第40話 告白
ミラは少し落ち着いてきたようで、スマホでYouTubeショートを見ていた。
ただ黙ってみているものだから、見てて少しおかしく思ってしまう。
「夢子」
「何かしら」
「ミラがなんでここに来たか分かるか? それとも……夢子が連れて来たのか?」
「わたしは住所教えてない。でも、ここは調べたら出てくる場所だから、きっと勝手に来たのよ」
「それは凄い行動力だな。ビーチの警備とかは?」
「まさか、ないわ」
なるほど。プライベートビーチとは思えない杜撰な管理だ。
だけど、そのおかげでミラが無事にここにたどり着いたわけなのだから、そこは感謝するべきだろうか。
「とりあえずミラは放っておこう。そして俺たちで遊ぼう」
「智也君って酷いのね」
「いいだろ別に」
「わたしは放っておけないわ」
「それは、気を使っての事か?」
俺がそう訊くと、夢子は押し黙る。
「別にいいんだよ。放っておけば」
「そうよね」
そして二人で泳いでいく。
ただ、脳の片隅にミラの姿がちらちらとうつるので、少し泳ぎにくい感じがした。
だけど、気にしない。泳ぎ終わってミラが落ち着いていたら、ミラがここに来た理由を聞くとしよう。
ミラも気持ちの整理が出来ていない今。無理に聞き出しに行ってミラの精神がおかしくなったら変なことになるだろう。
しかしそれにしても個々の海。人が少ないから落ち着いて泳げる。
こんな真夏日。きっと他の海水浴場などでは多くの人がいるだろう。
前原家は素晴らしいな、と思う。
だからこそ、俺も答えを出さなければならないのかな、なんて思ったりもする。
いつまでもここにいるわけにはいかない。
それに当初の計画では二泊三日の予定だし。
そしてしばらく泳いだ後、
ミラの元に戻った。
「ミラ、話せるか?」
俺が訊くと、彼女は静かにうなずく。
「わたしね、智也にはずっと言ってなかったんだけど」
そこから彼女の心の奥底からの気持ちえお知った。
ミラはずっと、親に放置され続けていた。
「オレが知ってるあの人は、お前に対してそんな事をするとは思えないんだが」
「あの日に代わってしまったの」
あの人は一体いつなのだろうか。
その答えは俺には分からない。
しかし、その次の彼女の独白で知ることが出来た。
どうやら、ミラの両親は離婚しているらしい。そんな事まったく聞いたことがないぞ。
「私の両親が喧嘩したの。私のお父さんが浮気をしていて」
なんとなくわかった気が下。
ミラのお父さんが浮気をしたことで家族が壊れたのだ。
「それから慰謝料は払われるんだけど、そこからお母さんは酒を飲みまくるようになって家事もあまりしなくなったの」
「それはいつからだ?」
「半年前」
思ったよりも最近じゃねえか。
まさかそんな事があったなんて。
「俺は全然知らなかったぞ」
「教えてなかったもん」
「教えてくれたって良かったのに」
「そんなこと言えないよ。私は明るい私でいなきゃならないんだもん」
「明るい自分」
もしかして、ミラはそう言う強迫観念に襲われているのか。
だったら俺はそれにも気づかずにいたのか。
そもそも俺はそんなにも信用されてなかったのか。
少し悲しくなってくる。
「ミラ」
俺は静かに言う。
「ミラは間違ってない。間違ってないが、もう少し早くに相談してほしかった」
「っそう……でもさ。私おバカキャラじゃん」
だからそれを自分で言うのか?
「だから言えなかったのか? 俺にも夢子にも」
ミラは静かにうなずいた。
全く、ミラというやつは。
「お前もそう言うところあるんだな」
俺がそう言うとミラは軽く笑い頷いて見せた。
「わたしだって生粋のおバカキャラじゃないもん」
「それはお前が演じてたせいだろ」
「ふふ、そうかも」
そう言ってミラは笑う。
「わたしはさ、ずるい人間かもしれない」
「それはどういう意味だ?」
「わたしはずっと、自分の気持ちに嘘をついてたかもしれない」
意味が分からない。
「わたしもおんなじなの。私も智也の事が好きかもしれない」
そう言った彼女の言葉にオレは「は?」と言ってしまった。
「わたしさ、うざかった時あったでしょ」
「まあ、確かに」
イチャイチャが非常に激しかったと気が合った。
「あれ、もしかして」
「うん、独占欲が出ちゃった」
「そう言う事かよ」
てへっみたいなテンションで言う言葉じゃない。
「うん、そう言う事」
俺の悩みの種が一つ増えてしまった……




