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窓越しの絵画

作者: かなちょろ

 今日も私はいつもの喫茶店、いつもの席に座る。

 その席の窓は小さな窓が一つあるだけだ。

 だからこそ2階の窓から見える景色は外の姿をまるで絵画のように切り取った景観となる。


 まだ肌寒いこの季節はホットのダージリンティー、期間限定の桜のマフィンを注文。

 そして小さめな窓の外を眺める。

 半袖の人、長袖の人、あの人は花粉症かな? マスクをしている人も多い。

 そして窓の近くにある桜の木や周りの花壇には春の始まりを告げるように芽吹き始めている。

 一つの絵画のように見えるこの窓は私のお気に入り。

 注文した物が届くとファーストフラッシュのダージリンを一口……。

 香りが素晴らしく爽やかな渋みに桜のマフィンの甘さがとても合う。

 

 桜が満開の夜、外の街灯がふわりと灯りをともす時間は帰宅の人も多く街灯が人を照らす。

 そして私はコーヒーを飲みながら窓から夜桜と共に眺めている。


 日差しも強く気温も上がる季節、喫茶店の中はエアコンで涼しくなっている。

 今日も私はいつもの席で冷たいローズヒップティーを飲みながら窓を眺める。

 桜の花は既に散って葉桜と変わり、人は薄手の半袖、日傘を差している人が多い。

 石畳みの道が蜃気楼のように歪む姿を眺めて冷たいローズヒップティーを一口……。

 ハチミツで甘さを加えた薔薇は私に夏の太陽でやられた肌に美白を与えてくれる。

 夏のオアシスのような喫茶店から帰りたく無い気持ちを抑えながら灼熱の太陽に焼かれないように日傘を差して帰って行く。


 今日は曇りでいくらか涼しく喫茶店の中も少し温度調整しているようだ。

 それでも喫茶店に入ったばかりなのでお店特製のレモネードを注文する。

 それとレアチーズケーキのセットだ。

 キンキンに冷えたレモネードの程よい酸味が喉を通って行くのがわかる。

 レアチーズケーキもなめらかな食感が美味しい。

 汗も引き始めた頃、窓の外を眺める。


 さっきより空がどんよりとして来て歩いている人はほとんどいない。

 そして窓にポツンと雨粒が当たり始めた。

 雨が降り始めると外には人の姿は無くなり雨音だけが聞こえる。

 石畳みも潤いを取り戻したようにツヤをだして雨を受け始めた。

 その景色を見ているだけで涼しくなって来たので、レモネードを飲み終わった後は、カフェ・ラテを注文してラテアートを楽しみながら雨の降る窓を見つめていた。


 やっと暑さが引き始めた季節、喫茶店もハロウィンの装飾で賑やかになっている。

 今回の注文はアールグレーとパンプキンケーキ。

 ダージリンを使用したアールグレイはストレートでいただき、パンプキンケーキの優しいかぼちゃの甘味が美味しい。

 窓の外を眺めると桜の葉は散り、他の街路樹も葉を落として少し寂しさを感じる。

 道を歩く人も少し厚着をして歩いている。


 ハロウィンが終われば直ぐに季節も変わり、すっかり葉が落ちている桜の木にも電飾が灯され窓から見える景色は一変する。

 こんな時に注文するのはカプチーノとロールケーキ。 カプチーノはカフェ・ラテよりエスプレッソの苦味を感じやすいのでケーキは少し甘めよある物をチョイス。

 唇にお髭をつけながら飲むカプチーノと少し甘いロールケーキは止まらなくなりそう。

 窓の外もすっかり電飾で飾り付けがされているので、雨上がりの石畳みの道からは飾られている電飾が写っている。

 さまざまな電飾の色で飾られる窓はいつになく綺麗に見えた。


 外は降り積もる雪景色。

 私はホットコーヒーで体を温める。

 ブラックで飲んでいるコーヒーにはチョコレートマフィンが合う。

 私のコーヒーは黒、窓の外は白一色でずっと眺めていると雪をコーヒーに入れてみたくなる。

 そんな窓から眺める雪は石畳みの道を隠し、桜の木にも積もり街の音を吸収して静寂に変える。

 

 そしてまた窓から見える風景は変わっていく。

 同じ場所、同じ窓でも時間と共に移り変わる景色は2度と同じ景色にはならない。

 その景色を求めて私はまた今日も喫茶店に行く。

 お金に変えられない景色を求めて……。

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― 新着の感想 ―
窓に見える風景には、その日しか起きない小さなドラマが楽しめるんですね その日だけの、二度と見られないささやかなドラマが……
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