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失恋した俺は俺にだけ弱い内面を見せてくれるクラスのマドンナと同居をする――これは完璧な彼女を救うための物語  作者: 有原優


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第9話 遊園地

 その週末。俺たち二人は別々に行動し遊園地で待ち合わせることにした。

 ちなみにだが、前原さんはまだ美羅が俺たちの同居の事を知っていることは知らない。

 ただ、俺たち二人が幼馴染であることのみを知っているという形だ。

 前原さんとは現地集合、そして美羅とは最寄り駅で集合する運びになっている。

 そして、駅に着くと、美羅が「おーい」と手を振ってくる。俺はそこに行き、手を振り返す。


「それにしてもさ」じっとこちらを見てくる美羅。「まさか本当に同居してたとはね」


「そういやなんで気づいたんだよ」

「怪しかったじゃん。だから後をつけてみたの」

「ああ、やっぱりそうなのか」


 俺はまたため息をつく。ばれない方がいいというのは当然の事だが、まだ美羅で良かった。

 美羅ならば、周りに漏らすなんてことたぶん、恐らくしてこないだろうし。


「それにしても、それに気づいたからってまさか遊園地に誘うとは思ってなかったけどな」

「それはさ、楽しそうだなと思って」


 そう言うと美羅は「うへへ」と笑って見せた。

 そう言えば前原さんと美羅はそこまで仲がいいという訳ではなかったはずだ。

 クラスメイトとして仲がいいけど、友達とまで行くわけではない。

 本当に俺のために組んだのかな、なんて思ってくる。


「あ、あと。前原さんに言わないでね。その方が面白いから」

「知ってるよ」


 お前がそう言うやつだって。

 多分、それを楽しみたくて今日誘ったのだろう。

 ならばなぜ、俺に知ってるという事を言ったのだろうか。

 まあ、もう俺の事を楽にしてやろうとでも思ったのだろうか。


「それにしてもさ、最近どんな感じ、家出の前原さんってどう? 家で一緒にいててたのしい?」

「あのなあ、勘違いしているかもしれねえが、お前が思うような出来事は起きてねえぞ」

「ええ!?」


 ええ!?なんて言われてもな。


「当たり前だろ。一緒にいる時はご飯の時だけだ」

「え? じゃあ、ラッキースケベなんてのは?」

「ねえよ」

「洗面所で鉢合わせたりとかは?」

「無い」

「リビングにいったら下着姿の前原さんにあったとかは?」

「ない」

「えーー!?」


 こいつ、本当に女子か?

 そう思うくらいぐいぐいと行きやがる。しかも主にエロ関係で。


「本当に何もねえよ」


 少なくとも美羅が思うようなことは。


「じゃあじゃあ、寝間着姿の前原さんを見て、エロいと思ったことは?」

「ない、いやある」

「え、変態?」

「少なくとも訊いてくるお前の方が変態だと思うぞ」


 それは全男子が思う事だろう。


「なら、いつか前原さん襲われちゃうね」

「そんな日は永遠に来ないから安心してくれ」


 そう俺が言うと、くすくすとまた美羅は笑う。

 全くもってよくわからない。


 俺ももう10年近くは一緒にいるはずなんだけどな。


 そして、電車に揺られ揺られること三十分。ついに目的地の遊園地に来た。


「前原さんもいろいろいじりたいよね」

「美羅、お言っておくがあまりおちょくるんじゃないぞ」


 俺ならばまだいい。しかし前原さんは繊細だ。

 変なことを言って悲しませたくない。


「分かってるよ。……やっぱり前原さんの事が」

「馬鹿を言うな。同居人の事を好きになったら終わるんだから」

「へー、好きになる可能性はあるんだー」

「もういいよ」


 俺はそう言って、ずかずかと改札へと歩いていく。まだ幸原さんへの恋を諦め切れてないのに、次の恋に移行するなどありえるわけがない。


そんな俺を「待ってよー」と言いながら俺を追いかける美羅。


 改札の向こう、そこには前原さんがいた。


「前原さん!!」


 美羅が手を振る。すると前原さんも手を振り返した・


「ごめんね、待った?」

「ううん。今来たとこ」


 そう、前原さんは微笑む。

 だけど、俺よりも三十分も前に家を出てたから、そこそこ待ったと思うが。手荷物を見ると。寄り道した形跡もないし。


 実は行きに時間つぶしにおしゃれなカフェによってきてたのかもしれないが。


「じゃあ、全員揃ったってことで行こう!!」


 美羅が元気よく言う。


「うん」「ええ」


 俺たちがそう言ってその場をたつ。


 遊園地、それは娯楽の場所だ。

 様々な遊具があり、俺たちはそこで遊ぶことが出来る。

 人気どころで言うと、コーヒーカップ、ジェットコースター、観覧車、ゴーカート、メリーゴーランドなどなどだろう。


「前原さんは、絶叫マシンとかは?」


 俺が訊く。すると前原さんは「そこまで得意じゃないわ」と答えた。


 苦手そうな顔をしているもんな。


「でも頑張る」


 いや、頑張らなくてもいいんだが。


「前原さん、今日は俺たちに気を遣わなくてもいいんだぞ。美羅がたとえそれで不機嫌になったとしても俺がなだめるから」


 不機嫌な美羅なんて今まで一度たりとも見たことはないが。


「そう、ありがとう。でも私は素の私を見せたくないの」

「損な性格だな」

「そうね。でも、失望されるよりはいいわ」


 また失望。

 でも、過去まではまだ聞ける雰囲気じゃない。


「何話してんの?」


 俺たちに向かって美羅が顔をのぞかせて来る。


「何でもない」

「何でもないわ」


 そう、俺たち二人が言うと、


「最近仲いいよね。実は付き合ってたりする?」


 美羅がそう言うからさあ大変だ。

早速いじくるんじゃねえよ。


「私は別に……」


 前原さんは顔を俯せた。


「冗談でも言うんじゃねえよ」

「ごめん」

「まだ俺の中には、幸原さんへの気持ちが残ってるからさ」

「だね」


 今も俺の心は揺れたままだ。正直言って、混乱したままだ。

 だけど、


「でも、今日はそのことを忘れてめいいっぱい楽しみたいと思ってる」

「そのためだもんね」

「最初は二人だったんじゃねえのかよ」

「細かいことは気にしないで、早く並ぼう」


 そして、美羅が向かう先は、ジェットコースターだった。

 それを見た時の前原さんの顔。

 微細な変化だが、俺にはわかった。

 恐れているのだ。


 そうかこいつは、俺と前原さんとの関係しか知らない。

 前原さんが失望されるのを恐れていることまでは知らないのか。


「うん、乗りましょ」


 そう言う前原さんに思わず突っ込みそうになった。

 正直苦手って言ってたじゃないかって。

 ああ、今までも片鱗は見せていた。しかし、今こうしてはっきりとした実害を見ることが出来ている。


 前原さんは損な性格だ。

 恐れているジェットコースターを断れないなんて。

 他にも絶叫マシンが苦手でもできるアトラクションは沢山あるのに。


 今まで友達と遊園地に行く約束をしている前原さんを幾度も見てきた。

 そのたびに、乗りたくもないジェットコースターに乗せられているのだろう。

 そしてそれは現在進行形で行われている。


 今の前原さんの気持ちを推察するのは失礼にあたるかもしれない。

 しかし、彼女は今こう思っているはずだ。

 乗りたくないと。


 俺は、前原さんを救わねばならない。

 それも、前原さんが嫌ではない方法でだ。

 考えろ考えろ。


 ……そうか。


「前原さん、それもいいけど、コーヒーカップにも乗らないか?」

「えー、なに言ってんの智也。こっち乗ろうよ」

「ごめん、久々過ぎてジェットコースター怖くなってきたからさ。乗るのは後にしたい」

「えー、乗ろうよ」

「じゃあ、あとで吐いてもいいか?」

「吐くって何を?」

「決まってるだろ」


 そう言って俺は「おええ」と吐く真似をする。


「汚い!!」

「これが嫌なら後に回すんだな」

「うへー分かったよ」


 そう言って「じゃあ、コーヒーカップ行こう」


 ようやく言ってくれた。その後、前原さんを見ると、明らかにほっとしている顔を見せていた。

 やれやれ、手間がかかる。


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