレーションを受けました。

◯と◯で∞は使い古されてますが好きなモチーフです。

1000文字縛りきついけど楽しい。

「23万か、 たかが金属と石に」


質素倹約をモットーにしている彼女が欲しがった結婚指輪は、結構な値段だった。


「さっき楽しく指輪見てくれてたじゃん」


よほど高い指輪がほしかったのか、その場で俯く。


「じゃあ、4万円のは。 あれも気に入ってたし」


少しだけ無理をした笑顔で唯が言った。

彼女がそう言うなら、尊重して4万の指輪にしよう。


歩み寄ると、視界がふつりと切れた。


俺は妙な模様の天井と、薄汚れた照明を見ていた。

どこかの民家だろうか。


「唯?」


暗がりから疲れた顔つきの年老いた唯が現れる。


「何、変な顔して。 おむつ替える?」


俺は足を失っているようで、横たわったままうまく身動きがとれない。


「糖尿なんて自業自得でしょう」


おかしい。

唯は健康に気を使える家庭的な女だったのに、糖尿?


急速に年老いた俺の記憶が蘇る。


新婚なのに頻繁にため息をつく唯を見たくなくて、

俺は外食と女遊びを繰り返した。


唯は変わらずついてきてくれたが、

不健康な生活は俺の体を蝕んだ。


唯の態度は硬直していき、

体調を心配する言葉も、小言に聞こえるようになった。


絶望した俺は、人工透析をばっくれて死んだ。

死んでもまた戻るのはあの奇妙な天井だ。

体調に変化はないし、足もない。


何とかして自殺しても、

老衰で死んでも、

目を覚ますとあの天井が見えた。


唯はずっとため息をついて俺をいらつかせた。


何度死んでも、この絶望に戻ってくる。

奇妙なループを抜け出す方法はないのか。


一つ一つ必死で思い出し、一つの結論に至る。


唯は、いつも手元を見てため息をつく。


「あの時、高い指輪を買わなかったから……?」


唯は訝しげにこちらを見る。


「……指輪見てると、思い出すね。 でも値段じゃないんだよ。 覚えてたんだね」


「今から買いに行くぞ! 在庫があるかも!」


俺は慌てて指輪を買いに走った。 唯の運転で。


あの店はまだ続いていた。

位置は少々変わっていた。


「指輪をください!」


俺の視界はまたふつりと切れた。

眼の前には店から出たばかりの唯。

それに何より、足の感覚がある。


戻ってきた!


「もっと高い指輪でもいい!」


そう言ったらまだ若い唯が笑った。


「もー。 値段じゃなくてあれが気に入ったの!」


ケチった指輪はとんでもなく莫大な負債を産んでいたのだ。

この笑顔が少しでも保てるなら、23万など安いものだと思った。


「お買い上げ誠にありがとうございました」


購入すると夫婦円満になると噂の店で

店主はにこりと微笑みながら二人を見送った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ