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失恋した俺は俺にだけ弱い内面を見せてくれるクラスのマドンナと同居をする――これは完璧な彼女を救うための物語  作者: 有原優


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第22話 料理

 

 そして、夢子さんが戻ってきた。

 その音がすると美羅はすぐに部屋を飛び出し走って行った。


「お邪魔してまーす!!」


 そう、美羅が元気よく言うと、夢子さんは笑って「いらっしゃい」と答えた。

 そして俺たちはソファに座る。幸い三人分座れるスペースはあるのだ。


 そして、無言の時間が始まった。

 家に遊びに来るというプランは立てていたが、そこまでだ。

 家で何をするかなんて言うのは決まっていない。


 そもそも提案者は美羅美羅なんだから決めて欲しい所なんだが。

 そこは無理を言ってはいけない。


「とりあえず、ゲームでもするか?」


 俺が提案すると、二人は黙って頷いた。


 結論から言うと、そのゲームは確かな盛り上がりを見せた。二人共、ゲームを熱心にプレイをしている。

 美羅が元々ゲームが上手かったのは知っていたが、「えいえい」と言って楽しんでいる夢子さんも中々上手かった。

 あまり、ゲームが得意そうなイメージは無かったのに。


 そして、


「智也さあ、提案者なのに負けっぱなしじゃん」


 一番下手なのが俺だった。

 勿論俺もそこまでゲームをするわけではない。

 だけど、美羅はともかく夢子さんにも負けるとは思っていなかった。


「智也君、貸して」


 夢子さんが俺のコントローラーを触り、俺はドキッとする。


「こうしたらもっとやりやすいよ」


 そう言って、俺の手を握りながら分かりやすく説明してくれる。

 その手の熱が伝わってきてなんだかドキドキする。

 そうだ、俺は幸原さんの事が好き=他の女子にドキドキしないという訳ではない。

 これは正直どう気持ちを保ったらいいのかすら分からない。

 それに今日のあの事件があったばかりだし。


 ぐむむ、俺は揺れる気持ちを落ち着かせ、平常を保った。


「つまらないわね」


 夢子さんは静かな声でそう言った。

 もう何が何だかわからねえな。


「二人ばかりずるーい」


 だが、そこに美羅がそう言って突撃してくれたおかげで俺のこの感情は消え去った。

 いやあ、良かった良かった。


 美羅には感謝だ。


 そして夢子さんが「じゃあ私、ご飯を作ってくるね」そう、笑顔で言った。


「おお、夢ちゃんのご飯だー」


 美羅は元気よく叫ぶ。


「お前も手伝えよ?」

「やだよー、私料理ヘタじゃん」

「確かにそうだったな」


 こいつはそこまで料理が上手くない。

 俺と同じく、チャーハンとかくらいしか作れなかったはずだ。


「手伝わざるもの食うべからず。さあ、手伝うんだ」

「ええー、そんなー」

「一緒に頑張ろうね」

「うん。仕方がないなー」

「調子のいいやつめ」


 俺じゃなくて、夢子さんが言ったらいいのか。

 


 そして俺たちは厨房に立つ。


「今日作るのは、野菜炒めです」


 おっ、定番の物が来た。


「メインディッシュはもちろんこれだけど、二人にはカボチャスープを作ってもらいます」

「カボチャスープだと」


 それは結構難しいんじゃ。

 何しろスープ系は自身がない。

 というか二人になったとはいえ、結構な難題を出してきたな。


「大丈夫。作り方さえわかったら簡単だから」


 そして俺の隣にはもう、元気を失っている美羅がいた。


「むう、夢ちゃんの料理がただで味わえると思ったのに」

「世の中そう上手く行かないってことだよ。さあ作るぞ」

「はーーーーーーーーーい」


 そのはいのための長さはなんだ。

 まさか、作るのが嫌だという意思表示か。

 勿論、だからと言って休んでていいよなんて言わないが。


 そして、俺たちは料理を作り始める。

 とは言っても見た目ほどは難しくはないらしい。

 カボチャを切って、そしてバターと共に炒めるだけらしい。

 ただそれは夢子さんが言う簡単であり、俺たちにとってどうなのかは考えるまでもない。


 そう、出来上がったころには。


「はあはあ、出来たぞ」


 汗だくだ。

 カボチャは軽く炒めすぎ見たいな感じだし、水も入れ過ぎたし。

 色々と失敗した。だけど、スープを飲んだら。


「これ美味しいかも」


 美羅がそう言った。

 確かに、お店や夢子さんの作った料理に比べたら質は劣る。だが、決して美味しくないわけではない・


 俺たち二人はその料理の味に感謝しつつ、夢子さんの方を見た。


「素晴らしい!!」すると、夢子さんは拍手をしてくれた。

 俺たちはそれが嬉しくて互いに顔を見合わせると、


「えへへ」互いに笑いあった。



「こっちも出来たよ」


 そして夢子さんは野菜炒めを見せてくれた。

 それはまさにおいしそうだった。


「私たちのよりもおいしそうだね」


 美羅は俺を見ながら言った。

 それにはまさに同意だ。


「でも、二人のもおいしそうだよ」

「ありがとう」


 そして食卓に着く。

 どうやら夢子さんは野菜炒めだけではなく他にも二つの料理を作っていた。

 まず一つはカプレーゼというトマトとバジル、チーズをオリーブオイルなどで会えた料理、

 そして、もう一つはレンコンなどをゴマで会えた料理。どちらもおいしそうな見た目をしている。

 しかし、中々の料理を作ってくれてるな、と思う。

 いつもながら十分においしそうなものを作ってくれているのだ。


「いつも感謝してるよ」

「ありがとう」


 笑顔で笑って見せた夢子さん。

 そして三人で料理を食べていく。


 その料理は最高の美味しさだった。

 美羅も美味しいと、笑顔で笑っていた。


 実際の所俺たちの作ったカボチャスープよりも夢子さんの作った野菜炒めなどの方が美味しかった。

 それは自分で作ったという補正を踏まえてもだ。

 夢子さんに追いつくにはまだまだ料理の練習が必要なようだ。


「でもさ、」食事中に美羅が口を開く。


「これだけ美味しいご飯を作れるとさ、お嫁に行った時に便利だよね」

「そうだな、美羅はもっと料理を習うべきだな」


 ま、俺が言えた義理ではないが。


「それ、男女差別だよ。女性は料理男性は仕事は価値観が古いよ」


 何を言ってるんだ。


「お前が最初に言ったんだろ」

「え? 聴こえない」

「なんだ、こいつ」


 俺は美羅を睨んだ。


「でも、私結婚するのかな?」


 夢子さんはそう静かに言った。


「夢ちゃんモテるんじゃないの?」

「モテるとそれは別だよ」


 笑いながら言う。作り笑いの方だ。

 遊園地のアイス屋さんできいた。夢子さんもまた男子(恋愛感情を有した)が苦手であることを。


「智也とかどう?」


 爆弾発言。

 美羅はいったい何を言っているんだ。


「……」


 押し黙った。

 それはいったいどういう事だ?


「美羅、気まずい空気にさせるなよ」


 どうしようもないので、俺は静かにそう言うのだった。

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