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失恋した俺は俺にだけ弱い内面を見せてくれるクラスのマドンナと同居をする――これは完璧な彼女を救うための物語  作者: 有原優


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第41話 夜

 美羅の告白を受けて俺はどうしたらいいんだろうか。

 そう、俺は部屋に戻ってから考えた。


 美羅は、別部屋が与えられ、そこで休むことになった。だいぶ無茶を言ってしまった気がするが、夢子のお父さんはそこらへんは寛容ならしい。


 ちなみに俺と夢子の部屋に入れられなかったのは、俺と美羅が同じ部屋にいて欲しくないからだろう。

 俺はベッドに寝転がる。


 今度は夢子が告白してきた。俺の考えなければならないことが増えている。

 それももう確実に。


 ああ、今だけは何も考えたくない。

 今は精神を落ち着かせたい。

 そう、思った。



「夢子、どう思う」


 俺はふときいた。

 三十分ほど仮眠を取った後だ。


 彼女は勉強をしていた。


「どう思うって……?」

「夢子の告白」

「……嫌」


 静かに、そう一言で呟いた。


「嫌か」


 確かに嫌だろう。

 嫌なのだろう。


 俺は頷いた後、


「俺はどう返事したらいいか分からねえ。急だからな」

「ええ、急だわ」

「急だよな」


 夢子は呟く。


「わたしは、告白に応えて欲しくはないわ。でも……」

「でも?」

「あなたの権利を侵害するつもりはない」


 そう言われると益々困るかもしれない。


 それが今の状況だ。


「後でもう一回美羅の所に行くか」


 そう呟く。





 それがどういう状況だ。

 夜に美羅の部屋に行ったら、そのまま部屋に連れ込まれて閉まった。

 これ、どういう状況だ。


 今俺は美羅の隣のベッドに寝ている。


「なあ、美羅。これどういう状況?」


 俺は訊いた。


「寂しくて。優しい智也なら許してくれるよね」

「あ、ああ」


 ああなんて言ってしまったが、正直今の状況を十全に理解が出来ていないから。というのが正解なんだがな。


「ねえ、昼間はごめんね」

「どうした、改まって」

「困惑したでしょ。急にあんなこと言ったから」

「確かに驚いたけど」


 確かに驚いたが。


「俺にはそれを否定するつもりなんてねえよ」


「え、てことはさ、智也受け入れてくれるの・」

「それはまた別の話だ絽」

「ええー」


 そう言ってしくしくと泣きまねをする美羅。


「美羅は俺に一緒にいて欲しいのか」

「うん。そうだよ。私は智也を独り占めしたい」


 そう言って笑みを浮かべる美羅。


「俺の困ってるポイント分かってるか?」

「なにー?」

「俺を独り占めしたい人が多いってことだよ」


 これじゃ完全にハーレムだ。

 そもそも水族館デートの時の幸原さんに関してもまだ答えは出ていない。

 緑さんに関しては、俺とは恋人関係になりたくはないが、俺と一緒にいたい欲は伝わってくるんだよな。


 あの時は緑さんと付き合えたらいいと思っていたが、今は色々と感情が迷子になりつつある。

 ハーレムみたいな関係は夢のように思えるはずなのだが、今の俺には到底そうは思えないのが本当に困り事だ。


 ハーレムが嬉しくない減少などあるのかよ。



「とりあえずさ、今日は私と寝てよ」

「寝てよって、どういう意味だ」

「え、まさかそんなふうに考えてるの? エッチ」

「いつもの調子に戻っているようで安心したよ」


 先程までの美羅は見ていられるものではなかった、それこそ落ち込み過ぎていて。


「じゃあ、私には手を出さないでくれる」

「出さねえよ」

「出さないなんて、酷い。私には価値がないんだ」

「ああ、もうややこしい」

 これ以上訳が分からなくするのは本当にやめて欲しいところだ。


「隣にいるだけだからな」


 そう言って俺は美羅の寝ころぶ布団にくるまると、


「ありがとう」


 そう、感謝された。

 今までも美羅と一緒に寝たこと(深い意味はない)は何度かある。あるが、今は美羅が俺に対する好意を抱いていると確定している状況だ。


 正直居たたまれない気持ちがある。

 美羅が軽く俺の背中に抱き着いてくる。

 俺はそれを甘んじて受け入れる。


「やっぱりさ、智也の背中って大きくて暖かいよね」

「そうか」



 なんかラブコメみたいな空気に入ってんなこれ。

 よく考えれば美羅の告白を受け入れるかどうかなんてまだ決まっていないのにこんなことをしていていいのだろうか。

 良くない気がする。

 少なくとも夢子に対する裏切り行為な気がする。


「はあ」


 俺が軽くため息をこぼすと美羅が「不満なの?」と訊く。


「私の体が不満なの? 胸もそこそこあると思うよ」

「もう、そのモード辞めてくれ」


 色々とややこしすぎる。

 俺はため息を軽く着き、


「こっちだっていっぱいいっぱいなんだよ」

「知ってる」


 そう言って美羅は笑う。


「昔はさ結構一緒に寝てなかった?」

「寝てた気がする」

「ふふ、だよねー、いつも泊ってたし」

「確かに暇があればずっと泊ってた」


 そう言って軽く微笑んだ後、


「幼馴染って不思議だよね。ずっと一緒にいるからさ、友達にしか見えなかった」

「まあ、俺もそうだよ」

「今は」

「それは今は置いてくれ」


 今そこまでは考えられない。


「まあ、それは置いといてさ。私ずっと好き嫌いの恋愛感情を覚える事が出来なかった。ただの腐れ縁だと思ってたの。幸原さんに智也が告白するってなった時も、別にいいかなんて思ってた。でも、全然よくなかった。段々と寂しくなったの。智也が別の人と付き合ったりしたら困るし、夢ちゃんと一緒に暮らすってなって夢ちゃんとも距離が縮まるし、私の立場が無くなるの。しかも私その時さ、家に居場所なかったし、段々とみんなが羨ましくなったの」

「だからここに来たのか」

「うん」


 そう言って、美羅は、俺への抱き着きをさらに強くしていく。


「智也君はどうしたら私の彼氏になってくれる?」

「分からんな」


 そもそも俺自体答えを決めかねている状況なのだ。

 如何したら、なんて言われても返事のしようがない。


「私が脱いだら彼氏になってくれる?」

「おい、何言っているんだ」


 脱がれたとて、エッチをしても、俺は嬉しくない。


「じゃあ、どうしたらあの二人に勝てるのよ」


 その言葉は涙交じりに放たれた。


「わたしだって。もうわからないんだもん」

「俺だって分からねえよ」


 そして、静寂が流れる。


 そのまま俺たちは眠りについてしまった。

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