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失恋した俺は俺にだけ弱い内面を見せてくれるクラスのマドンナと同居をする――これは完璧な彼女を救うための物語  作者: 有原優


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第28話 告白

「美羅、何でここにいるんだよ」


 俺はそう言った。

 美羅は陰ながらそばで見ていなければならないはずだ。

 なぜ、今俺の前に出てきたのだろうか。



「えー、いいじゃん。私たちがここにいても」


 しかもだ、美羅の隣にいる夢子さんが少し申し訳なさげな顔をしている。

 きっとこの場に現れたのは、美羅に強引に連れてこられたからだろう。

 水族館は自分の意思かもしれないが、ここにいるのは確実に美羅の意思だろう。


「それでさ、」


 美羅は小さく息を吸う。

 しかも、俺にも分かるように。

 きっと、この場を揺るがすようなことを言うんだろうな。

 そんな予感はピリピリと感じる。


「夢子さんから、言いたいことがあるんだって」


 言いたいこと。

 それはもうわかっている。

 しかし、緑さんがいる今の状況で言うのはいささかハードルが高いんじゃないのか?

 それにだ、俺もまだ答えをだしきれていないというのに。


 その言葉を聞き、夢子さんは「ごめんね」と言って俺の手を取った。

 

「ここじゃだめだから二人きりで」


 そう夢子さんが耳打ちしてきた。


「あ、ああ」


 俺はそう言って夢子さんについて行く。



「ごめんなさい」


 そう言って彼女は再び頭を下げた。

 せっかくの食事を邪魔して申し訳ないとでも思ってるのだろうか。

 それとも――


「これを言うのはだめだと思うのだけれど、少しいいかしら」

「ああ、構わない」

「そう、なら言うわね」


 そして彼女は押し黙った。

 きっというタイミングを探しているのだろう。

 気持ちを、呼吸を整えているのだ。


 そして、言い放った。


「同棲、同居生活してる身でこれを言ったらだめかもしれないし、言うタイミングも変だと思うけど。……迷ってても意味がないから言うわ。私と――」


 そして、夢子さんの話はまた止まった。

 俺も覚悟を決めなければならない。


「付き合ってください」


 彼女は声高に言った。


 そう言ってくるのは分かっていた。


「ごめん」


 俺は頭を下げる。

 夢子さんは「え?」と言った。


 そりゃ、え?だわ。


 そんな悲しそうな顔をさせるのは非常に申し訳ないと思う。

 でも、


「今から理由を話したいんだけどいいかな」


 その言葉に静かにうなずく夢子さん。


「俺は前々から夢子さんが俺に対して気持ちを持っていたのは知っていたんだ。それを踏まえて色々と考えていたんだ。その結論として、ふさわしいのかは分からないけど、俺はこう考えたんだ」

「なに……?」

「今答えを出したら後で後悔すると。美羅の手伝いがあったとはいえ、告白するのに勇気がいたとは思ってる。俺も実際に一度告白したことがあるから知ってるんだ。だからこんな返答になって申し訳ない。けれど、いましばらく待っててほしい」


 拒絶ではないが、肯定でもない。

 所謂中途半端な返答だ。


「ごめん」


 俺はもう一度謝罪の言葉を口にする。


「許してとは言わない。でも、その分の埋め合わせはするから」


 そう、俺は言った。


「埋め合わせって?」

「お試し恋人行為的な事をしてもいいから」

「っわかったわ」


 静かに彼女は言った。


「私が拒絶されたわけじゃないってわかってよかったわ。でも」

「でも?」

「いつまでも待たせないでね」


 そう言って彼女はあふれんばかりの笑顔を見せてくれた。


「じゃあ、戻りましょ」

「おう」


 俺は本当にあの言葉で良かったのか。

 その答えを未だにつかみ切れていない。


 そして、レストランに戻ると、明らかに不機嫌そうに頬を膨らませている緑さんがいた。


「ど、どうしたんだ?」

「友達を放っておくなんてひどいじゃん」

「それに対しては本当にいい訳が出来ない」


 俺は頭を下げる。


「すまない」


 悲しませてしまったのは事実なのだ。


「もう、じゃあ行こ」


 そう言って彼女は手を差し出してくる。

 埋め合わせをしてほしい、と言っているのだろう。


「ちょっと待て、まだご飯が食べきれていない」

「行こ」


 あれ、緑さんってここまで人の話を聞かない人だったっけ。

 今日は色々と積極的な気がする。


 というかそもそも手を差し出すって。

 手を繫ごうとしてるんじゃないか。

 ……決して口には出さないが、これもう、もはや友達的行為じゃなくて、恋人的行為じゃないのか?

 決して口には言わないが。


「分かった。すぐにご飯を食べるよ」


 俺がそう言うと、緑さんは「じゃあ、また二人で回ろうね」と言った。

 美羅や夢子さんが近くにいるにもかかわらずだ。

 これはきっと牽制しているのだろう。


 しかし、相変わらず気になるのは、それをするなら恋人と何も変わらないんじゃないか、という事だ。

 夢子さんは、男性からの恋愛感情を防ぐために、友達としての枠から離れようとした場合には距離を一旦取る、的なことを言っていた。

 ただ、緑さんについては少し違うようだ。


 底が本当に気になってしまうポイントだ。

 聞けるなら後で聞くか、そう思いパスタを兎に角腹の中に入れていく。ただ、急いで食べ過ぎるのもいささかよくないので、勿論ゆっくり味わいながらだが。


 その間に夢子さんと、美羅は自分たちのテーブルに向かっていった。

 夢子さんは少し不機嫌そうだ。


 告白の答えが中途半端なものだったからなのか、今の緑さんの言葉に対しイラつきを覚えたからかは分からない。

 しかし、もし前者なら申し訳ないと思う。


 そして俺たちはパスタを食べ終わり再び外へと出た。


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